ED治療専門医院の草分け的存在である「新宿ウエストクリニック」。院長の室田英明先生は、EDと生活習慣病の密接なかかわりについて指摘する。

室田英明●むろた・ひであき

新宿ウエストクリニック院長
1949年生まれ。76年、東京慈恵会医科大学卒業。医学博士。同大学附属病院形成外科、昭和大学附属病院形成外科勤務などを経て、86年にウエストクリニックを荻窪で開業、95年に新宿に移転して新宿ウエストクリニック開院。ED治療専門のパイオニアとして男性の悩み解消をサポートし続けている。

新宿ウエストクリニックホームページ http://www.westcl.com/

 

最も多い悩みは
「十分に続かない」こと

──どのような訴えで来院される患者さんが多いのでしょうか?

【室田】EDは「まったく勃起しない状態」というイメージが強いでしょう。そのため、自分は違うと思いがちなのですが、実はEDの多くが、勃起が十分な時間続かなくなる「中折れ」なのです。それを一度経験すると、再発の不安がつきまとい、ますます中折れするという悪循環を繰り返してしまう方もいます。次に多いのは、硬さが足りないという症状。硬さ不足と中折れが合わさったケースもありますが、実はまったく勃起しないというEDは、さほど多いとは言えません。原因としてはストレスなどによる心因性EDが多く、続いて血管や神経などに問題がある器質性ED。さらに、両方が混合した状態も考えられます。

──原因は自分自身でも分かりますか?

【室田】例えば「朝勃ちがあって、自慰もできるのに、いざその時になると……」というのなら、心因性EDでしょう。背景としては、性交の失敗経験やパートナーとの気持ちのすれ違い、そして仕事上のストレスなどが考えられます。対して、「朝勃ちが減った、なくなった。自慰も難しい」となると、器質性EDの可能性が高いですね。

原因はどちらであれ肝心なポイントは、「自分の性欲に対して勃起が十分かどうか」です。年齢とともに性欲が低下するのはごく普通の変化ですから、単に行為の回数が減ることとEDとは、別の話だと考えていただいた方がいいでしょう。

さまざまな生活習慣病が
EDの原因になり得る

──器質性EDでは血管や神経などに問題があるとのことでしたが。

陰茎動脈は非常に細いため、血管の変調による影響を受けやすい。つまり勃起力の低下は、血管障害の要因となる生活習慣病の症状を自覚できる貴重なサインと言える。
資料提供:日本新薬株式会社

【室田】ええ。器質性EDですと、それは生活習慣病の症状の一つでもあるのです。糖尿病、高血圧症、脂質異常症などによって、動脈硬化をはじめ血管の障害が進むことはみなさんもご存知でしょう。陰茎動脈は非常に細いので、心臓などの動脈に比べると早い段階で血流が悪くなり、EDという自覚症状が現れやすいのです(右図参照)。さらに糖尿病を患っている場合、脳の性的興奮を陰茎まで伝える信号の神経伝達が滞り、EDが助長されてしまいます。

──では生活習慣病の予防はEDの予防にもつながるということですね。

【室田】はい。早くから偏った食生活や運動不足などに気をつけていれば、EDはもちろん、他の病気を防ぐ効果も期待できるでしょう。また、タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる強力な作用があるため、EDにとっても大敵だということを忘れないでください。