国内景気は相変わらずぱっとしないが、大企業を見ると儲かっているところも少なくない。しかも組織のスリム化を進めたために、現場の忙しさは増している。にもかかわらず、肝心の給料は急落した。日本のサラリーマンはみな、うつむき加減である。こんなことでいいのだろうか。働く者の待遇をもっとよくして、消費を盛り上げることのほうが、日本経済にとって大事ではないか。

私がそういう考えを持つようになったのは、上場企業各社の決算を調べていて、会社と従業員との“取り分”のアンバランスさに気がついたからだ。企業は従業員に配分すべきお金を、会社の資産として余分にため込んでいるのではないか、と考えたのだ。

そもそも企業は事業活動で得たお金をどうするか。たとえば、(1)給料やボーナスとして従業員に報いるか、(2)配当の形で株主に還元するか、(3)吐き出さずに会社内部にため込んでおくかの3パターンが考えられる。

ここでは(1)と(3)の関係に着目したい。(1)は平均年収、(3)は内部留保の額とする。内部留保を増やした企業は、社員の年収も伸ばしているのだろうか。私の興味はここにあった。

実は一口に「内部留保」といってもさまざまな定義があるのだが、ここでは「利益剰余金=内部留保」とし、内部留保と平均年収との間にどのような関係があるかを調べてみた。

財務データと平均年収データは、上場企業約4000社の財務情報などをわかりやすく編集・加工して閲覧できる無料のウェブサービス「Ullet(ユーレット)」のデータを利用した。ユーレットを使えば、企業が公開している有価証券報告書の内容を簡単な操作で確認することができる。