南北統一で歩みよる韓国と瀬戸際外交の北朝鮮
6月16日、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長の指揮によって、開城(ケソン)の南北共同連絡事務所が爆破された。爆破の実行は事前の通告通りだった。爆破の後、金与正氏は今後の対韓工作を軍部に委ねると表明し、自らの指導力を世界に誇示した。
その背景には、金日成、正日、正恩と続く金一族による北朝鮮の独裁体制をさらに引き締め、持続力を高める狙いがある。
今回、特に注目されるのは、6月に入って金与正氏の強硬姿勢が鮮明になったことだ。北朝鮮は韓国を一方的に罵倒している。南北統一を目指してきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領は北朝鮮に対話を求めているが、北朝鮮は無視し続けている。その意味するところは、北朝鮮の眼中に韓国の姿はなく、米国を意識しているということだ。
北朝鮮は、軍事挑発によって韓国を揺さぶると同時に米国からの譲歩を引き出したいと考えているはずだ。そうした北朝鮮の政策で最も困っているのは韓国の文政権だろう。これまで文大統領は対北朝鮮の融和政策を推進してきた。
ところが、北朝鮮からは相手にされず、むしろ、これまでの合意を反故にする姿勢が明確になっている。文政権にとっては、かなり厳しい状況に追い込まれたと考えるべきだ。それを狙って、北朝鮮の“瀬戸際外交”が加速化する可能性は高まっている。連絡所爆破はその兆候の1つと見るべきだ。