現在の自分の体に適した、いわば「旬」の健康法を実践するには?
それを探る手がかりが、「体内時計」にある。時間医学の第一人者である、東京女子医科大学東医療センター大塚邦明名誉教授に、理想的な生活リズムをつかむための要点について聞いた。

人間の体内に刻まれた
さまざまな「周期」

大塚邦明●おおつか・くにあき
東京女子医科大学
東医療センター名誉教授
時間医学
老年総合内科教授

1948年生まれ。72年、九州大学医学部卒業後、九州大学温泉治療学研究所助手、高知医科大学老年病学教室助手。98年より、東京女子医科大学東医療センターに勤務。専門は時間医学、老年医学。

「快適で過ごしやすいこれからの時期は、1年のうちで最も体のバランスを整えやすいときです。ぜひ、生活習慣の見直しにチャレンジしていただきたいですね」

そうアドバイスする大塚邦明先生は、反面、「ただし、注意も必要です」と言う。

「実は、病気になりやすいリズムというものが存在します。私は“1.3年のリズム”と呼んでいますが、例えば、1年間病気にならないように頑張り、苦手な季節もなんとか乗り越えたと思った矢先に、体調を崩してしまう。そのようなケースが増える時期でもあるのです。1年より少し長いということで、1.3年というわけです」

不思議なことに、同様の現象は、どうやら世界的に見られるそうだ。

「日本に限らず、アジア、アメリカ、ヨーロッパと、どの地域での調査においても、1.3年のリズムがあることが分かりました」

これは、何を意味しているのか。その謎を解くキーワードとなるのが「体内時計」である。私たちの生命活動は、一定の規則性のもと、複雑な仕組みが絡み合って維持されている。そこで、それぞれの機能が、1日の中で「いつ」働くか。そのタイミングをつかさどっているのが体内時計だ。

「例えば、心筋梗塞は朝の時間帯がピークという話を、みなさんも聞いたことがあるでしょう。ほかにも細かく調べていきますと、さまざまな病の発症は、月曜日であり、毎月の第1週目であり、お正月前後であり……と、決まった周期で非常に多くなる傾向がある。その事実を踏まえれば、いつ、どんな工夫をすれば病を防げるかが分かるはずです。私たちの体に組み込まれている時計遺伝子は24時間をはじめ、3.5日、1週間、1カ月、1年、1.3年、10年など、多様な周期をもっています。これを診断と治療に応用するのが、私の専門である時間医学なのです」