値上げに円安で家計はダブルの衝撃を受けている。賃上げの恩恵はあまり実感できない中、なんとかピンチを切り抜ける節約と工夫のいい方法はないか。6人の育ち盛りの子どもを持つFPの橋本絵美さんは「効率よく節約をするには電気使用量の多いものから削減していくと効果的だ。家電の電気使用量ランキングを参考にするといい」という――。
電気料金の値上げに赤ペンで強調
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです

年間3万円負担増! 電気代・ガス代値上げのワケ

食料品、日用品などの値上げが続いていますが、4月からのこの3カ月で電気代、ガス代が値上がりしているのをご存じですか? これから本格的な夏に向けてエアコンなど電気を使う機会も増えそうです。生活する上で欠かせない電気とガスの値上げは家計にとって大きなダメージ。何とか削減したいものです。大家族FPが実践する電気代・ガス代の節約術をご紹介します。

今回の電気代・ガス代の値上げの理由はいったい何なのでしょうか。元々、世界情勢の悪化や円安に伴った燃料代の高騰による電気代・ガス代の値上げが起こっていたのですが、それに対して政府が補助金を出し、電気代・ガス代の割引をしてくれていました。補助金が出ていたこと自体知らなかった! という人も多いのですが、この補助金が5月使用分から半額になり、6月使用分からはなくなるため、電気代、ガス代が値上がりすることになります。

わが家のケースを見てみますと、政府の支援により、ガス代は使用量×15円の値引きで600円の値引き、電気代は使用量×3.5円の値引きで1281円の値引きとなっていたことがわかります。

電気料金とガス料金請求書に、それぞれ政府の支援で値引きされていることが明記されている。電気は「使用料×3.5円」、ガスは「使用料×15円」。
電気料金とガス料金請求書に、それぞれ政府の支援で値引きされていることが明記されている。電気は「使用料×3.5円」、ガスは「使用料×15円」。

実際には電気・ガスの使用量は月によって変動しますが、仮に一定だとすると、5月からは値引きが半分になるため、940円の値上がり、6月からは1881円の値上がりとなります。年間では約2万2000円電気代・ガス代がUPすることになります。

値上げのもう一つの理由「再生可能エネルギー発電促進賦課金」とは

また、電気代に関しては再生可能エネルギー発電促進賦課金が1kWhあたり1.40円から3.49円へ値上げされることから、さらに値上がりすることになります。

再生可能エネルギー発電促進賦課金とはいったい何なのでしょうか?

実は、太陽光発電等で作られた電気は電気事業者が買い取ることが義務付けられています。そして、この買い取り費用は電気料金に上乗せで徴収されることになっています。これが再生可能エネルギー発電促進賦課金です。再生可能エネルギーの買取価格は毎年度見直しが行われ、経済産業大臣が決定します。この買取価格が今回値上げされたため、さらに電気代が上がることになってしまいました。わが家の場合は月765円の値上げということになります。補助金終了による値上げ分と合わせると月2646円の値上げとなり、年間約3万2000円の負担増となります。

実践! 電気代・ガス代節約術

脱炭素社会を推進する流れを考えると今後も値上げは続くことでしょう。世界情勢や円安の影響による値上げもありえると思います。ですが、電気やガスは生活に欠かせないものです。大家族のわが家では、家電は必需品で、電気を使わない生活はできません。また、人数が多いのでお湯を沸かすためのガス代も一般家庭よりも多くかかります。そこで行っているのは無駄な電気、ガスを使わない工夫です。必要な電気・ガスは使いますが、無駄な使い方をしないことで、節約をしています。

効率よく節約をするには電気使用量の多いものから削減していくと効果的です。家電の電気使用量ランキング上位から一つずつ誰でもできる簡単節約術をご紹介します。東京都における家庭部門のエネルギー消費量の用途別割合によると電気使用量ランキングの1位は冷蔵庫、2位は照明器具、3位はテレビ、4位はエアコンとなっています。

