国境なき記者団の「報道の自由度ランキング」によれば、日本は180カ国中67位(2019年発表)である。アメリカは48位、韓国は41位だ。ランキングで低迷する一方、元ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏は「記者の労働環境は天国のようだ」という。日本の新聞社の問題点を聞いた——。

※本稿は、望月衣塑子、前川喜平、マーティン・ファクラー『同調圧力』(角川新書)の第3章「メディアの同調圧力」の一部を再編集したものです。

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米紙が調査報道に力を入れるようになった背景

アメリカを代表する地方紙、シカゴ・トリビューンやロサンゼルス・タイムズを発行していたトリビューン・カンパニーが、会社更生手続きの適用を申請したのは2008年12月だった。翌2009年2月にはニューヨーク・タイムズの経営危機も表面化している。水面下にあった危機が顕在化したことが各方面へ衝撃を与えた。

当時のアメリカは、リーマンショックの震源地にいた。企業の経営は大きく傾いた。新聞社を含めたメディアも例外ではなく、トリビューン・カンパニーの場合は広告収入が大きく落ち込んだことが実質的な引き金となった。

広告収入が望めないとなれば、新聞を売って収入を増やしていくしかない。

発行部数やインターネット版の購読者を増やすには、当然のことながら読者や購読者が面白いと感じる記事が必要になる。必然的にアクセス・ジャーナリズム(権力者から情報をもらう報道方法)よりもアカウンタビリティー・ジャーナリズム、つまり調査報道がクローズアップされてくる。ましてやそのころ、インターネット上には、調査報道を専門とする新たなメディアが登場し、独自のニュースを次々と世の中へ送り出し始めていた。