メディア報道に追い掛け回される地獄
メディアの執拗な取材や実名報道によって、加害者家族が社会から厳しく非難されるケースは非常に多いです。
逮捕直後は一時的で断片的な情報しか報道されないため、ときに事実とは異なる情報によって、さらなる偏見にさらされることもあります。有名ロックバンドの元メンバーが強制わいせつ未遂の容疑で逮捕された際、一部のメディアが彼と妻の住居の写真を掲載したこともありました。
取材する記者も仕事ですし、上司からの厳しい指示により加害者家族を追っているのかもしれません。しかし、メディアにもその影響力を考慮したガイドラインがあって然るべきでしょう。
また、新聞やテレビで取り上げられなくても、近年は加害者のSNSアカウントが即座に特定され、本人だけでなく家族の氏名や住所など個人情報がさらされるケースが散見されます。勝手に抜粋した画像や情報をもとに、本人や家族に関する「まとめサイト」がすぐに立ち上がり、フェイクニュースを含む情報がまたたく間に世界に拡散されていきます。
閲覧数を上げることで収入を得ることを目的とした「トレンドブログ」では、真偽不明の情報が飛び交います。「たとえ情報が誤っていても、アクセス数を稼げて収益が得られればそれでいい」と言わんばかりの無責任な情報が加害者家族を追い詰めていくのです。
ネット上のデジタルタトゥーが要因となり、加害者家族の就職や結婚などが取り消される、職場を追われる、加害者当人が判決後・出所後に復職できないといったケースも多々あります。
犯罪者の家族も地獄に落とされる
ここまで述べてきたように、加害者家族の生活は事件発覚後に一変し、心理的・社会的・経済的な問題に一気に直面することになります。
あらゆる犯罪のなかでも、とくに性犯罪は白眼視されます。性に関する話題がタブー視されがちな日本ではなおさら、性犯罪では加害者と被害者のみならず、加害者家族も偏見にさらされます。性犯罪の加害者は、「教師と生徒」「上司と部下」など権力や信頼関係を利用して犯行に及ぶことが少なくありません。そのため、社会的な非難がいっそう強まります。
幼い子どもが被害に遭う小児性犯罪事件では、社会からの応報感情がより大きく、被害者と同じ年代の子どもを持つ近隣の親たちの不安感情が高まるため、性犯罪の加害者家族に対しても、より厳しい「世間の目」が向けられる傾向があります。


