全ての子どもに一律の給付、3人目からは倍額
この10月から児童手当が拡充されています。金額支給対象年齢が拡大し、所得制限も撤廃されました。子どもを持つ世帯にとっては大変ありがたい改正ですね。今回は児童手当改正のポイントと注意すべきポイントをお話しします。
児童手当は子育て支援の一環として、児童を養育する保護者に毎月一定額が支給されています。ですが、所得制限によって、支給額が減額となっている世帯や支給停止となっている世帯がありました。今回の改正では「次世代を担う全てのこどもの育ちを支える基礎的な経済支援」という位置づけを明確化するために、児童手当が大幅に拡充されることになりました。児童手当拡充の主な変更点は5つです。
1 所得制限を撤廃
今までは所得によって受給に制限があり、子ども1人5000円の特例給付になっている世帯や支給停止となっている世帯がありました。今回の改正で所得制限が撤廃され、所得にかかわらず全ての子育て世帯で満額給付を受けることができるようになりました。3歳未満の子については1万5000円、3歳以上高校生年代までは1万円の支給となります。
2 支給期間の延長
今までは中学生以下が支給対象となっていましたが、改正によって高校生年代まで支給対象となりました。高校に進学しているいないにかかわらず18歳に達する最初の3月まで支給の対象となります。アルバイトや仕事をしていたとしても、保護者に経済的負担があれば支給の対象となります。
3 第3子以降の支給増額
子ども3人以上の世帯が特に減少しているとのことから、第3子以降の支給額が1万5000円から3万円に増額されることになりました。また、今までは増額の対象となる第3子以降の子は3歳~小学生に限られていましたが、今回の改正で、第3子以降の子の年齢にかかわらず児童手当の対象年齢であれば増額となります。
年3回だった支給回数が年6回に
4 子どもの人数の数え方の緩和
児童手当では子どもの人数の数え方に特徴があり、今までは18歳到達後の最初の年度末までの子どもしか子どもの人数にカウントしてもらえませんでした。つまり、子どもが3人いたとしても第1子が高校を卒業すると、第1子は子どもの人数に数えてもらえなくなるため、第3子は第2子扱いとなり、第3子以降の増額の対象ではなくなっていました。
今回の改正で、22歳到達後の最初の年度末までの子どもまで子どもの人数として数えることになりました(緩和されたとはいえ、できればこの22歳という縛りもなくしてもらいたいものですね……)。
5 支給回数の増加
今までは1年分を3回に分けて、6月、10月、2月に支給されていましたが、今回の改正で、12月、2月、4月、6月、8月、10月の年6回の支給になります。改正後の第1回目の支給は12月となります。
増額分は申請しないともらえない
今回の改正によって児童手当を受け取ることができる世帯が増えることになりました。ただし、今回新たに児童手当を受けられるようになった世帯や今回の改正によって子どもの人数のカウントに変更が生じる世帯は、申請を行わないと改正後の児童手当を受けることができません。
今まで所得制限や所得上限によって児童手当や特例給付を受給していない世帯や支給対象外だった高校生を養育している世帯は申請が必要です。また、今まで子どもの人数としてカウントされなかった高校生年代以上の子どもがいる世帯は支給対象として認定される子どもの人数が変わるため申請が必要です。まだ申請をしていない場合は、2025年3月31日までに申請すれば、2024年10月分からさかのぼって受給することができます。お住まいの市区町村に申請してください。
手放しで信用できない国の3つの前科
1 いつまで続くかわからない
今回の改正で、支給対象や金額が拡大され、子育て世帯にとってはありがたい制度に変わったように思います。ただし、手放しでは喜べないものだと思っています。児童手当の歴史を過去にさかのぼり、2010年に子ども手当が創設された際のことを思い出してみましょう。
子ども手当では所得制限を撤廃し、子ども1人あたり月2万6000円を支給するという民主党政権の大盤振る舞いの予定でした。2万6000円の支給に先駆けて、2010年に38万円の年少扶養控除が廃止され、所得制限なしの月1万3000円の支給が開始されました。