冷蔵庫
放熱効率を上げることで、電気代を下げることができる。壁から離して設置することで、放熱効率を上げることができる。
放熱効率を上げることで、電気代を下げることができる。壁から離して設置することで、放熱効率を上げることができる(筆者撮影)

わが家の冷蔵庫は側面を触ると熱を持っているので、側面から放熱していることがわかります。放熱効率を上げるために冷蔵庫は壁から離して設置しています。放熱効率を上げることで電気代を下げることができます。省エネルギーセンターによると年間45.08kWh削減でき、約1350円の節約になります。(1kWhあたり30円00銭の場合)冷蔵庫によって上部、背部、側面から放熱しているので、お手持ちの冷蔵庫の放熱場所を確認して、放熱効率が上がるように設置しましょう。

冷蔵庫の開け閉め回数を減らす、開ける時間を短くする、詰め込みすぎない、なども効果的ですが、自分の癖を変えるのは大変ですし、ストレスが溜まります。設置の工夫だけなら簡単だと思うのでやってみてください。

高いけれど1年で元が取れるLED

照明器具

わが家ではほぼ全ての電気をLEDに変えました。昔に比べるとお手頃価格でそろえることができるようになりました。初期費用はかかりますが、消費電力は3分の1になり、寿命も3倍程度長いので、1年程度で元が取れます。消し忘れが気になる場所は、人感センサー付きのLEDライトにするのもおすすめです。可能ならば使っていない電気をこまめに消していただきたいですが、照明を変えるだけでも電気代を削減することができます。

LEDライトは、初期費用はかかるが、すぐにもとが取れる
筆者撮影
LEDライトは、初期費用はかかるが、すぐに元が取れる
テレビ

テレビの明るさは少し落として設定するとよいでしょう。こちらも同じ時間視聴していても設定を変更するだけで消費電力を削減することができます。また、ほこりがついていると暗くなってしまうので、すぐに掃除ができるように、はたきをそばにおくことをおすすめします。

テレビの画面の明るさを少し落として節電。ほこりがつくと画面が暗くなるので、はたきをそばに置いておく。
筆者撮影
テレビの画面の明るさを少し落として節電。ほこりがつくと画面が暗くなるので、はたきをそばに置いておく。
エアコン

これから暑くなり、エアコンは必須になってくると思います。わが家ではエアコンの使用は夏だけなのですが、エアコンを使う期間中は2週間に1度掃除をします。前面を開け、フィルターを掃除機で吸い込み、水洗いし、よく乾かして戻します。面倒な気がしますが、そんなに難しくありません。よく乾かしてから設置しないと故障の原因になるので注意してください。

エアコンを使う期間中は、2週間に一度掃除をする。室外機の周りにはモノを置かないようにする
筆者撮影
エアコンを使う期間中は、2週間に一度掃除をする。室外機の周りにはモノを置かないようにする

また、室外機の周りにはモノを置かないようにしています。室外機は室内の熱い空気を室外に排出しています。空気の通り道をふさがないようにすることが大事です。

わが家では、日中仕事などで家を空けるときはカーテンは閉めたままにしてでかけるようにしています。日中の日の高い時間にカーテンを閉めておくことで、室内の温度の上昇を抑えることができます。

ガス代

ガス代に関してはわが家ではお風呂の入り方を工夫しています。全員一度に入ることはできませんが、なるべく間隔を空けずに入ることで、追い炊きやシャワーの水を再度温めなおす必要がなくなり、無駄なガス代をかけずにすみます。

電力会社・ガス会社を変更して、光熱費を削減しよう!

