毎月積立をすると商品券を受け取れるデパート積立は、利回りに換算すると年利15%。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「利回りでは最強の商品だが、使い方によっては後悔することもある。有利に使うには工夫が必要」という――。
高島屋
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12カ月積立をすれば1カ月分のおまけがつく

まだまだ超低金利が続く中、約15%もの高利回りを、確実に得られる商品があります。それは、デパート積立(百貨店友の会積立)。知る人ぞ知る商品で、数字だけを見れば、「最強」の商品と言っても過言ではありません。

しかし、このデパート積立で失敗(後悔)をする人は決して少なくはないのです。

私自身も、デパート積立歴20年以上を誇る愛好家ですが、今回は、そんなデパート積立のカラクリを、そして失敗(後悔)しないためのポイントを書いてみたいと思います。

デパート積立とは、一般的には、毎月一定額を積立、1年後(12カ月後)に、積立額13カ月分の満期金を受け取る商品です。たとえば、毎月1万円の積立なら、1年後には13万円の満期金となります。

積立額は5千円、1万円、3万円など、百貨店によってさまざまですが、つまりは、1カ月分の積立額がおトクとなるわけです。

デパート積立が年利回り15%のワケ

毎月1万円の積立なら、積立総額12万円に対して1万円の収益だから、約8.3%(1万円÷12万円)ではないか……と思われるかもしれませんが、そうではありません。たしかに、投資額と収益の関係だけを見れば、利回りは約8.3%です。

しかし、この約8.3%は、積立総額12万円を最初に一括で払い込み、1年間預けたときの数字なのです。

実際には、初月の積立額1万円は1年間きっちり預けますが、2カ月目以降の預入期間は1年未満であり、最終月の積立額1万円にいたっては1カ月しか預けていないのです。すなわち、積立の資金効率は非常に良くて、計算の詳細は割愛しますが、この場合、実質の利回りは約15%となるのです。

投資に関心がある人なら、この数字を見逃すはずがありませんよね。しかも、デパート積立のスゴイところは、この数字だけではありません。

デパート積立の利益には約20%の税金がかからない

通常、預貯金の利子や、株式の配当金・売却益といった収益には、20.315%もの税金がかかります。仮に10万円の収益を得たとしても、約2000円も税金で取られるのは痛いですよね。

しかし、このデパート積立による収益は、なんと非課税(※)なのです。つまり、1カ月分の積立額が、そっくりそのまま収益として、懐に入ってくるわけです。

※正確には雑所得として所得税・住民税の課税対象となるが、その収益が年間20万円以下であれば、一般の会社員・公務員であれば申告不要。

また、デパート積立をしていると、その百貨店独自の特典を受けることができます。

特典の内容は百貨店により異なりますが、例えば、私が積立をしている高島屋での特典は、以下の通りです。

〈高島屋のデパート積立の特典例〉

・特別優待会での特別価格
・ホテルやレストラン等の提携施設での優待サービス
・有料催事での入場無料 など

また、積立の新規申込・増口に際しては、上手くキャンペーン期間中に手続きすることができれば、あわせてキャンペーン特典を受けることもできます。ちなみに私は先日、そんなキャンペーン期間を狙って増口をして、「チョコレート詰合せ」をいただき、大満足しております。

家計簿をつける人
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なぜ、デパート積立で後悔するのか?

さて、そんな素晴らしいデパート積立ではありますが、冒頭でも書いたように、このデパート積立で失敗(後悔)をする人は決して少なくありません。その理由は主に、以下の2つのデメリットにあります。

実際、私もかつてはデパート積立で失敗(後悔)したこともあり、その反省も踏まえて、そのデメリットへの対応策も合わせて、紹介させていただきます。

1つ目のデメリットは、満期金は現金ではないことです。

満期金は、その百貨店の金券や友の会カード(に入金)で受け取ることになり、すなわち、その百貨店でしか使えないのです(※)

なので、その百貨店で買物をする見込みがなければ、デパート積立の魅力は、一気に下がってしまうのです。

※当該百貨店であれば、積立申込をした店舗以外でもOK。

すなわち、「その百貨店で買物をする見込みがある」ことが、デパート積立を利用するときのマスト条件となるわけです。

一見、それはさほど難しい条件ではないように思えます。しかし実際には、頭では分かっていても、あまりの高利回りに惹かれて、その百貨店で買物をするか否かの見込みを考えずに、積立を始めてしまう人もいます。私もそんな一人でした。

最初のデパート積立で私が失敗した理由

私が最初にデパート積立をしたのは、阪急百貨店でした。

当時は忙しく、優雅に百貨店に立ち寄る余裕などまったくなかったのですが、そのあまりの高利回りに目を奪われ、「梅田にあるし、いつか利用することもあるだろう」との軽い気持ちで、積立を始めたのでした。

当時は電車移動が多く、関西の巨大ターミナル駅である梅田駅には毎日のように行っており、また、阪急ブランドへの憧れも大きな動機でした(関西では、阪急ブランドの威光は絶大)。

しかし、相変わらず忙しい日々は続き、そして、相変わらず百貨店に立ち寄る余裕などなく、せっかくの満期金は持て余すこととなりました。ムリヤリ何とか消費した記憶が、かすかにある程度です。