しかし、当初2011年から予定していた月2万6000円の給付については財源の不足から結局実現せず、その後、2012年には自民党安倍政権になって、再び所得制限が設けられてしまいました。にもかかわらず、年少扶養控除は復活していません。さらに2022年には所得上限以上の世帯については支給停止となっています。
私は2009年に第1子、2010年に第2子を出産し、今は6人の子どもがいます。私が子育てを始めてからの15年の間にここまで子育て支援の方向性がコロコロ変わることに驚きました。今回も児童手当拡充の議論が始まったのは所得上限が設けられた直後だったので、決定後も本当に支給開始されるのか信じられませんでしたが、なんとかスタートしたようです。ただし、今後もこのような手厚い支援がずっと続くのかは疑わしいと思っています。
2 増税の可能性
2010年には年少扶養控除がなくなったことで、結局増税されることになりました。また、今回も2026年からは高校生年代(16歳~18歳)の扶養控除は縮小予定です。児童手当支給額以上の増税となるケースはまれですが、児童手当の支給額分がまるまる可処分所得として増えるわけではないということを知っておかないといけません。
3 社会保険料増額の可能性
また、知らない間に社会保険料の増額で結局手取りが減るということもあり得ます。今回も社会保険料の増額で一人500円、1000円負担増という話もありました。また、この10月からは社会保険の加入義務適用が拡大しています。消費税が上がるときには大騒ぎをするのですが、なぜか社会保険料は、上がってもあまり世間で騒がれない印象です。
あてにしてはいけない児童手当の活用法
児童手当をあてにして生活をしたり、学費準備をすると痛い目に遭うというのが経験者のアドバイスです。実際に、所得制限がなかったはずが、所得制限が設けられて月5000円の給付に変わってしまったり、所得上限を超えて5000円の特例給付さえ受け取れなくなったということが起きています。このように過去の遍歴を見ると短期間の間に方針が変わり、予定していた金額が受け取れない、増税や社会保険料負担の増加によって結局手取りは増えていないということは今後も可能性は大いにあります。
児童手当を使い切るような生活をすることはおすすめしません。児童手当が減額になったときに生活がまわらなくなってしまうからです。そこでおすすめしたいのは、児童手当はなかったつもりで“つもり貯金”をしておくことです。できれば、NISA等を活用して運用をするといいですね。
本当はないはずのお金は運用しやすい
運用にはリスクがありますが、本来ないはずのお金と思えばリスクも取りやすいのではないでしょうか。もちろん各自のその他の資産状況やリスク許容度は異なるのですが、特に今回新たに児童手当が貰えるようになった世帯や増額となった世帯は、増額分を運用するといいかもしれません。
運用をする場合には、非課税メリットがあり、リスクを分散しやすいNISAのつみたて投資枠での運用がおすすめです。
つみたて投資枠に選定されている銘柄は手数料が安く、積み立てに適した銘柄になっています。毎月積み立てで投資信託を購入することで購入価格を平準化することができます。今回の改正で2カ月に1回の支給になったので、積み立てもしやすくなったのではないでしょうか。
また、支給期間も延びたので長期投資も可能になったと思います。今後、万が一また制度改正等で投資資金の拠出ができなくなった場合には、新NISAでは非課税期間にしばりがありませんので、つみたてをストップして投資した資金を据え置くこともできます。
今は株価が乱高下して、投資を始めるのは怖いと思われる方もいるかもしれませんが、私が子育てを始めて、資金作りをスタートした時期はちょうどリーマンショックの渦中でしたし、その後も幾度となく株価のショックは起きています。それでも長くコツコツ積み立てていたおかげで資産は確実に増えました。収入の一部を貯蓄するという生活習慣自体にも力があるものです。
まとめ
これまでの経験から、国や自治体が子育てにとって都合がいいことをするときには、何か裏があると思ってしまいますね。別なところでマイナスがあるのではと疑ってかかった方がいいようです。児童手当は一見、子育て世代にとっては、助かる施策に見えますが、あてにしすぎると足元をすくわれる可能性があります。自助努力と創意工夫で学費を準備しておきましょう。これから児童手当が増額される方は特に、児童手当で“つもり投資”を始めてみるのはいかがでしょうか。