VOL.3
レジリエントな世界を描く
NECのDXコンサルティング
Sponsored by NEC
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KEY PERSONS
  • 熊谷 健彦 ( くまがい かつひこ )

    NEC Corporation

    DX戦略コンサルティング事業部
    エグゼクティブ コンサルタント リード

    業種を問わないデザイン思考を活用したサービスデザインに注力。多国籍PJメンバーでの大企業向けの新規事業のビジネスデザイン、顧客体験設計が強み。事業会社・ITソリューションベンダーでの営業・プロダクトマーケティング部門での経験を活かした業務とシステムを統合したアドバイザリー業務やオファリング開発。

単なる「ものづくり」から「価値を販売」するビジネスへの移行
  • Q
    日本の製造業が置かれている状況について、どのように見ていますか。
    A
    アジアを中心とした新興国が、安価な労働力を背景に台頭するようになっていますが、最近ではコスト面だけでなく、性能面でも競争力を持つようになりました。そのため、日本企業は一段と苦しい立場に置かれています。現状を脱するためには、日本の強みである高品質・高性能のものづくりは維持したうえで、新たな価値を提供することが必要です。その1つが、顧客が生み出したい成果(アウトカム)に貢献することであり、メーカーは「価値を販売する」ビジネスへの変革が求められています。
  • Q
    「価値を販売する」とは、どういうことでしょうか。
    A
    たとえば、産業機械メーカーの場合、顧客企業が求める成果は、機械を所有することではなく、機械を利用してサービスや製品を生み出して利益を上げることです。そのためには、これまで、機械を購入した顧客企業が実施していたメンテナンス業務まで含めて、サービスとして提供することで、顧客企業に対して、「製品の稼働」を提供するビジネスモデルの転換を図ることが重要となります。この概念は「サービタイゼーション」と呼ばれるものです。

    一例を挙げると、航空機エンジンを手がけるイギリスのロールスロイス社は、エンジンを販売するのではなく、「飛行」という機能を提供するサービスに転換しました。また、圧縮空気を生み出すコンプレッサーのメーカーであるドイツのケーザー社は、コンプレッサーそのものを売るのではなく、「圧縮空気」を使った分だけ課金するビジネスを展開しています。

    このように、顧客の目線が製品・サービスの「購入価格」ではなく、そこから生まれる「価値」に向けられると、値下げ圧力に対抗することができるようになります。たとえば、機械の継続使用を保証するためのメンテナンスサービスを提供価値として付加することによって、このサービスを複数の顧客企業へ提供したり、デジタルを活用したり、といった効率化を実現できます。この効率化は、トータルの原価低減による利益率の向上につながりますし、様々な保守情報の蓄積によって、保守の高度化や新たなサービスを展開することも可能になります。
サービタイゼーションにより、日本企業を再活性化させる
  • Q
    メーカーはアウトソーシングパートナーに変わるということでしょうか。
    A
    そのとおりです。ただし、一般的なアウトソーシングと同一ではありません。サービタイゼーションは、「SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証契約)のラインをどこに引くか」が、ビジネスの成否を分けます。顧客が「この稼働率を維持してくれるのであれば、餅は餅屋に任せて本業に集中しよう」と思う料金に設定して利益を得るためには、メーカーが高度な業務プロセスやICTシステムを持つ必要があります。
  • Q
    「製品のサービス化」という意味では、生活に身近な例として「カーシェアリング」があります。
    A
    サービタイゼーションと「製品のサービス化」は、同一の取り組みだと捉えられがちですが、本質的に異なります。一般的なカーシェアリングサービスが提供するのは自動車を利用する権利であって、「移動」という成果まではコミットしていません。一方、サービタイゼーションは、SLAベースの成功報酬型で、利用時間に応じて課金するだけでなく、達成できない場合はメーカーがペナルティを負います。

    また、「サービスで利益を上げる」という側面にフォーカスするのも、本質から外れかねないため、注意が必要です。サービスのような無形の価値は、海外企業が比較的容易に模倣することができます。それに対し、日本が誇る高度な製品づくりのノウハウは、世代を超えて長年にわたり研究を積み重ねた成果が反映されており、易々と模倣できるものではありません。ですから、十分に価値があり売れ筋だったモノを、サービスの要素を加えることで復活させる「リバイタライズ(再活性化)」を目指すべきなのです。

    リバイタライズを行うためには、組織の見直しも不可欠です。生産、営業、保守サービスといった役割ごとに組織が縦割りになっていたのでは、これらを横串で貫く収益モデルを実現することが困難です。経営トップの意思決定が十二分に反映された組織改革プロジェクトでもあることを認識しておかねばなりません。

    日本企業には元々、協調してチームで結果を出そうとする文化があります。日本企業がリバイタライズで復権するポテンシャルは十分にあると考えています。
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NECが描くデジタルトランスフォーメーション
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伝統と革新をベースに日本企業のサポートを行う
伝統的な製造業の営みに加えてスマートファクトリー化を実現してきた経験、ICTサービスプロバイダーとしての知見、そして組織変革をともなうDX戦略コンサルティングの機能。これらのアセットや実行力を背景に、NECは日本の製造業に対して、既存製品のリバイタライズと事業のトランスフォーメーションをご支援しています。

「サービタイゼーションを実現するためには、最初にしっかりと方向性を見定め、順を追って取り組みを進めていく必要があります。また、そもそもサービタイゼーションに向かない企業や製品もあります。そこで私たちは、成熟度診断や適合性診断といった初期の意思決定を補助し、まずはリバイタライズの足掛かりを作ることからご支援を開始しています」(熊谷氏)