「来月から家賃を値上げします」と言われたらどうするべき? 不動産のプロが明かす“家賃増額のカラクリ”(清談社)

賃貸物件に住んでいると、定期的に訪れる「契約更新」。ひと月に家賃と更新料を支払うのも億劫だが、更新とともに翌月から家賃の値上げを知らされることも珍しくない。

家賃の増額を通知する紙に「近傍同種建物の賃料相場や物価上昇に伴い値上げする」という記載があっても「それって関係あるの?」と、釈然としないまま部屋の契約を更新した、なんて人もいるだろう。そこで、賃貸物件の家賃の値上げにまつわる謎について、不動産のプロに解説をしてもらった。

※写真はイメージ ©hiroyuki_nakai/イメージマート

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家賃が上がる“3つのタイミング”

「一般的には、固定資産税が増額したときに家賃を上げるケースが多いです。固定資産税増税を飲食店に例えると、材料の仕入れ値が上がったのと同じ。賃貸物件のオーナーにとって死活問題なので、税金の増額は妥当な値上げ理由であるといえます」

そう話すのは、東京都内で不動産仲介業を営む“不動産のプロ”幸田拓也さん(仮名)だ。入居の際に交わす「賃貸借契約書」にも、以下の3つの場合は「賃料の増減額」が認められると記載があるという。

・土地または建物に対する公租公課その他の負担の増減により、賃料が不相当となった場合

・土地または建物の価格の上昇または低下その他の経済事情の変動により、賃料が不相当となった場合

・近隣同種の建物の賃料に比較して、賃料が不相当となった場合

「公租」とは、国税や地方税、都市計画税などを指し、「公課」はそれ以外の公に関する金銭を指す。そのほか、周辺にある建物の賃料相場も賃料の増減に関わっているのだ。

「ただ、賃貸物件のオーナーは基本的に『家賃を増額したい』と考えているので、先の3つ以外の理由で値上げを試みる人も少なくないです。以前『近所にスーパーがオープンして便利になったので、家賃を値上げしたい』と、打診してきたオーナーもいましたが、この理由では不十分。私は『スーパーが潰れたら家賃を下げなければ筋が通らない』と説得して、増額を免れました」

入居者からすると、「住んでいる年数分、築年数が経過しているのに、値上げされるの?」という疑問も浮かぶだろう。しかし、「家賃の増額と築年数はほとんど関係ない」と幸田さんは話す。