VOL.4
テクノロジーが描く未来
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KEY PERSONS
  • 江藤 力 ( えとう りき )

    NEC Corporation

    データサイエンス研究所
    データマイニング・テクノロジーグループ

    2010年3月大阪府立大学航空宇宙工学科卒業、2012年3月東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修士課程修了、同年4月NEC入社。機械学習・データマイニング・システム同定の原理研究やビジネス応用に従事し、2015年に第29回先端技術大賞(フジサンケイビジネスアイ賞)受賞。AI・アナリティクス事業部を兼務し、NECの最適化事業をけん引する

  • 小山田 昌史 ( おやまだ まさふみ )

    NEC Corporation

    データサイエンス研究所
    知識・推論テクノロジーグループ

    2011年3月筑波大学情報学群情報科学類卒業、2013年3月筑波大学大学院システム情報工学研究科修了(修士)、同年4月NEC入社。2018年3月筑波大学大学院 システム情報工学研究科修了(博士)。研究分野はデータベース、機械学習、自然言語処理。データドリブンDX事業部において「NEC Data Enrichment」の開発責任者を兼務。

眠っているデータを掘り起こす
  • Q
    AIの活用に取り組み始める企業が増えています。初期段階ではどのような課題につまずきやすいのでしょうか。
    A
    小山田:データの不足が原因で、AIの精度が低いことに悩む企業は少なくありません。しかし、ビジネスを行っている以上、社内には顧客情報や売上履歴、日報や議事録、機械の稼働ログなど、膨大なデータが日々蓄積されているはずです。つまり、データが不足しているのではなく、AIに使える「整えられたデータが足りない/見つかっていない」のです。そこで私が研究開発を行っているのが、社内に眠っているデータを整形して掘り起こすとともに、社外に散らばる関連データも見つけ出し統合することで、高品質でリッチなデータを作り出しAIの精度や解釈性を向上させる技術です。

    データを整形するツール自体は昔から存在しますが、それらはデータの専門家が多くの労力をかけて使うものでした。私が取り組んでいる「NEC Data Enrichment」は「データの意味や関連性をAIで推定して抽出する」ことで、専門家の労力の削減や非専門家による高品質なデータの整形を可能にします。
  • Q
    この技術によって、どの程度の効率化やAIの精度向上が見込めるのでしょうか。
    A
    小山田:単純比較はできませんが、データの整形だけを比べると1週間が数10分に短縮されます。たとえば毎月1回、最新の動向に合わせてデータを取得して分析を行っているとします。その都度1週間かけてデータを収集していると、人件費がかかるだけでなく、分析開始までに1週間のタイムラグが発生してしまいます。一方、この技術を使えば、他社よりも6日間早くアクションを起こせるようになるわけです。それが毎月続くのですから、競争力に大きな差が生じるのは明らかです。

    実際に「NEC Data Enrichment」の掘り起こしたデータを活用することで、需要予測の精度が10~20%向上した事例があります。「NEC Data Enrichment」の導入前と比べ、機会損失や廃棄ロスが大幅に減り、利益と収益性の両方に大きな効果をもたらしました。
熟練者やインフルエンサーの「意図」を再現
  • Q
    予測精度が10%上がったとしても、「商品をどれだけ発注すればいいのか」という意思決定は人が行わなければなりません。結果は担当者によって左右されてしまいませんか。
    A
    江藤:そうならないようにするため、私は予測値を提供するだけでなく、判断や意思決定までサポートするための「意図学習」を研究しています。たとえば、平日はシフトをどう組んだか、おにぎりを何個発注したかといった過去の意思決定履歴から、その意図を学習し利用することで、たとえ店長がいなくとも同様の意思決定が可能になります。

    また、同じ粗利率を目指すにしても、考え方は人それぞれであり、Aさんは売上を増やすことを重視するけれど、Bさんはコストを減らすことを重視するといったような意図の違いが生じます。こうした考え方の違いを表現するため、どの観点をどれくらい重視するかがわかるように意図をホワイトボックス化(※)できることも、意図学習の価値です。また、ホワイトボックス化できることで、改善・精度向上がしやすくなる、納得感のある意思決定がしやすくなる、説明責任が果たせるといったところもポイントになります。
※ホワイトボックス:内部構造や動作原理、仕様などが公開されたり明らかになっている装置やソフトウェア、システムなどのこと
  • Q
    意図学習には、その他にどのような用途が考えられますか。
    A
    江藤:NECでは人工衛星の運用を行っており、お客様からのリクエストに応じて地球の写真を撮影しています。人工衛星の軌道を変えることはできないので、どのような順番で撮影していくか計画を立てる必要があり、熟練者の経験が求められていました。そこで意図学習を適用したところ、再現率は90%以上で、そのうえ熟練者が見逃していた観測のチャンスを見つけ出すことにも成功しました。熟練者の答えがいつも100点とは限らないので、もしかすると人の能力を超えていたかもしれません。

    意図学習は他にも、棚割り最適化やシフトのスケジューリング、人材配置、配送経路計画といった様々な最適化にも貢献します。
  • Q
    意図学習によって、人の存在は不要になってしまうのでしょうか。
    A
    江藤:何を重視するかは、社会情勢やトレンドの変化に合わせて絶えず見直していかなければなりません。それができるのは人だけです。AIに任せられるところは任せて、人の役割は残りのクリエイティビティが求められる部分を磨いていくようになるでしょう。

    小山田:つまり、個人の価値がますます重要とされる時代になっていくということですね。

    江藤:小山田さんのような服を着てみたいと思ったときにも、意図学習は利用できます。インテリアコーディネーターの意図をコピーして家具を選んだり、インフルエンサーと同じ感覚で旅行プランを計画したりするといった用途も考えられます。データが流通する時代になってきましたが、私は意図を流通させたいと思っています。
NECが描くデジタルトランスフォーメーション
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最先端AIを通じて「できたらすごい」を創り出す
「NEC Data Enrichment」は、お客様がお持ちのデータに関連するデータを社内外から自動で見つけ、統合整備することで、データを高品質化し分析の品質を向上させます。データベースやExcelのような表形式データだけでなく、営業メモや議事録のようなテキストデータもサポートし、社内に塩漬けになっていたデータの利活用を促進します。

「意図学習」は、お客様課題を最適化問題として捉え、再現したい意思決定履歴データから、その背後の意図として目的関数の重みを学習します。
そして、学習した重みに基づく分析や最適化を実行することで、意思決定の可視化・分析・自動化が可能です。NECはこれまでの機械学習および数理最適化のノウハウ・経験を元に、お客様の様々な場面での意思決定をAIによりご支援します。

NECは、こうした最先端AI技術群「NEC the WISE」を通じて組織と人の能力を引き出し、お客様と「できたらすごい」を創り出していきます。
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