物価上昇で家計は厳しくなる一方。こんなときはどうすればいいのか。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「物価高のいまこそ効果が期待できる貯蓄法がある。私はこの方法で5kgのダイエットと100万円の貯蓄を実現している」という――。
コワーキングスペースと自転車
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物価高を逆手に取れる貯蓄法

今、物価高に苦しむ家計は多いと思います。

物価高でも収入がそこまで上がるわけでもなく、支出を減らそうにも、それもなかなか難しいもの。

そんな今こそ、注目したいのが「つもり貯金」です。

つもり貯金とは、その名の通り、「外食に行ったつもり」「服を買ったつもり」など、「○○したつもり」になって、その分のお金を節約する方法です。

今は物価高ゆえに、自ずと、その節約できる金額も高くなります。

すなわち、この物価高の中でこそ、より効果を発揮する節約方法ともいえるでしょう。

つもり貯金は、昔からある定番の節約方法なのですが、意外と実践している人(とくに長続きしている人)は少ないものです。

今回は、そんな「つもり貯金」のポイントについて書きたいと思います。

つもり貯金に必要な力とは

つもり貯金には、特別な知識や経験、テクニックは必要ありません。

必要なのは、お金を使いたい誘惑を、「○○したつもりで」で我慢する忍耐力と、「もし○○したら、××円かかるだろう」という想像力です。

と、簡単に言いましたが、我慢することはなかなか難しいものです。

というのは、世の中は、とにかく「お金を使わせよう」と、あの手この手で物欲を刺激してくるからです。

実際、世の中には「今を楽しもう」「二度とは来ない、今を」といったキャッチーなフレーズで溢れています。また、「消費とは経済を回すこと」など言われると、お金を貯めこむことは悪いことのように思えてもきます。

そして、そんな甘言に乗っかって、こちらも「自分へのご褒美」「運命の出会いだ」などの理由をつけて、ついついお金を使ってしまうものなのです(心当たりある人は多いと思います)。

想像力が、より重要

そこで、重要となってくるのが、前述の想像力です。

たとえば、仕事終わりに、ちょっと飲んで帰りたいと思ったとしましょう。

お店の前には、美味しそうなビールの写真など、誘惑がいっぱいです。

これを、ただ「飲んで帰ったつもり」で我慢するのは、しんどいですよね。

そこで、実際にちょっと飲んで帰るとしたら、どのお店に行って、何を注文するつもりなのかを、しっかり想像するのです。

たとえば、「駅前の居酒屋で、ビール2杯と、焼き鳥4本」だとしましょう。

それがしっかり想像できれば、そのために必要な金額が明確になります。

この場合、その金額が2000円だとすれば、「飲んで帰ったつもり」で我慢できれば、これは2000円稼いだのと同じです。

このように、節約できる金額をハッキリさせれば、モチベーションも上がり、「○○したつもり」で我慢できるラインも上がることでしょう。

もし、旅行に行きたいのを我慢するのであれば、ただ「旅行に行ったつもり」で我慢するのではなく、「箱根に一泊旅行に行ったつもり」と、具体的に設定することが重要です。

その際には、想像力を働かせて、その旅行内容をできるだけ明確にしましょう。

そうすれば、交通費やホテル代、現地でのレジャー費やお土産代など、そのための予算(節約できる金額)も明確になり、「つもり貯金」のモチベーションアップとなります。

硬貨を入れられる豚の貯金箱と、その横に階段状に積み上げられた硬貨
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記録することで継続できる

そして、つもり貯金で節約できた金額は、しっかりと記録しておくことが大切です。

それがたとえ、「コンビニで、ペットボトルを買ったつもり」で節約できた120円であっても、その都度、しっかり記録しましょう。

慣れないうちは面倒かもしれませんが、その場でサッと、スマホ入力なら負担も少ないはずです。

実際、「つもり貯金」の大半は、「コンビニの買物」「仕事帰りの飲み」など、その節約金額は少額なのですから。

しかし、そんな少額の「つもり」も「積もれば」、大きな金額となります。

たとえば、最近の1週間の私の「つもり貯金」は、以下のとおり。

最近1週間のつもり貯金
筆者作成

私は甘いモノ好きでして、外出時にはかなりの確率で、コンビニでスイーツを買って、オヤツに食べてしまいます。最近はコンビニスイーツも高級路線化しており、また、一緒に飲み物も買うので、1回で500円程度の出費となります。

