金融緩和や消費増税など、お金を取り巻く環境が変わり始めている。インフレを迎えつつある今、資産運用をどう見直していくべきか。投資アドバイスを手がけるS&S investmentsの岡村聡氏に聞いた。
来月から値上げします──。
スーパーや家電量販店などあらゆる所で、こんなただし書きを見かける機会が増えた。4月からの消費増税や円安を背景に、モノの値段が上がりつつある。消費者物価指数(生鮮食品除く、コアCPI)は昨年12月に前年比1.3%まで上昇。目標の2%に向かって動き出している。企業はにわかに活気づいているが、インフレが本格化する気配に、「我が家の資産運用はこのままで良いのか」と危機感を感じている人も多いだろう。
しかし資産運用を検討しようにも、株式や国債といった投資の王道に始まり、投資信託やREIT(不動産投資信託)、CFD(差金決済取引)など、昨今の金融商品は多様化している。来るべきインフレに備えて、どんな商品に、どう資金を投じるべきか。
岡村聡氏は「デフレ経済下では債券と現預金を保有しておくことが資産運用の正解でした。しかし、そんなお金の常識が変わっていく時代です。まずは少額でもよいからインフレや円安を見据えた資産運用を始めて、成功体験を積み重ねていくことが肝心です」とアドバイスする。
そんな岡村氏が、インフレに強い資産として挙げているのが、「株式」と「不動産」である。
株式市場はリーマン・ショック以降低調だったが、米国や日本では回復の兆しを見せつつある。海外に目を向けて、国際競争力のある企業も投資対象に広げれば、積極的な収益の拡大も期待できる。
しかし株式投資は価格変動幅が大きく、資産運用の入門編としてはハードルが高い。そこで岡村氏は、「投資信託などを活用した長期積立投資」を推奨する。
「10年、20年にわたって積立投資を続ければ、収益は安定しやすくなります。事実、私のセミナーを受講している方の中で、リーマン・ショックの崩壊などを経ても地道にグローバル分散で積立投資を継続していた方の多くは、プラスのリターンを確保しています。これから投資を検討する30歳代、40歳代の若い世代には、世界にも目を向け、早い段階から時間を味方に付ける資産形成に向き合ってほしいですね」
株式に並び、インフレに強いと考えられるのが、不動産投資だ。特に「日本の不動産は、家賃などのインカムゲインが高いうえ、売買益も狙える貴重な市場となっています」と岡村氏は分析する。
マンションやアパート、オフィスビルといった不動産の賃貸・販売価格は、経済情勢やエリア内の需給に応じて設定できる。デザインやブランド、機能など、周辺の競合物件に比べて魅力のあるものであれば、物価上昇に負けないだけの家賃設定で収益を得ることも可能というわけだ。REITなどを活用すれば、商業施設などへの投資も容易になる。
「長期の資産運用を考える際、安定した収益源があるのは強いですね。日本の都市部は、世界の水準から見れば非常に割安で魅力的な物件ばかり。設備や仕様のグレードも高く、交通利便性に優れたエリアなら、値崩れのリスクも少ないでしょう。国内のマンションやアパートであれば、最終的には自分の住まいとして活用することも考えられます」