中国でも「少子高齢化」がはじまっている
――『未来の中国年表』は、東アジア情勢を長年取材する、近藤さんの25冊目の著書です。今作を人口問題を切り口に書かれたのはなぜですか?
河合雅司さんの『未来の年表』を生んだ講談社現代新書の編集部から、中国について「人口動態」を切り口に書かないかと持ちかけられたのがきっかけです。中国政府が発表する統計上の数字は、経済、貿易関係など、素直には信じがたい数字も、時にあります。ただ、こと人口については、比較的まだ正しいことを言っているように見えますから。
2017年、14億近い人口を誇る中国でも、人口減少が始まりました。理由のひとつは1979年から始められた一人っ子政策です。当時、中国の「2代目皇帝」こと鄧小平は、人口激増を憂慮して人口抑制策を推進したわけで、それはある意味で成果を出した。国民が子供を1人しか産まなかったら、人口が増えるわけがありません。
――しかし、「一人っ子政策」はマイナスが大きかった。
結果的に、そう言わざるをえないでしょう。この政策で起こった弊害の1つが、利権化です。一人っ子政策を推進する役所が次々と生まれ、公的制度も整えられた。「一人っ子政策」にかかわる公務員だけで10万人以上いて、「一人っ子政策利権」という言葉も日常的に使われています。
「子供が1人が当たり前」というマインドが根付いた
そして、人口は抑制できたとはいえ、老人が多く若者が少ないという人口ピラミッドになってしまい、将来の社会保障費の圧迫や労働人口の減少が課題になってきました。事態を重く見た「新皇帝」習近平が2013年に方針を転換、一人っ子政策を改めて「二人っ子政策」がはじまりましたが、やはりおそすぎた。そう簡単に庶民のマインドが変わるわけがありません。2010年の時点で中国の一人っ子の数は1億4000万人で、日本の人口より多いという現実があったくらいですから。中国は都市のインフレがひどく、子育てコストが高い。一方で、地方では公共サービスが行き届いていません。急速な経済成長をしているとはいえ、まだまだ中国の国民は今日の生活で精一杯という人が多いわけで、経済的な理由から子供を作りたがらない。結果、子供を2人も産むような人は多くないんですね。
――子育てコストが高くて子供が産めないという問題は、日本と似ていますね。
はい、そうです。しかも、中国のいまの子育て世代は一人っ子政策後に生まれた「八○世代」。彼らは、「四二一家庭」と呼ばれる、祖父母4人、父母2人、子供1人の環境で男の子は「小皇帝」、女の子は「小公主」と散々甘やかされて育った。