使っても減らない疑似通貨「円天」、利回り10%の「平成電電債」、1年で元本が倍になる「東南アジアでエビの養殖」……。こうした投資を名目にした明らかな詐欺商法から、素人をカモにしたハイリスク金融商品まで、いつの世にも「おいしい儲け話」は存在します。そしてそんな話に騙される人が後を絶ちません。

楽天証券経済研究所 客員研究員 山崎 元
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楽天証券経済研究所 客員研究員 山崎 元

この手の商売で多いのは「最初に不安をあおって、安心を売りつける」手口。いかがわしい健康食品や薬、化粧品などの販売と同じです。

例えば、「血液ドロドロ」の状態がどれだけ怖いかを読んでいるうちに血管が詰まってきそうな文章や例で脅し、「サラサラにするにはコレです」と、原価の100倍もするような商品を売りつける。

そして、経済状況が混迷してくると、その「金融版」が出てきます。「日本は破綻する」「大恐慌がくる」といった破滅論・パニック論です。

バブルがはじけた後、山一証券が破綻したのは1997年でした。その後の98~99年頃は、「預金封鎖」論が花盛りでした。「日本の金融機関の状況は危機的なもので、政府も救済できない。銀行預金が封鎖されて一部切り捨てられる」とまことしやかに喧伝されていたものです。しかし、金融機関に公的資金が注入され、金融審査で銀行の実態が明らかになるにつれて、景気も回復し、金融機関の信用も修復されました。

そして、新たな不安をあおる宣伝文句が……

そして再び景気が悪化した今、代わりに言われているのは、「巨額の財政赤字による国家破綻説」です。日本の財政赤字はGDPの170%もあり、イタリアよりもひどく(いつもここで比較の対象にされて、イタリア人も迷惑しているでしょう)、お金も株券も紙切れになってしまうというものです。

しかし、日本の財政赤字は本当に恐ろしいものなのでしょうか? 確かに地方の債務も含めて赤字は800兆円以上あり、どんどん増え続けています。しかし、これは「粗債務」の額なのです。政府債務を把握する指標には、「粗債務」(借り入れ)と「純債務」(粗債務から政府が保有する資産を引いたもの)の2つがあり、一国の債務を正確に表すのは、「純債務」であるというのが国際的な常識です。とすると、日本の純債務はGDPの90%程度。決して小さくはありませんが、ほかの先進国と大きくは異なりません。

加えて、日本の場合は国債が国内で消化されています。つまり、日本人が日本人から借りて、日本国内で支出している。一家に喩えると、夫が妻から借金をして、子供に小遣いをあげているような状況です。妻(国民)は納得がいかないかもしれませんが、最後は家の中の損得で片付く話なのです。ちなみにアメリカは、国債の消化の40%以上を海外に頼っています。

しかも1.3%の超低金利でも国債を買う人がたくさんいます。もし国債なんかいらない、国なんか信用できないとなると、もっと高い利回りを要求するはずです。