今年もブラックフライデーがやってくる。つい買いすぎて後悔しないためにはどうすればいいのか。ファイナンシャルプランナーの藤川太さんは「資産1億円を貯めるような人には『ブラックフライデー』を楽しみにしている人はほとんどいない。普段から必要なものをリスト化しておき、価格を比較して安ければ購入するだけ。衝動買いをしないためにはこの方法を利用するのは手かもしれない」という――。
最大70%オフのセールを知らせるショーウインドー
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お金持ちは「ブラックフライデー」をどう使っているか

米国の感謝祭(11月の第4木曜日)の翌日の金曜日に行われる大規模なバーゲンセール「ブラックフライデー」。近年は日本でもセールが行われるようになり、「年に一度のチャンス」と期待している人も多いでしょう。

しかし、資産1億円をためるようなお金持ちの中には「ブラックフライデー」を楽しみにしている人はほとんどいません。

そもそもバーゲンセールはなぜ実施されるのでしょうか。値引きをして販売すれば企業の利益は減ってしまいます。にもかかわらず、大幅な値引きまでして注目を引こうとするのは、本当に必要なモノ以外にも衝動買いしてくれることを期待しているからです。商品をチェックしているうちに「気づいたらこんなに買ってしまった」と後悔した経験のある人も多いのではないでしょうか。

オーダーメイドのビジネスウエアを手掛けるFABRIC TOKYOが昨年の「ブラックフライデー」直前に調査をしたところ、「ブラックフライデーで購入したものの、その後、ほとんど使っていない/使わなくなったものがある」と答えた人は67.3%に上りました。

さらに、どんな商品を使わなくなったのか聞いたところ1位は「衣類」の58%、2位は家電製品50.1%、3位は靴38.1%と続きました。

「衝動買い」で失敗する人が半数以上

使わなくなってしまった理由はさまざまですが、あまり商品を吟味せずに勢いで買ってしまった人も多いようです。実際に「衣類」では50.9%の人が「衝動買いだったから」と答えています。

私が知っているお金持ちには、衝動買いをする人はほとんどいません。必要のないものを買って、損をするのがいやだからです。とはいえ、バーゲンセールを利用しないわけではありません。

ブラックフライデーに限らず、バーゲンセールをむしろ積極的にチェックしています。他のネットショップと比較し、必要なものが安ければ購入します。

お金持ちは「安く買うこと」が好きです。雑談をしているときに「この商品がこんな値段で買えたんだよ」と、うれしそうに話す姿をよく見かけます。

たとえば、アマゾンを利用している人なら、日常的に使うモノや定期的に購入するモノを「ほしい物リスト」に登録しておきます。セールが実施されるときには、リストにある商品の価格を確認し、普段より安くなっていればまとめ買いします。「価格.com」で価格を比較する人も少なくありません。

必要なものはセールでまとめ買いする

私自身も1年に1~2回、バーゲンセールの時期にテニスシューズを買います。定期的にテニスをしていると、シューズはすぐに駄目になってしまうので、常に価格をチェックしているのです。

ブラックフライデーなどのバーゲンセールの際には、価格が大幅に安くなることもあります。しかし、欲しいサイズの在庫はすでになくなっていることも多いので、希望の商品を見つけたときにはすぐに買います。

ブラックフライデーなどは、店舗とネットの両方で開催されますが、お金持ちはネットショップを積極的に利用しています。簡単に価格が比較できますし、買い物の時間を節約できるからです。

バーゲンセールが好きな人の中には「店舗の熱気が好き」という人もいるでしょうが、それも衝動買いの原因になっているのではないでしょうか。お金持ちは合理的に考える人が多いので、「時間をかけずに」「安く買う」ことが最大の喜びなのです。

もちろん、楽しみのひとつとしてデパートに出かけてウインドーウショッピングすることはあります。しかし、必要な物を買うために時間をかけて出かけていくことは少なくなっているようです。