生活スタイルを考慮して高島屋でリベンジ

そんな反省から、デパート積立からはしばらく離れていたのですが、その後、私の生活スタイルは大きく変わり、自宅で仕事をすることが増え、時間にも余裕が出てくるのでした。

また、電車で梅田駅に出ることは減り、自転車での移動が増えてきました。ちなみに、自宅からの自転車圏内には高島屋が2店舗(泉北・堺)あり、野菜や総菜など、普段の買物でよく利用するようになりました(※)

※百貨店は高級なイメージがあるが、地方店舗の食料売場は、意外とリーズナブル。

となると、ふつふつと湧いてくるのは、デパート積立への思いです。かつての失敗(後悔)もあり、躊躇はしましたが、この生活スタイルは今後も変わることはないだろうとの確信から、すなわち、高島屋は「これからも絶対利用し続けるだろう」との確信から、デパート積立を再開し、今に至っております。

そして、満期金はしっかりと日々の生活の中で、役立てております。

無駄遣いしてしまう心理にどう対抗すればいいか

2つ目のデメリットは、満期金に気が大きくなってしまい、ついつい、ムダ遣いをしてしまうことです。毎月1万円コースであれば満期金は13万円と、そこそこまとまったお金が手に入るわけですから。

もっとも、そこはしっかりと気を引き締めて、ムダ遣いをしないようにすればいいわけですが、それができれば苦労はしませんよね。私も、満期金が入れば、ついついデパ地下に足が向いてしまいます。

ですので、デパート積立が紹介される際には、「満期金が入っても、ムダ遣いには気を付けましょう」「それが本当に必要な買物か、もう一度考えましょう」といったアドバイスを、よく見かけるわけです。

そんなアドバイスを受けて、「満期金だからと言って、ムダ遣いをしないように」と、自身を諫めることになるわけですが、しかしそれでは、せっかくの満期金が、ストレスの原因となってしまいかねませんよね。

ムダ遣いがムダ遣いでなくなる方法とは

まとまったお金が手に入れば、気が大きくなってしまうことは、自然な心理です。そこで、そんなムダ遣いの衝動を抑え込むのではなく、それを、抗いがたい「人間心理のメカニズム」であると認め、ムダ遣いを肯定的に捉えてはいかがでしょうか?

誤解を恐れずに言えば、デパート積立は「ムダ遣い」のため、と割り切るのです。具体的には、デパート積立の満期金は、普段なら買わない(買えない)ようなものを買うためのお金として、最初から色分けしておくことです。

そうすれば、心置きなく好きに使えるわけですから、とくに、普段から節約のストレスを抱えている人にとっては、絶好のガス抜きともなるでしょう。実際、私も、そのように割り切ってから、気持ちがかなり楽になりました。

また、普段なら買わない(買えない)ようなものを買うことによって、物理的にも精神的にも、日々の生活のクオリティが上がるかもしれません。そうなれば、それはムダ遣いではなく、素晴らしい買物です。

元本保証なし、百貨店の倒産リスクには要注意

もちろん、単なるムダ遣いとなる可能性もありますが、そんなチャレンジができるのも、「ムダ遣いと割り切る」気持ちの余裕があるからこそですね。先日、私は満期金で(思い切って)高価なワイシャツを買いました。

最初は「ちょっと贅沢だったかな」とも思いましたが、実際に着てみると、それは非常に着心地が良く、また、良いものを身につけているとの自信から、仕事に良い影響が出ております。

ちなみに、デパート積立には元本保証はないので、百貨店が倒産等すれば、全額が戻ってこない可能性があります。その視点からも、いくら資金に余裕があったとしても、そんな万一のリスクを考え、デパート積立への掛金額は「元々はなかったと思える」程度の金額にするべきでしょう。

デパート積立を、絶対に利用すべき人とは

デパート積立で失敗(後悔)する人は、その高利回りに惹かれて、「おトクだし、とりあえずやってみよう」と、そのデメリットを無視して(もしくは軽く考えて)やってしまう人です。

ですので、そのデメリットである「満期金は、現金ではない(当該百貨店でしか使えない)」「満期金は、ムダ遣いしてしまうもの」をしっかり理解して、そして納得のうえ、心構えができているのであれば、デパート積立で失敗(後悔)することはないでしょう。

約15%もの高利回りを誇るデパート積立は、インフレにも十分対抗しうる商品でもあるわけですから、この物価高の中、ぜひ、大いに活用したいところです。

とくに、「この百貨店で、お目当てのモノがある」と、すでに、百貨店で買いたいものが明確に決まっている人にとっては、デパート積立は、まさに夢の商品と言っても良いでしょう。そんな人にとっては、デパート積立のデメリットは関係ありませんよね。

その百貨店で買うものが決まっているのだから、満期金は現金でなくても関係ないし、もともと欲しかったものだから、ムダ遣いでもありませんので。

なので、「百貨店で、お目当てのモノがある」という人は、デパート積立は、絶対に利用すべきでしょう。私自身も、この冬に向けて欲しいコートがありまして、それ目当てに、頑張って積立をしております。