いまやツイッターのフォロワー数29万人。世界陸上のメダリストで、ベストセラー『諦める力』の著者、為末大さんが、世界の問題から身近な問題まで、「納得できない!」「許せない!」「諦められない!」問題に答えます。(お悩みの募集は締め切りました)。
お悩みファイル9■気弱な自分を攻め続けてしまいます
現在就職活動中の大学生です。僕にはどうしてもやめられないことが1つあります。それは、自分を責め続けることです。自分のもともとの行動力のなさや、他人の目を気にしすぎる性格から自分の発言に自信が持てません。ある採用担当者には「君は見た目も学力も悪くはないが、自信がないから採用しない」と言われました。そんなときは、過去の面接の練習や、堂々とすることを学んでこなかったことを悔やんでしまいます。また、何も成長していない自分自身のことも責め続けてしまいます。最近はうまくいかないことがあると、なんでもすべて自分の責任にして落ち込む毎日です。もちろん、自分を責めるのは自分でもつらいのですが、なかなかやめられません。(男性・大学生・22歳)

厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが「自分を責めること」が心地よくて、自己否定がやめられなくなっている。そんなことはありませんか? 確かに就職活動中というのは、人生の中でも特殊な時期にあたります。周りの学生さんとの相対評価になってしまうから、自分自身が優秀でも、採用に結びつくとは限りません。自分の頑張りと結果とは無関係。そして、面接では人格まで否定するような言葉を一方的にかけられて……不条理な出来事の連続ですよね。それを「就活なんてこんなもの」と笑い飛ばせるうちはいいのですが、「内定をもらえない理由」を求めずにおれなくなるときつい。結局自分を責めることになるからです。

いったん「自責モード」に入ると、話は厄介です。不思議なことに、自責モードの人に「あなたが悪いわけじゃないよ」と声をかけたとき、「いやそんなことはない、自分がダメなんだ」と反論されることがあります。何かがうまくいかない原因をすすんで背負い込みたがっているようにも思います。こうなるとある種の「依存」状態ですね。

人はさまざまなものに依存します。ポジティブな方向にものの見方を変えていくより、ネガティブな感情のなかにひたっていることを選ぶのは、「変化するよりは低めのところで現状維持をしていたい」という隠れた欲求のあらわれかもしれません。もっといえば変化することへの恐怖です。

相談者のように、自責モードに入りがちな人には、1つの共通点があります。それは「あるべき自分」という目標が非常に高い所に設定されていることです。現状の自分と「あるべき自分」との間にある大きなギャップがあって、そのギャップを埋められない自分が許せないのです。具体的なアドバイスとしては、ものごとの表側だけではなく、裏側もうまく見る癖をつけると、少しは心が楽になるのではないでしょうか。

たとえば、「君は見た目も学力も悪くはないが自信がないから採用しない」という面接官の言葉です。これを裏返すと「君は自信が持てないだけで、見た目も学力も悪くない」という褒め言葉ともとれませんか。一見ネガティブに見える事柄にもポジティブな要素が含まれていることが少なからずあります。その逆もしかりです。

ものごとは常に黒白ハッキリと割り切れるものではなく、そうではない場合の方がずっと多い。うまくいかないのは全部自分が悪い、世の中は嫌なことばっかり、といったものの見方を少しずつ変えていけると楽になると思います。「自分を心の中で責め続ける」ことには膨大なエネルギーを使います。そのエネルギーを別のことに活かせば、いずれは大きな偉業を成し遂げられる可能性だってなくはない。まずはそんなふうに考えてみてはどうでしょう。

為末 大(ためすえ・だい)
1978年広島県生まれ。陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2014年10月現在)。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場。2003年、プロに転向。2012年、25年間の現役生活から引退。現在は、一般社団法人アスリート・ソサエティ(2010年設立)、為末大学(2012年開講)、Xiborg(2014年設立)などを通じ、スポーツ、社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。
http://tamesue.jp
(撮影=鈴木愛子)
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