他者との出会いで救われる弱者を描きたい

ダルデンヌ兄弟は、こうした社会的弱者の実情を映画という形で世に問うてきた。1999年の『ロゼッタ』では、失業状態から抜け出そうともがく少女の姿を描いた。映画は大反響を呼び、ベルギーでは「ロゼッタ・プラン」という、初めて社会に出る若者を雇用する経営者の社会保障負担を軽減する法律が成立したほど、その影響力は大きい。なぜ2人はいつも、過酷な状況に置かれた人間の姿をカメラに収めようとするのだろう?

カンヌ国際映画祭2度のパルムドールに輝く、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌの両監督。新作『サンドラの週末』では、人と人の絆、人間の弱さと強さを静謐に、丁寧に描いている。

「私たちが映画で語りたいのは、物質的に困窮し、孤独を感じている人が、手を差し伸べてくれる他者と出会うことができるかどうかという物語なのです。周りを見渡せばそういう人がいるのに、彼らには見えていないのです」(ジャン=ピエールさん)

「そして、その出会いによって、追い詰められた状態から抜け出すことができるかどうかを描きたいと思っています」(リュックさん)

『サンドラの週末』のラスト、主人公は一体何を勝ち取るのか。自己否定と孤独感に押しつぶされ、「私の立場になって」と懇願していた弱々しい女性が、他者の立場に立ってある決断を下す。 他者に対する想像力の欠如から生まれる悲劇が蔓延する世の中で、サンドラが他者との出会いの先に見出した一筋の光が胸を打つ。

映画『サンドラの週末 deux jours, une nuit』

監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:マリオン・コティヤール、ファブリツィオ・ロンジョーネ、オリヴィエ・グルメ、モーガン・マリンヌ
配給:ビターズ・エンド
2014年/ベルギー=フランス=イタリア合作/95分
5月23日(土)より、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
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