いくら寄附するのが妥当なのか?
2023年10月にふるさと納税のルールの変更がありました。世間の認知度も上がっているふるさと納税ですが、まだ利用したことがないという人も多いようです。
その大きな理由は制度のしくみや利用方法がいまいちよくわからないということ。今年初めてやってみました! という人の中には何となくとりあえず1万円やってみましたと、根拠なく寄附金額を決めている人もいるようです。
ふるさと納税はそもそも何のためにできた制度なのか? 誰にどのようなメリットがあるのか? どのように手続きをしたらいいのか? いくら寄附するのが妥当なのか? など、いまさら聞けないふるさと納税の目的やしくみ、利用方法について解説します。
そもそもふるさと納税はいつから始まったのか。
ふるさと納税は2008年にスタートした制度です。都市部と地方の税収の格差を是正しようという目的のもと、地方自治体への寄附を寄附金控除の対象とする「ふるさと納税」が始まりました。寄附した金額のうち2000円は自己負担となりますが、各自の上限額までの全額が控除の対象となります。そして、寄附をした自治体からお礼の品がもらえます。
例えば、みかんで有名な有田市に寄附をすると返礼品として有田みかんがいただけます。地域の特産品やその土地で作られたものが返礼品となります。わが家では買うと高いフルーツや焼き肉、鰻、夏には切らせたくないビールなどをふるさと納税の返礼品としていただいています。
寄附したお金が控除されるにもかかわらずお礼の品がもらえるということでふるさと納税は人気の制度となりました。
人気に火がついたのは2015年(H27年)のワンストップ特例制度の開始がきっかけかと思います。ふるさと納税をして寄附金控除を受けるには確定申告が必要ですが、この年から確定申告をしなくてもワンストップ特例制度の申請書類を提出すれば、寄附金控除が受けられるようになりました。
なぜルールが厳格化されたのか
今回ルールが厳格化されましたが、ルールの厳格化は今回が初めてではありません。ふるさと納税が人気の理由は何と言っても寄附をするとお礼の品がもらえるという点にあります。寄附を集めたい自治体が換金性の高い商品券などを返礼品にしたり、寄附金額に対して高い還元率で返礼品を送るようになり、返礼品競争が加速してしまいました。
そのため、2019年に返礼品のルールが厳格化され、ルールに従わなかった自治体は寄附金控除の対象の自治体から除外されることになりました。
しかし、やはり返礼品競争は続いており、今回さらにルールが厳格化され、下記の2点が追加されました。今後もルールの厳格化は随時行われていくのではないかと思います。
〈2019年に厳格化したルール〉
・返礼品は寄附金額の3割以内の価格とする
・返礼品は地場産のものとする
・返礼品は換金性の高いものにしない
〈今回厳格化したルール〉
・返礼品は寄附金額の3割以内の価格かつその他必要経費を含め寄附金額の5割以内とする。
・加工品のうち熟成肉と精米について原材料が当該地方自治体と同一の都道府県内産に限る。
自己負担2000円って、どういうこと?
ふるさと納税は自治体への寄附に対する寄付金控除なので、寄附自体はいくらでも可能ですが、自己負担が2000円で済むのには上限額があります。上限額は年収や扶養人数、その他の控除を受けているかどうかによって異なります。自分の上限額がいくらなのかを知りたいときはふるさと納税ポータルサイトでシミュレーションすることができます。
上限額のシミュレーションに必要な情報は源泉徴収票に書いてあります。上限額は寄附をした年の収入等によって決まります。毎年収入が一定の場合には前年の源泉徴収票を基にシミュレーションをしても大丈夫ですが、年によって収入に増減がある場合には注意が必要です。前年よりも収入が少ない場合は上限額も下がることになります。
また、収入は同じでも扶養人数やその他の控除によって上限額が変わるため、同僚と同じ年収だからといって上限額が同じとは限りません。
扶養家族が多い人、生命保険料控除がある人、iDeCoを行っている人、住宅ローン控除がある人は控除が増えるために上限額が下がります。また、年末調整後に医療費控除の申請のために確定申告をする予定のある人は源泉徴収票の内容だけでは正しく計算されませんので医療費控除の金額も入れ忘れないように注意してください。
控除を入れ忘れると上限額が多く見積もられ、それ通りに寄附をすると、自己負担が2000円で済まなかった! 寄附をしすぎた! ということになります。
また、扶養人数については15歳以下の子どもを含めないように注意しましょう。15歳以下の子どもに対する控除はありません。子どもを扶養としてカウントしてしまうと控除額が実際より多くなってしまい、ふるさと納税の上限額が少なく見積もられてしまいます。もっと多く寄附しても上限額にならなかったのに! ということになります。
シミュレーションができるサイトはたくさんあり、サイトによって上限額が違って出てくる場合もあります。これは上記の控除が正確に反映されているかどうかによるものです。数値を詳細に入力して計算したものが正確なので、細かく入力できるシミュレーションがおすすめです。
上限額より少なかったり、多く寄附をした場合はどうなるか
もしも上限額を超えて寄附をした場合であっても返礼品はいただけますが、超えた分については控除されないので、自己負担額が増えることになります。
