買い物が楽しくなるお気に入りの店、何度でも行きたい博物館──その大きな理由の1つは、空間としての魅力ではないだろうか。顧客ニーズに応え、訪れる人々の「こころを動かす」空間づくりで実績を重ねる丹青社。青田嘉光社長は「デザインの力」に思いを託す。

空間づくりを究めたプロが
顧客の課題解決をサポート

──丹青社は、内装・ディスプレイのリーディングカンパニー。そこかしこに手掛けた施設がおありですが、一般の人には丹青社の仕事はなかなか知られていないのでは。
青田嘉光●あおた・よしみつ
株式会社丹青社 代表取締役社長
1971年武蔵野美術大学卒業、丹青社入社。デザイナーとして主に文化施設の実績多数。97年取締役。2003年より常務取締役、(株)丹青研究所社長、取締役専務執行役員などを経て、10年より現職。

【青田】そのとおりですね。お話しをしていくと「あのプロジェクトにも携わっていたんですね」と驚かれることが多いです。

丹青社は50年余り前に、東京・上野で百貨店での催事ディスプレイなどを手掛けることからスタートした会社です。現在は商業施設全般のほか、博物館・美術館などの文化施設、それに展示会などのイベント等、幅広く空間づくりを行っています。最近のプロジェクトには「渋谷ヒカリエShinQs Switch Room」や「JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク」などもあります。

事業を営むお客さまの課題解決を空間づくりによってお手伝いする。このテーマを突き詰めることが私たちのビジネスの原点で、デザインの力を武器に、課題に真摯に向き合う姿勢は50年以上変わりません。

どんなお客さまの、どんな課題解決にも共通するのは、エンドユーザーの「こころを動かす空間づくり」。商業施設や文化施設を訪れる皆さんに感動をもたらすことが大事だと考えています。

──創業以来、事業環境は変化を繰り返してきたのではないでしょうか。

【青田】ええ。例えば近年ですと、多くの方々がネットショッピングを利用するようになり、リアルな店舗に求められる価値も変化してきています。商品を手に取ってみるとか、お店の方と会話するとか、街やお店の雰囲気を楽しむなど、ネットの世界ではできないリアルな体験が空間には求められています。

また、私たちの仕事は、どなたの気持ちも豊かになる、おもてなしの空間を創造することともいえます。そういった観点では、ダイバーシティ(人々の多様性を受け入れること)に根ざしたユニバーサルデザインも求められています。空間づくりのプロセスでは、誰もが快適に目的を達成するために、移動しやすくするとか、分かりやすいサインをつけるなどの配慮が求められます。しかし「マニュアルに従って設計する」という視点にとどまらず、利用者の立場になって心理・感情にも配慮する「心のユニバーサルデザイン」を大切にしています。

個々の空間デザインはそれぞれに与条件も異なりますが、どんなに制約があっても、ちょっとした工夫、デザインでおもてなしのこころを伝えることができるはずです。さまざまな人々の視点をイメージし、その気づきを生かした提案をしていきたいですね。