ネットショップのデメリットを克服する方法とは

ネットショップは検索するだけで必要なものが見つかりますし、翌日に届くこともありますから、最も合理的な買い物の手段です。ただ、デメリットもあります。初めて購入する商品の場合、良しあしの判断が難しいことです。手に取ってみることができないので、素材感や品質などを判断しにくい面があります。ただ、最近は試着して気に入れば購入し、気に入らなければ返品できるネットショップも増えたので、こうしたデメリットもなくなっていくかもしれません。

ネットショップではすでに購入した人のレビューが参考になります。ただ、最近は企業からの依頼を受けて高評価のレビューを書く人もいて、信用できるかどうかの判断が難しい面もあります。

また、いわゆるまがい物も多くなっています。私の感触では3分の1程度はまがい物が紛れ込んでいるのではないかと思います。そうした商品の中にはレビューの評価が高いものもあって、それを信じて買ってしまうと、粗悪品が届くこともあります。

そこでレビューをチェックするサイトを利用するお金持ちもいました。たとえば、サクラチェッカーはアマゾンのレビューの本物度を確認できるサイトです。商品名や商品ページのURLを入力すると、レビューのサクラ度が何%かが表示されます。アマゾンで買い物をする際には、私もよく利用しています。すべてを信じるわけにはいきませんが、判定の信頼性は高いように思います。

こうしたサービスを活用することで、ネットショッピング特有の失敗リスクをかなり低くすることができます。

アウトレット好きなお金持ちは多い

一方でアウトレットに出かけるお金持ちも少なくありません。基本的にはネットショップで買い物をするのが合理的だと考えているのですが、お金持ちであっても完璧な人間ではありません。買い物は「楽しい」ことを知っています。

ただし、「損はしたくない」という気持ちも強くあるので、アウトレットを好むのです。アウトレットには通常よりも割安な価格で販売されている商品がそろっています。罪悪感を覚えずに買い物ができるのです。

アウトレット上級者のお金持ちには、バーゲンラインの商品と本当に値引きされている商品の違いを見分けることができる人もいました。いつもながら本当に価値のある商品を割安に購入するための情熱に驚かされます。

首都圏に住んでいるお金持ちからよく聞くアウトレットは、「軽井沢」「木更津」「御殿場」の3カ所です。軽井沢はリゾート地なので、旅行を兼ねて出かけることができます。「木更津」や「御殿場」は、日帰りでも十分に出かけられる距離なので、時間ができたときに気軽に出かけられます。

アウトレットモールを行きかう人々
写真=iStock.com/Shuttermon
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私自身もアウトレットに出かけた時には、アディダスやナイキに立ち寄ってスポーツウェアなどを買ったりします。アウトレットであれば、現物を確認して購入の判断ができるのでネットショップにはないメリットがあります。購入する商品によってネットショップとリアル店舗を使い分けているお金持ちが多いようです。

「心の三毒」を意識して支出を減らす

お金持ちは自分の欲望をコントロールできたからこそ、資産を築くことができたともいえますが、マネをしようと思っても難しいものです。私のところへは数多くの人が家計相談に来ます。

時間と相談料を使って来るわけですから、貯蓄に対する意識は相当に高い人たちです。それでも3割近くの人は実行できていません。

なぜでしょうか。仏教では貪・瞋・痴とん・じん・ちと呼ばれる「心の三毒」が自分の行動にブレーキをかけてしまうといわれています。「貪」は欲望です。「あれも欲しい」「これも欲しい」と思ってしまう人が多く、衝動買いにもつながってしまいます。クレジットカードはその欲望を解放するために役立っています。「瞋」は人のせいにすること、「痴」は知ったかぶりや思い込みが強く、専門家のアドバイスなどに耳を貸さないことです。

お金を増やす基本は「収入を増やし、支出を減らす」ことです。お金持ちが実践しているように、ブラックフライデーの前に必要な物をリストアップしておき、価格が安ければ買う。衝動買いをしないための準備をしておいてはどうでしょうか。