文政権の政策は限界にきている
足許、ルノーサムスン自動車をはじめ一部の韓国企業で労働争議が深刻化している。特に、ルノーサムスン自動車のケースは深刻だ。労働側はあくまでも全面対決の姿勢を崩さず、経営側も厳しいスタンスで対立は激化している。世界的な半導体不足によって自動車の生産は減少しており、同社の業績はかなり悪化することが懸念される。
韓国の労働組合は、目先の既得権益の強化をより重視しているようだ。その背景には、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が最低賃金の引き上げなど、重要な支持基盤である労働組合寄りの政策を進めたことがある。労使対立が先鋭化した結果、中長期的な韓国企業の事業運営体制を不安視する投資家も出始めた。それは、文政権の経済政策の限界と言い換えてよいかもしれない。
一方、サムスン電子などIT先端企業は、世界的な競争力を発揮するわが国の素材メーカーなどとの関係を強化し、より安定したサプライチェーンの確立に取り組んでいる。それに呼応して、わが国の素材メーカーなどは韓国での生産体制の増強を図っている。韓国経済において、労働組合問題を抱える企業とそうでない企業の差異が次第に広がっているようだ。それは中長期的な韓国経済の実力に無視できない影響を与えるだろう。
とうとう韓国からの撤退を示唆
文政権下の韓国では、労働争議が激化し、一部企業の経営に無視できない影響が生じてきた。足許、その状況に拍車がかかりつつあるようだ。
その一例として、ルノーサムスン自動車の労使紛争は深刻化している。2月には仏ルノーの経営陣が「韓国での生産性向上を実現できないのであれば代替案を模索する」と述べた。それは、労働争議が止まらないのであれば韓国からの撤退を真剣に考えるとの警告だ。それほど労働組合の要求は企業の事業運営の効率性を阻害している。
それにもかかわらず、ルノーサムスンの労働組合は基本給の引き上げを経営陣に要求し続けている。5月に入り、労組は全面ストに踏み切った。それは、労働組合からの支持獲得を重視した文政権の経済政策の限界というべきだ。業績が回復している自動車メーカーの起亜でも労組は賃上げや定年退職年齢の引き上げなどを求めている。造船大手の現代重工業でも労使の協調が難しい。