電気代、ガス代の節約のために絶対にやっていただきたいのが、電力会社、ガス会社の契約見直しです。わが家では毎年のように電力会社、ガス会社の変更をしています。

以前は地域の電力会社やガス会社しか選ぶことができませんでしたが、2016年から電力自由化が、2017年からガス自由化が始まり、さまざまな事業者が電気やガスを販売できるようになりました。

生活に不可欠な電気やガスなので、契約を変えたことで電気やガスの質が悪くなったり、供給が不安定になったりすると困りますよね。ですが、安心してください。電気やガスを作り、自宅まで供給するのは今まで通りの地域の電力会社、ガス会社です。契約する会社によって電気やガスの質や供給のしくみが変わるわけではありません。

ポテトチップスで考えてみるとイメージがつかみやすいかもしれません。例えばポテトチップスを作っているのはカルビーや湖池屋などのメーカーですが、カルビー本社に買いに行かなくても、コンビニでも買えるし、スーパーでも買えるし、ドラッグストアでも買えるようになったという感じでしょうか。

同じ品物でも買う店によって値段が違ったり、配送サービスやラッピングサービスなどさまざまなサービスがあるように、電気やガスも、どの事業者で契約するかによって値段が違ったり、サービスが違ったりします。

例えば、通信会社で電気の契約をするとスマホ代とセットで割引があったり、ガソリンスタンドで電気の契約をするとガソリン代が割引になったりします。ご自身の生活に合わせてトータルで安くなる会社で契約するのがおすすめです。

「価格.com」では、電気料金を比較して、電力会社の人気ランキングを紹介している。
価格.com」では、電気料金を比較して、電力会社の人気ランキングを紹介している。

本当にさまざまな事業者が電気やガスを販売していて、どこで契約したらいいのかわからない、知らない名前のところで契約するのは怖いと思われるかもしれませんね。ですが、電力会社は経済産業省の審査を経て事業を行っていますので、安くてお得な電力会社を選択していただいて大丈夫です。

ただ、実際に私も経験したのですが、契約した電気の事業者が倒産してしまったことがありました。突然1カ月後までに新しい事業者に契約変更してくださいという連絡がきたときには正直驚きました。このようなことが起きたときでも冷静に次の事業者に契約を変更すれば滞りなく電気やガスを使い続けることができます。万が一新しい事業者への契約変更がスムーズにできなかった場合であっても、急に電気やガスが使えなくなるということはありません。しばらくの間は地域の電力会社・ガス会社から引き続き供給が行われるので安心してください。ただし、そのまま契約変更の手続きをせずに使い続けると、いずれは供給停止となります。契約変更は速やかに行いましょう。

3ステップで簡単契約変更

では、具体的に事業者を変更する方法をお伝えします。

STEP 1 検針票や明細表を準備する

まずは今自分がどれくらい電気やガスを使っているか、使用状況と契約状況を確認します。検針票や明細を準備しましょう。

STEP 2 料金シミュレーションをする

次に新しい事業者に変更した場合の料金のシミュレーションをします。数社一度にシミュレーションできるサイトがあります。検針票や明細表をもとに現状の使用量を入力すると新しい電力会社、ガス会社に変更した場合の料金がいくらになるかがわかります。

STEP 3 新しい事業者で契約をする

希望のプランが見つかったら新しい事業者で契約手続きをします。新しい事業者で契約すると、元々契約していた電力会社・ガス会社は自動的に解約となります。新しい事業者からの切り替え完了の連絡をお待ちください。

※解約に当たって、違約金、解約金が発生する可能性があります。変更前の事業者の解約条件について、事前にご確認ください。

まとめ

いかがでしたか? 電気代ガス代がこれから大きく値上がりします。暑い夏、電気の使用が増える季節になる前に、各家庭での「しくみ」を変えて、電気代、ガス代を削減しましょう。わが家も今回再度契約の見直しをすることにしました。契約変更をすることでキャッシュバックなどのキャンペーンが受けられることがあります。また、前年よりも節電できた場合にキャッシュバックやポイントがもらえるといった節電キャンペーンなども各社行っています。先に説明した節約術を試していただくと同じ使い方をしていても消費電力量は減らせるはずです! 今回の値上げはかなりインパクトがあります。節約術をみなさんぜひ試してみてくださいね。