なので、これを週2回程度は我慢するように心がけています。

また、外食も多く、そして、そこそこ良いモノを食べるようにしています。

しかし、そのすべてが必要不可欠な外食というわけではありません。

そこで、「少し遅めに出て、家で昼ごはんを食べる」「少し早めに帰って、家で晩ごはんを食べる」ことを、それぞれ週1回くらい心がけています。

それによって、1週間で平均4000~5000円程度のつもり貯金が可能ですし、実際、その程度のつもり貯金を実践しております。

「コンビニスイーツ」と「外食」で100万円のつもり貯金

そして、それをしっかり記録しておくことで、つもり貯金の効果が、ハッキリと目に見える形となるわけです。

ハッキリと目に見えれば、モチベーションも高まり、自ずと続けることができます。

そして、続けることで、その効果(節約金額の累計額)はますます大きくなり、その金額を見て、さらに続けることができるわけです。

私の場合、1カ月で2万円程度、1年間で20万円以上の節約金額となります。

それをもう5年程度は続けているので、この「コンビニスイーツ」「外食」のつもり貯金だけで、累計100万円程度。

ちなみにその金額は、暗号資産やFXなど、ハイリスクな投資に回しています。もともとはなかったお金なので、思い切った使い方ができるのです。

なお、この「記録する」ことこそ、「続ける」ことの秘策であることは、つもり貯金に限ったものではありません。

何事も続けることが大切ですが、ダイエットにせよ、トレーニングにせよ、続かないものですよね。

そんな「続かない」で悩んでいる人には、「記録すること」を強くお勧めします。

つもり貯金のおかげで体重がマイナス5kg

さて、私は長年、この「つもり貯金」を実践していて慣れていることもあり、最近では、プラスアルファの要素として、「健康増進」も意識しています。

具体的には、できるだけ「電車に乗ったつもり」「車に乗ったつもり」を心がけ、極力、電車や車を使わずに、歩きや自転車で移動するようにしています。

これは交通費を浮かせるよくある節約法ですが、立派な「つもり貯金」でもあるのです。

そして、電車や車のかわりに、歩いたり自転車に乗ったりするわけですから、(体を動かすこととなり)自ずと健康増進にもつながるわけです。

私はこの「電車(車)に乗ったつもり貯金」を意識するようになり、体重は5kg減りました。

また、あと少し食べられるかな……というようなときは、「食べたつもり」を心がけ、極力、食べる量を減らすようにしています。たとえば回転寿司では、「あと2皿、マグロとサーモンを食べたつもり」などとグッと我慢して、腹7~8分目を意識しています。

腹一杯食べるより、食べる量はちょっと少な目に抑えた方が、健康には良いとされています。

このあたりは諸説あるかもしれませんが、少なくとも私は、この「食べたつもり貯金」で食べる量を減らすようにしてからは、明らかに体調は良くなっています。

ちなみにお酒をよく飲む人なら、「飲んだつもり貯金」は、健康増進に直結することでしょう。

もちろん、そんな健康増進効果も、続けることによって得られるということは、言うまでもありません。

つもり貯金の落とし穴とは?

さて、そんな効用抜群の「つもり貯金」ですが、落とし穴もあるので要注意です。

その落とし穴とは、「やり過ぎてしまう」こと。

つもり貯金の効果は絶大で、その節約金額は(記録することで)ハッキリと目に見えるだけに、ついつい、必要以上にやり過ぎてしまうという中毒性があるのです。

ただ、いつも「○○したつもり」になって、なんでも我慢するのでは、つまらない人生になりかねません。

また、我慢をしすぎて、心身に不調をきたす危険性もあるので気を付けたいところです。

ちなみに私も、前述の「電車(車)に乗ったつもり貯金」をやり過ぎて、仕事・プライベート問わず、どこへでも自転車で行っていた時期がありました。ちょうど電車賃の値上げ・ガソリン代の高騰が重なった時期でもあり、その節約できる金額の大きさに目を奪われてのことでした。

1日100km近く移動する日も珍しくなく、これにはさすがに体調を崩し、そして膝を壊し、しばらく動けない日が続くことになりました。

これには大いに反省し、今では、無理のない範囲で、自転車移動を楽しむようにしています。

ポイントはゲーム感覚で楽しむこと

あと、これは私ではありませんが、「つもり貯金で200万円貯めて、車を買う」との目標を設定した知人がいました。

しかし、その目標達成のために「つもり貯金」に励み過ぎて、あらゆることを我慢し、日常生活に支障をきたすようになってしまったのでした。

目標を設定することは悪いことではありませんが、あまりにも目標に囚われてしまうと、「つもり貯金」がノルマとなってしまい、日々の生活がギスギスしてしまいます。当然、それでは長続きするはずがありませんよね。

ですので、目標ありきのつもり貯金は、(よほどの理由がない限り)あまりお勧めはできません。

目標(金額)を設定するにしても、それは「半年間で節約できたお金で、旅行に行こう」「1年間で節約できた金額は、投資に回そう」など、決して目標(金額)ありきにならないよう、ゆるいものにとどめておくことをお勧めします。

つもり貯金では、「気が付けば、こんなに節約できていた」が理想であり、つもり貯金そのものを、ゲーム感覚で楽しむことが理想なのです。