投資系インフルエンサーの“極論”を信じてはいけない

第三は「人の意見に左右されてはいけない」です。今はYouTubeやSNSで投資の情報収集をする人も増えていますが、僕の印象ではいわゆる投資系インフルエンサーの言葉を間に受けてしまう人が本当に多いですね。インフルエンサーがいう銘柄をそのまま買うといった投資のやり方はおすすめできません。

ネットでは目立った者勝ちなので、インフルエンサーと呼ばれる人たちは正しくて地味な話よりも人目を引く面白い話をしようとしがちです。新NISAについても、「やらないやつはバカだ」「絶対にやるな」「エヌビディアだけ買っとけばいい」みたいな極論がたくさん出回っています。

でも、インフルエンサーたちはそれが極論だと分かったうえで、PVを伸ばすためにあえて煽るような言い方をしているわけです。実際は未来の話に「絶対」はなくて、どの株が上がるかなんて誰にも断言できないはず。それなのに間に受ける人が多くて驚きます。思考停止して、人のいうままに投資してはダメですよ。

携帯電話を使って自宅でリラックスする若い女性
写真=iStock.com/kitzcorner
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「限度額を早く埋めろ」の功罪

僕のところにも「新NISAは非課税保有限度額の1800万円をできるだけ早く使い切ったほうがいいんですよね」と相談してきた人がいました。なぜそう思うのか聞いたら、YouTubeで投資系インフルエンサーがそう言っていたからだと。それはそのインフルエンサーの考えであって、大事なのは投資する本人がどう思うかです。自分のお金なんだから自分の頭で考えろと言いたいです。

大金を稼いでいるような個人投資家にとっては1800万円なんて少額ですし、元本が大きいほどリターンも大きくなりますから、当然「限度額はすぐ埋めろ」という結論になるでしょう。でも、そんなに資産はない人がその言葉通りにしたらどうなるか。一部のインフルエンサーの言葉を一般化して、自分に当てはめて考えるなんて危険すぎます。

こうした傾向は若い人に限りません。ある程度年齢を重ねた人はリテラシーが高いのかというと、実際はそうでもないんです。SNSで「この人、インフルエンサーの発言を鵜呑みにしてちょっとやばい感じになってるな」と思ってプロフィールを見にいったら、50代60代だったということも結構あります。

繰り返しになりますが、投資は気になったら負け、負けたときにやめたら負け、そして人の意見に左右されてはいけない。新NISAを始めるなら、この3点を頭に入れたうえで行動してほしいと思います。

構成=辻村洋子

森永 康平(もりなが・こうへい)
株式会社マネネCEO、経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。その後2018年6月に金融教育ベンチャーの株式会社マネネを設立。現在は経済アナリストとして執筆や講演をしながら、AIベンチャーのCFOも兼任するなど、国内外複数のベンチャー企業の経営にも参画。著書は『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)、『つみたて投資の教科書』(あさ出版)など多数。