扶養の範囲内でパートをしている主婦の方やアルバイトをしている大学生も寄附をするとお礼の品はいただけますが、そもそも税金を払っていないので寄附金控除を受けることができません。お住まいの自治体にふるさと納税をした場合には寄附金控除を受けることはできますが、お礼の品はいただけません。
一度寄附をするとキャンセルはできませんのでご注意ください。
逆に上限額よりも少ない寄附をした場合は、2000円の自己負担だけで済みますが、上限額までの寄附であれば自己負担は2000円のままお礼の品がたくさんもらえます。
自己負担の2000円については寄付のたびに2000円が自己負担になるのではなく、1年間の合計額に対して自己負担2000円です。時々寄附の都度2000円の負担になると勘違いされている人もいますが、そうではありません。
ふるさと納税の手続きは3ステップ
ふるさと納税の手続きの手順は3ステップです。
2.ふるさと納税をする(お礼の品を選び、支払いをする)
3.寄附金控除の手続きをする(ワンストップ特例制度または確定申告)
上限額の確認とふるさと納税を行うにはふるさと納税ポータルサイトを利用すると便利です。買い物のようにお礼の品を選び、支払いをすると、支払い金額が寄付金額となります。
一人で行うのが不安な方はふるさと納税ポータルサイトが実店舗を出していたり、携帯ショップなどでふるさと納税をサポートしているところもありますので利用してみてください。
次に必ず寄附金控除を受けるための手続きをしましょう。手続き方法は2種類あります。どちらか該当する方法で必ず手続きをしてください。
・ワンストップ特例制度による手続きが可能な方
確定申告をする必要のない方で寄附先が5団体以内の方はワンストップ特例制度を利用することができます。基本的には寄附をした都度、ワンストップ特例制度の申請書類と本人確認書類を寄附した翌年の1月10日必着で寄附をした自治体に送付します。
昨年からワンストップ申請オンラインサービスが開始されました。サービスを導入している自治体への寄附の場合でマイナンバーカードを持っている人は寄附のたびに書類を送付しなくてもオンラインで一括申請することができます。
・確定申告による手続きが必要な方
2カ所以上から給与をもらっている人や医療費控除や住宅ローン控除などの申告のために確定申告をされる方はワンストップ特例制度を利用することができず、確定申告で寄附金控除の申告をおこなう必要があります。その際に全ての寄附についての寄附金控除証明書をそろえておく必要があります。もしくはふるさと納税ポータルサイトから一括して寄附金控除に関する証明書を発行することもできます。
マイナンバーカードを持っている人はスマホからでも確定申告をすることができます。
確定申告についてよくわからないという人は確定申告の時期になると無料の申告相談会で対面で指導していただくこともできますので活用してみてください。
一番注意していただきたい点は、ワンストップ特例制度の申請書を提出済みであっても6団体以上に寄附をしていた場合やふるさと納税以外の理由で確定申告をした場合には申請書は全て無効となってしまいますので、必ず確定申告で寄附金控除の申告をしましょう。
手続きがちゃんとできているか、確認する方法は?
ふるさと納税が完了すると寄附先の自治体から寄附金受領証明書が発行されます。こちらが発行されていれば寄付がきちんと受領されていることになります。
また、寄附金控除の手続きがきちんと行われているかも各自でしっかり確認するようにしましょう。
・ワンストップ特例制度を利用した場合
ワンストップ特例制度を利用した場合には、全て住民税からの控除になりますので、6月ごろに届く住民税の通知書で確認することができます。
摘要欄に寄附金税額控除の金額が記載されている場合はこの金額がふるさと納税をした金額-2000円となっていれば大丈夫です。記載されていない場合は、「税額」の欄の「市区町村の税額控除額⑤」と「都道府県の税額控除額⑤」の2カ所の合計額がふるさと納税をした金額-(2000円+調整控除額※)となっていれば、寄附金控除の手続きがきちんと行われていたということになります。
※自治体ごとの一律負担の調整控除額がある場合
・確定申告を行った場合
一部は住民税から、一部は所得税から控除されることになりますので、住民税の通知書と確定申告で所得税の還付金額の合計がふるさと納税をした金額-2000円になっているかどうかを確認しましょう。
自治体による手続きミスもゼロではありませんし、自分がうっかり6団体以上に寄附をしていてワンストップ特例制度の申請が無効になっていることもあります。必ず確認するようにしましょう。もし手続きがうまくいっていなかったときは確定申告をやりなおすことで控除を受けることができます。居住地の税務課に問い合わせをしてみてください。
ふるさと納税の歴史やしくみがご理解いただけたでしょうか? そもそも税収を地方に移すという目的のもと作られたのがふるさと納税です。私たち納税者も納税してお礼の品がいただけるのはうれしいですよね。ルールは厳格化していますが、地域の特産品の訳あり品などはお得感もあり、さらに地元の農家を応援しながら納税することもできます。旅行券などをいただけば現地に足を運んで経済効果を生むこともできます。納税者も地方自治体もうれしいふるさと納税が今後も続いていくといいですね。