アイコンタクトと対人距離のベストバランス

アイコンタクトの方向、長さ、強さに続き意識してほしいのは「相手との距離」です。初めての相手と挨拶をする時、対人距離を詰め過ぎると、相手はパーソナルテリトリーに侵入されたと感じ用心をします。また至近距離でアイコンタクトを強くとっても相手に圧迫感を与えてしまいます。いくら熱意があるからといって近寄り過ぎては逆効果なのです。では一般的に心地のよい距離感とはどのくらいでしょう?

日本人の場合、初対面の相手に対しては120センチの距離が適当です。これは平均的な体格の日本人が、お互いに軽く手を伸ばして握手や名刺交換をする距離。距離が接近し過ぎていない分、アイコンタクトはしっかりと、32秒/1分間(対話時間の53%)を心掛けてください。

先に述べたように、距離がとても接近する場合には、相手に圧力を感じさせないようアイコンタクトを控えめに。ただし注目してほしい“ここ”というポイントで目線を送ることは忘れずに。ビジネスの距離とアイコンタクトのバランスは、「近づく-弱く」「遠のく-強く」と覚えてください。

アイコンタクトのまとめ

非言語領域の最たるもの、アイコンタクトの「方向性」「長さ」「強さ」をコントロールすることに加え、その奥にある「心理傾向の洞察」「距離感のバランス」をもって交渉に臨めば、クライアントからの信頼を勝ち取ることができます。

最後に、あるグローバル企業のプロジェクトマネージャーの話を紹介しましょう。彼が新しいプロジェクトのメンバーを選定する時、目安の一つとしているものがあるそうです。それは会った瞬間に分かるアイコンタクトの強さと、話に反応する時のスマイルの頻度。相手のニーズや気持ちに敏感で、仲間として仕事がしやすいのは「よく見つめ、よく笑顔で反応する人」だと言います。

一緒に仕事を組みたい人、ビジネスパートナーにしたい人、営業先でそう思われるような第一印象を残せると、まずは成功ですね。次回は「傾聴のルール」についてお伝えします。

佐藤綾子 パフォーマンス心理学博士

常に女性の生き方を照らし、希望と悩みを共に分かち合って走る日本カウンセリング学会認定スーパーバイザーカウンセラー。日本大学芸術学部教授。「自分を伝える自己表現」をテーマにした単行本は180冊以上。新刊『30日間で生まれ変わる! アドラー流心のダイエット』(集英社刊)は9月4日発売。