退職金を手にした人が一気に投資につぎ込む事例が後を絶たない。経済ジャーナリストの頼藤太希さんは「金融機関で勧められた商品をそのまま購入した人は、実際の運用成績もプラスどころか大損してしまう状況になっている」という――。

※本稿は、頼藤太希・高山一恵『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)の一部を加筆・再編集したものです。

うつむくシニア男性
写真=iStock.com/Synthetic-Exposition
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退職金投資で大損してからマネー相談に出向く人が続出

現役時代は我慢・苦労したぶん、退職後は自由に豊かに暮らしたい――。

現役時代に家計で苦労した、趣味や旅行ができなかったなど我慢をした方々の多くは、定年後にまとまった退職金を手にすると、パァーッと使ってしまうという傾向があります。

また、まとまったお金を目にすることで、気が大きくなっていることも背中を押し、多くのお金を投資につぎ込んだ結果、大損してしまい、その後、慌ててマネー相談に来るということもあります。残念ながら、大損した状態でご相談に来られても、こちらができるアドバイスは限られてしまいます。

今回は、なぜ大損してしまうことになるのか、相談事例を踏まえ、退職金投資でやってはいけない投資についてお伝えします。

退職金を言われるがまま、ほぼ全額投資してしまうのはなぜ?

現在、大企業の会社員や公務員の場合は、退職金は2000万円程度もらえることが多いようです。厚生労働省「就労条件総合調査」および内閣官房「退職手当の支給状況」を見てもその水準になっています。

退職金は給与が振り込まれる銀行口座と同じ口座に通常振り込まれます。2000万円というまとまった金額なので、銀行側は対象者に「いつ」「いくら」振り込まれるのか事前に把握することになります。よって、退職金が入金されてから間もなく、銀行や銀行と同グループの証券会社から電話で連絡が来るのです。

当社に訪れるご相談者の中にも、退職金が振り込まれた後に大手金融機関から連絡があり、窓口へ話を聞きに行っている人が多くいます。現役時代、特に投資をしてこなかった投資初心者の場合、まずはプロの意見を聞こうと、大手金融機関の窓口に行って情報収集を開始するわけです。窓口にいる人は、「資産運用」のプロではなく「金融商品販売」のプロではあるのですが、窓口で勧められるままに、退職金のほとんどを「金融機関おすすめ」の投資信託や債券へ投資してしまうようです。