VOL.1
世界1位を5回獲得!
NEC顔認証技術の最前線
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KEY PERSONS
  • 今岡 仁 ( いまおか ひとし )

    NEC Corporation

    NECフェロー

    1997年NEC入社。脳視覚情報処理の研究開発に従事したのち、2002年に顔認証技術の研究開発を開始。世界70か国以上での生体認証製品の事業化に貢献するとともに、NIST(米国国立標準技術研究所)の顔認証ベンチマークテストで世界No.1評価を5回獲得。

  • 水口 喜博 ( みずぐち よしひろ )

    NEC Corporation

    東京オリンピック・パラリンピック推進本部 本部長

    1993年NEC入社。官公庁などに対する生体認証システムの販売・開発に従事し、第二官庁ソリューション事業部シニアマネージャーなどを歴任。2015年4月より東京オリンピック・パラリンピック推進本部パブリックセーフティ事業推進室⾧、2017年4月より現職。

*様々なシーンで使われる顔認証システム
オリンピック・パラリンピックのゲートに必要なシステムの最適フロー化
  • Q
    国際的な巨大イベントで顔認証システムを運用する場合、どのような難しさがあるのですか。
    A
    水口:例えば、オリンピック・パラリンピックの場合、選手・関係者はアクレディテーションカード(資格認定証)を携行しています。従来はこれを基に目視で本人確認をしていたのですが、今回、顔認証技術を組み合わせることになりました。従来より入場に時間がかかるようでは使い物になりません。通過する関係者には、2メートルを超える高身長の選手もいれば、車椅子の選手もいます。いちいちカメラの向きを調整している時間もありません。ゲートで滞留することなく、すいすいと通り、それでいて資格外の人は確実に阻止しなければなりません。

    この一連の流れの中で、顔認証にさける時間はわずかなもの。そうなると、入場者の動線はどうするか、何メートル先から顔を撮影するのか、カードのタッチの位置はどの辺がいいのか、車椅子でもスムーズに近づき、通り抜けられるのか…。そういう全体的な視点から何度も実験を重ねて最適なフローを作っていきました。

    今岡:実際の現場では、単に認証精度だけでなく、そういう総合的なスループット(処理量)を上げることも大切なんです。それこそ、ゲートでの立ち位置を示すマットの置き方までスループットを上げるノウハウになります。逆光にならないようなゲートの向きも考慮します。顔の向き、表情、照明条件、屋外での利用など、さまざまな条件を考えなければなりませんし、スマホを見ながらうつむき加減で入ってくる人など、みんな思い思いに歩いてきますから、そういうあらゆるパターンを想定してシステムを作るんです。
  • Q
    目視によるチェックには、どのような課題があったのですか。
    A
    水口:精度とスピードです。わかりやすい例で言えば、私たち日本人にとって外国人の本人確認は慣れていないために判断が難しくなりがちです。目視には人の経験や得意不得意が出やすいですが、顔認証技術なら高い精度で本人確認ができます。人間の目視だと、「写真と少し違うような気もするが、でも本人だろうな」と一瞬考え込む場面もありえます。そのたびにいちいち声をかけていては、ゲートが大渋滞になってしまいます。

    その点、顔認証技術なら高速・的確に判定します。ごく例外的なケースだけ警備員が声をかければいいのです。こうやっていろいろなノウハウを積み重ねていった結果、目視と比べて、顔認証技術を組み合わせたシステムのほうが3割くらい所要時間を短縮できることがわかりました。
顔認証は、社会でいろいろな応用の入り口になる
  • Q
    そのような大規模イベントでの知見が蓄積されれば、社会全般にも広げていきやすくなりますね。
    A
    水口:そうですね、大規模イベントのような最高峰の厳しい条件を経験して、運用にも関わっているからこそ、ここから小規模向けや一般向けといった具合に展開していけるのだと思います。スポーツや万博などの大きなイベントはもちろん、まちづくりや日常生活も含め、応用先は無限ですね。

    今岡:顔認証自体は手段であって、その先にいろいろな目的があります。顔で本人確認ができるということは、決済につなげることもでき、財布・カード不要で顔を見せるだけでの買い物も実現します。また、顔認証の「顔」を人間の顔と限定しなければ、さらに可能性は広がります。例えば、がん病変の画像をAIに大量に学習させておき、内視鏡診断で捉えた画像に、がんの「顔つき」をした病変があるかどうかを見つけ出す支援も可能です。このように顔認証はいろいろな応用の入り口になります。顔を切り口に、社会のいろいろな面で役に立つと確信しています。
NECが描くデジタルトランスフォーメーション
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顔認証活用事例
iStock.com/Nikada
空港
ハワイ州主要5空港では、NECの顔認証・映像分析技術、サーマルカメラによる感染症対策ソリューションを活用した感染症水際対策が始まっている。サーマルカメラで設定以上の体温(体表温度38度以上)の渡航者を検知すると、管理者に通知するとともに、空港内に設置したカメラと世界No.1の認証精度を誇る顔認証技術・映像分析技術で対象人物を特定する。同州ではこうした取り組みを通じ、感染拡大を抑えながら経済復興策に取り組んでいる。
iStock.com/guvendemir
オフィスビル
株式会社三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は2021年4月に開業した豊洲ビル(東京江東区)に入居する従業員を対象に、NECの顔認証技術による入退館システムを導入した。非接触でマスクを着用したまま高精度な本人確認が可能なため、新型コロナウイルス感染症などの感染リスク低減につながり、安全安心な環境づくりに寄与している。
プロ野球
2020年10月、横浜スタジアムで開催されたプロ野球公式戦で、十分な感染症対策を講じたうえで、収容人数80%を目安に観客を入れて試合を開催、観客席のマスク装着状況の判定にNECの顔認証技術が利用された。本記事でも触れたマスク判定技術を活用したもので、着用率が低い客席が見つかると係員が注意して感染対策を徹底する一助となった。
iStock.com/Vitalii Karas
Jリーグ
2020年11月、ノエビアスタジアム神戸で行われたJリーグ・楽天ヴィッセル神戸の試合で、NECの顔認証技術を生かして一般来場者のマスク着用状況をチェックし、感染対策に役立てた。さらに、事前に顔情報を登録した報道関係者向けに顔認証技術による来場受付も実施された。
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