キッチンの語源は、「火を使うところ」という意味です。だから、基本の火や鍋などの道具にいいものを選び、使い慣れれば料理上手になれるというわけです。二人のプロから「キッチン上手になる」コツと便利な道具を教わりました。
土鍋の直火炊飯は、火力の調節で炊き上がりを自由にコントロールできるのもいいところ。写真はふっくらご飯だが、最後に強火で仕上げることで香ばしいお焦げも簡単につくれる。

上手な炊飯のコツは、米にストレスをかけないこと。
これに尽きます!

秋は新米の季節です。そして、新米の魅力は何と言っても“香り”にあります。この時季だけのお楽しみですから、まずは白いご飯のままで存分に味わいたいもの。

炊飯にはいろいろなやり方がありますが、僕がお薦めするのは、土鍋の直火炊飯。というのも、これが米にストレスをかけない最良の炊き方だからです。直火で土鍋を包み込むことで、米にやさしく火が入り、米がゆっくり成長できる。ふっくらとして、香り高いご飯に炊き上がるというわけです。

炊飯ではよく圧力が話題になりますが、急激すぎる圧力はかえって米を押し潰して疲れさせてしまうことになり、香りも損なわれる。新米は、直火でゆっくりと火を入れることが大切なのです。

うれしいことに、現代のガスコンロは火力が強い上にタイマーや火加減調節など、機能が多彩に備わるタイプが出回っています。僕は、こうした器具を賢く活用することも、料理上手になるための一つの手段だと思います。<談>

新米は、土鍋の直火炊飯で香りを楽しむ

高井英克 料理研究家
 

京都「京料理いそべ」、東京「分とく山」を経て独立。食材の栄養分や、背景にある産地や歴史、物語にまで思いを巡らせ、論理的に料理を組み立てる高井英克さん。「意外かもしれませんが、糠は米へんに康と書くように栄養分が豊富。米を洗う、研ぐことの目的は、糠自体ではなく糠臭さを取ることにあります。力を入れすぎて、米を傷つけてはいけません」。主宰する料理教室「キッチンスタジオ ヒデカツ」では、季節ごとにテーマを設け、レシピだけでなく食生活を豊かに彩る知恵や技を紹介している。
●「キッチンスタジオ ヒデカツ」 http://www.hidekatsu-takai.com/