在宅/サテライトオフィス勤務の導入だけでこれだけの効果

株式会社インテリジェンス
ビジネスソリューションズ
ディレクター 家田佳代子氏


ある企業に在籍していたとき、親の介護をすることになり退職勧奨を受けて離職。別の企業に移ってテレワークシステムを導入し、介護しながら業務をこなした。その後、女性を支援する企業を設立して社長兼CEOを務め、2014年に移籍し、ワークスタイル変革事業を立ち上げた。

では家田氏が進めるワークスタイル変革の中身はどういうものなのか、実際にどのような効果が出るのだろうか。家田氏は、週に1日在宅勤務、1日サテライトオフィス勤務を実践している。コンサルティング部隊に関しては役員まで含め、週1日+月1回週5日在宅勤務を課していて、経営会議もWeb会議化して自宅から参加している。

家田氏も経営陣に関しては、生産性が落ちるのではないかと考えたが、パソコンの前にいることが明示的に分かるので、捕まえることが容易になり、承認フローも在宅勤務のほうがすぐに処理してくれるため、生産性は相当上がっているのだそう。また三六協定違反はゼロの為、無駄な残業代の支払いがないなど、それも大きなメリットになっている。

家田氏は「やってみないと分からない。経営者の方は出来ないことを並べるよりも、1カ月トライアルをして、それで生産性が上がらないようなら考え直したら」と伝えているそうだが、今まで中小企業10社ほどワークスタイル変革を導入しており、効果が出なかった会社はないという。

企業競争力/組織力を強化し、優秀な人材の継続確保にも

中小企業経営者の中には、「横ばいの経営状態を上げていくために、社員をイノベーションを生み続ける人材にしなくてはいけない。そのためには今のまま机の前に座っていたのではダメ」と考え、全社員の非固定席化を進めている企業経営者も複数いるという。そこまで危機感を持った経営者でなくとも、生産性の向上以外にもワークスタイル変革を考えるべき理由はまだある。それは、企業競争力の強化、組織力の強化、優秀な人材の確保とその継続雇用だ。

最前線の営業/マーケティング部隊がモバイルワークスタイルに移行することで、事務所への余分な移動時間をなくし、顧客により多く訪問できるようになったり、客先での問い合わせに対してオンラインで調べて即答することができるようになる。これが競争力や組織力の強化につながる。実証実験中のある中小企業では、訪問回数が約30%も増加した。

また、自由なワークスタイルが取れることで、育児や介護をしながら業務をこなせるようになり、働ける人材が離職することを防ぐことにもつながる。継続雇用の場合と新規に雇用した場合を試算すると、設備投資コストを含めても継続雇用のほうが有利な結果が出ているという。

経営陣が主体となり、しっかり準備すれば失敗しない。まずトライを

いいことばかりに思えるワークスタイル変革だが、導入するに当たって気をつけることはなにかを家田氏に尋ねると、「最短で3カ月きちんと準備すること」という答えが返ってきた。「まず従業員を守り、揉め事をなくすための制度設計をすることが失敗しないコツ。

新しいことをやろうとすると、やった人とやってない人の間に不公平感が生まれ、それが抵抗勢力になるので、必ず全員に対して教育をする。次にミドルマネージメント層には、会社に来ない勤務形式に対応する人事評価の啓発活動をして、労務管理と人事評価の教育をする。経営層には、攻めの経営戦略であるということを植え付けること」

インテリジェンス ビジネスソリューションズでの実践例では、生産性は6%上昇した。生産性は全員が意識を持って行動しないとなかなか上がらないが、中小企業のほうが顕著に生産性が上がる傾向があり、20%程度は期待できるという。

最後に、ワークスタイル変革に適したデバイスの要件について聞いたところ、以下の答えが返ってきた。
・使いたいときすぐに起動すること
・入力のスピードをあげられるよう物理キーボードがあること
・Web会議がスムーズにできるようマイク/スピーカーの音が良いこと
・客先ですぐにプレゼンできるディスプレイ端子があること

いまや経営陣も新しいデバイスを使えなければビジネスにならない時代、意思決定もすばやく行えるようになる。各種の有利な条件がそろったこの好機、ワークスタイル変革への取り組みを進めてみては。