メディアと権力の「近さ」を浮き彫りにした「賭け麻雀」

取材か癒着か。新聞記者らとの「賭け麻雀」が発覚し黒川弘務・東京高検検事長が辞職に追い込まれた問題は、検察庁の公務員が賭け麻雀をしていたことに対する倫理観を問うのみならず、メディアと権力、あるいは取材対象者との距離感についても話題に持ち上げた。

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官僚たる黒川氏の辞任や処分については「賭け」「緊急事態宣言期間中」「定年延長問題の渦中の人物」という3つの要素の合わせ技一本で辞職やむなしというところだろう。筆者としても正直、賭け麻雀よりも、『週刊文春』記事内にあったタクシー運転手が聞いたという「『韓国で女を買った』という黒川氏の冗談」についての真偽の方が気になる。

ある産経新聞社OBは「麻雀程度は問題ないと思うが、タイミングが悪すぎた」と語った。そのOBによれば産経社内、OBでも意見は分かれているという。『週刊文春』によれば情報を編集部に持ち込んだのは産経関係者とのことだが、先のOBはこう述べる。

「記者同士、仮に同じ部署にいても、隣の記者がいつ誰と何をしているかなんて普通は把握しようがない。しかも在宅勤務を推奨しているこの時期に、『産経新聞関係者』は『自社の記者と黒川氏が賭け麻雀をする』予定を把握していたことになる。そもそも取材源の秘匿を重んじる週刊誌が、わざわざ『産経新聞関係者』と書くのは不自然だ」

こうした声が多かったのか、翌週の『週刊文春』の続報では、産経新聞関係者からもたらされたのはあくまで「黒川と産経記者が賭け麻雀をやっている」という情報だけで、いつどこでという予定については分からなかったことから、文春記者が取材・張り込みをして「現場」を抑えたと明かされており、初報とはかなり違う形の「経緯」を改めて説明している。