加入歴があれば1カ月の勤めでも一生もらえる
過去に会社勤めをした経験があれば、もしかしたらもらい忘れている年金があるかもしれません。
それは、「企業年金」です。
企業年金というのは、企業が独自に公的年金に上乗せしている年金なので、会社によってあるところとないところがありますが、大きな会社ならほとんどのところにこの制度があるのではないでしょうか。
公的年金は、10年以上加入していないともらえません。
会社員だと、65歳からの年金をもらう前に「特別支給の老齢厚生年金」がもらえる人がいますが、これは、公的年金に10年以上加入し、さらに会社に1年以上勤めて厚生年金に加入していなくてはもらえません。
ところが、「企業年金」は、勤めていた会社に企業年金の制度があって在籍中にこれに加入していたら、たとえ1カ月の加入だったとしても、一生涯年金をもらえる可能性があるのです。
ところが、それを知らなかったり、忘れていたりしてもらっていない人がとても多く、なんと「企業年金」が未請求のままになっている人が、2024年3月末時点で110万人を超えています。
名前や住所が変わったり、本人が忘れているケースも
なぜ、これほどまでに企業年金のもらい忘れが多いのかと言えば、さまざまなケースが考えられます。
たとえば、A子さんの場合、短大卒業後に大手商社に3年ほどお勤めをしていましたが、そこで良いお相手に巡り合い、結婚しました。結婚後は専業主婦として子育てに忙しく、会社に勤めていたことすら忘れていました。
本来ならば3年間勤めていて「企業年金」にも加入していたのですから、原則65歳から「企業年金」をもらうことができますし、それを知らせる通知も受け取れるはずです。
ところが、A子さんのところには、その通知が届きませんでした。なぜなら、結婚したことで苗字が変わり、さらに結婚と同時に新居に移り、さらにマンションを買って引っ越したので、年金のお知らせの送付先がわからなくなってしまったのです。
しかも、何十年も前に勤めた会社ですから、本人も「企業年金」に入っていたかどうかも覚えていない。それ以前に、自分の会社に「企業年金」があったことさえ知らなかったのですから、これでは自分から請求できるはずはありません。
実は、こうした人は、意外に多いようです。
会社が倒産していても「企業年金」はもらえる
人によっては、退職時に厚生年金の「加算年金」を一時金で受け取っているので、それで終わりと思っている人もいるようです。
また、自分が勤めていた会社が倒産してしまったので、「企業年金」のことは知っていても、もらえないだろうと諦めてしまっている人もいるようです。
けれど「企業年金」は、会社が倒産していたり、加入していた厚生年金基金が解散したりした場合でも、積み立てた年金は企業年金連合会に移管されているので、そこから年金をもらうことができます。
また、「厚生年金基金」の加入員証を紛失してしまったのでもらえないと思っている人もいるようです。
ただ、加入員証の代わりに国の「年金手帳」や「基礎年金番号通知書」、または「年金証書」があれば受給手続きは可能です。
まだ年金をもらう年齢ではないけれど、この記事を読んで、自分が該当すると思った人は、企業年金連合会に連絡してみましょう。そこで、住所・氏名の変更手続きをしておけば、年金がもらえる年齢になったら手元に通知が届きます。
心当たりがあるなら、まずは問い合わせてみよう
「企業年金」がもらえるかどうか調べる方法としては、勤めていた頃の給与明細が手元にあれば、そこから調べることができます。そこに「厚生年金基金掛金・保険料」という欄があって保険料を引かれていたら、加入していたという証拠になります。
また、会社によっては「就業規則」や「福利厚生」、または退職金規定などに厚生年金基金に加入していたかどうかを書いてあるところもあります。
さらに、毎年、誕生日になると届く「ねんきん定期便」でも、加入していたかどうかはわかります。「これまでの加入履歴」に厚生年金基金の加入期間が書いてあれば、請求すれば年金をもらえるということです。
こうした書類が手元になくても「若い頃に大きな会社に勤めていた」ということしか覚えていないという人は、企業年金連合会が作成したフローチャートを辿ってみてください。
このフローチャートがすべて「はい」となれば、あなたは企業年金をもらえる対象者であり、もしくは、もらえるはずの企業年金をもらっていない可能性があります。
だとしたら、勤めていた会社に問い合わせてみるか、企業年金連合会のホームページにアクセスして、自分の記録がないか調べてみましょう。
問い合わせの際には、氏名、生年月日、住所、年金手帳の基礎年金番号、厚生年金基金の名称及び加入員番号などが必要ですが、詳しくは企業年金コールセンターに尋ねてみてください。
年金は、じっと待っていてもらえるものではありません。自らとことん調べて、該当するならば自分で申請する必要があります。「会社が教えてくれる」「知らなかった」「忘れていた」ではもったいない。とことんもらうには行動あるのみです。