なぜ「外国人の受け入れ」を進めるのか
もっとも、ホームタウン構想は騒動になったことで、当初予定された内容から縮小や変更される可能性はあり、政府も「今後の在り方について検討を進めている」という。
ただ、政府や企業の関係者は、基本的なスタンスとしては、より一層の外国人の受け入れを推進している。それはやはり彼らにとっては明確な“実利”があることもその背景にあるだろう。
そもそも、外国人労働者受け入れの目的に関わる人手不足の問題は、低賃金問題ともイコールだ。もし、本当にただの人手不足なら、日本人を含めた全体の賃金水準が上がっていないとおかしいが、実際には、労働分配率は史上最低水準で、その結果、実質賃金も30年、ほぼ右肩下がりだ。一方で上がっているのは、企業の利益率だ。法人企業統計によれば2014年の売上高営業利益率は3.6%だったが、24年には5%であり40%近く向上している。
この企業の利益水準を支えるのが低賃金の労働力だ。10年ほど前までは氷河期世代がこの役割を果たしてきたが彼らも50代に差し掛かり、この代替が外国人材というわけだ。しかも企業は、外国人労働者受け入れによる、摩擦や弊害とはほぼ関係なく、社会的な受け入れコストを負わずに済む。それどころか、外国人の雇用自体にも公費から助成金が出る。企業経営者にとっては、技術革新の必要なく「外国人問題」のデメリットとも無縁で、利益だけ総取りできる確実性が極めて高い政策なのだ。また、移民の増加で人口減少スピードを低減できれば、売上水準の確保や、政府や地方自治体にとっても、税収減の抑制が期待できる。
政府や企業の「利益」になっている
政府や企業に関係する人々にとっては、税収や売り上げの源泉であるGDPが重要あり、それを左右するのは人口ボリュームだ。彼らにとっては必ずしも国内人口の中身が日本人である必要はなく、日本人が減るなら、代わりを外国人で補った方が得となる。一方、日本人の個々人にとっては、外国人労働力の供給で不利になる一人当たりの所得や、今まで通りの地域社会や日本らしさが重要となる。
つまり、移民政策においては、国の「規模」が重要な「政府・企業」に関係が深い社会階層と、身の回りの環境が大事な一般的な日本国民とは、もともと利益相反関係になりやすいという構図があるのだ。
移民政策は欧米で問題が噴出しているが、政府や企業にとっては株価も利益率も税収も過去最高で、数字の面で確実性が高い実利がある。政府や企業の中枢にいて、政策立案に関与できる関係者らにとっては「大成功だから続けたい」というだけなのかもしれない。

