10月からふるさと納税の制度が変更される。9月末までの“滑り込み”を狙っている人も多いのではないだろうか。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは「9月末に上限額をフルに使ってしまうと、冬のボーナスが減って年収が下がった場合、上限額を超えて寄付をしてしまうことになりかねない。9月の段階では上限の7割にとどめておくことをお勧めする」という――。

10月以降、返礼品のお得度が減る可能性

今年も残すところ、あと3カ月と少しになりました。

「そろそろふるさと納税の申し込みを……」と考えている人は、お急ぎを。9月中に申し込みを行ったほうがお得になるかもしれません。というのも、10月以降に返礼品の内容が変わる可能性があるのです。

詳細は後ほどご説明しますが、2023年10月から返礼品に関するルールが厳格化されます。経費ルールが寄付額の5割以下に制限されたり、「地場産の基準」が変更されることで、返礼品の「お得度」が減ってしまう可能性があるのです。特に、精米や熟成肉などの購入を考えている方は要注意です。

ステーキ
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本稿では、これらのルール変更が私たちにどのような影響を与えるか、あわせて寄付する際の注意点もご紹介します。

加熱する「返礼品争い」

そもそも、なぜ返礼品のルール改正が行われることになったのでしょうか。

ふるさと納税が始まったのは2008年。過疎などにより税収が減少している地域と、都市部との地域間格差を是正することを目的として作られました。

この制度を機に、財政難にあえいでいる地方の自治体は、返礼品によって寄付を集めようとしました。税収を超える寄付を集める自治体も出始め、お得さを強調する「返礼品争い」は加熱していきます。

これを問題視した総務省は、2015年に「換金性の高いプリペイドカードや高額な返礼品は自粛を」、2017年には「返礼割合は3割以下に」など、過度の返礼品競争の自制を促す要請を出します。

ただ、この要請に法的な効力はありませんでした。2018年には要請に従わない自治体の公表を行うなどしましたが、根本的な解決にはならず、2019年に法律で規制することとなりました。

2019年度の法改正では、

①返礼品は地場産品のみ
②返礼割合は3割以下
③寄付集めの総経費は寄付額の5割以下

というルールが定められました。

2023年10月からは、さらにこのルールが厳格化されます。

10月からどう変わるのか

10月の改正のポイントは2点あります。

①経費ルールの変更

まず1つ目は、2019年に設けられた「③寄付集めの総経費は寄付額の5割以下」のルールが変わります。

具体的には、経費に含まれる項目に以下の3つが追加されます。

【新たに経費となる費用】
・ワンストップの特例事務の費用(新ルール)
・寄付金受領証の発行+発送費用(新ルール)
・その他の付随費用(新ルール)


【これまで経費として計算していた費用】
・返礼品を調達する費用
・送料
・広報費用
※仲介業者に支払う手数料も経費の対象

新たに経費として計上される3つの費用は、これまで自治体側が計上していなかったケースも多いようです。10月以降は、これらの費用を含めて「寄付額の5割以内」に収めなくてはなりません。よって、返礼品によっては、値上げ、あるいは寄付額は同じでも返礼品の中身を減らす実質値上げになる可能性があります。

「地場産」の基準も厳格化される

②地場産の基準の変更・改正

改正の2つ目は、「地場産品」の基準についてです。

10月以降、地場産品のルールに以下の2つが新たに追加されます。

【新たに追加されるルール】
・熟成肉・精米の返礼品は原材料が同一都道府県産のみに
・他地域産の品と地元産の品をセットにする場合は地元産の品が全体価格の7割以上にならなくてはならない

「地場産」とは、その地域で作られたものを指します。

これまで、他の地域で作られた原材料を加工したものも地場産として認められていました。10月以降は、このルールがより厳しくなります。

たとえば、他地域の米を使って精米した返礼品は、ふるさと納税の対象外となります。外国産・他地域産の肉を使った熟成肉なども返礼品として認められません。お米やお肉を扱った返礼品のラインナップは少なくなる可能性があります。

ふるなび」など、一部のふるさと納税のポータルサイトでは、9月末に終了する返礼品の特集を組んでいるところもあります。ふるさと納税を考えている方は、チェックしてみてはいかがでしょうか。

ふるさと納税のサイトが表示されたパソコン
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寄付金控除の上限に注意!

寄付する前に確認しておきたいのが、「寄付金控除」の上限額です。寄付金控除の上限額は、年収や家族構成によって異なります。上限を超えた分は税額控除を受けられず、ただの寄付になってしまいますので注意してください。

【図表1】寄附金控除額の上限(目安)
図表=総務省HPを基に筆者作成

たとえば、ふるさと納税をした本人の給与収入が500万円で、家族構成が共働きの夫婦・高校生の子どもが1人という世帯の場合、上限額は4万9000円です。4万9000円までの寄付であれば、2000円を除いた額が翌年の税から控除されます。つまり、4万9000円分の返礼品を2000円の負担で受け取れる、ということですね。

仮に、冬のボーナスなどが減額され、年収が400万円に減ってしまった場合。上限の目安は3万3000円まで下がります。もし4万9000円分の返礼品を購入していても、差額の1万6000円分に関しては、所得税の還付や、来年度の住民税の控除が受けられません。

このインパクトは高年収の人ほど大きく、年収が1000万円から900万円に下がった場合、上限額は2万5000円の差額が発生します。年収が高く、ボーナスの比重が大きい人はとくに注意が必要です。

ボーナス減額のイメージ
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「9月末までに7割、12月末までに残りを追加」がお勧め

総務省の「ふるさと納税ポータルサイト)」では、収入、家族構成、寄付金額を入力すれば、寄付金控除額をシミュレーションできる表計算のシートが掲載されています。今年の年収を予想して、上限額を再確認しておきましょう。

年収が減るかもしれない……という人は、たとえば、9月末までのふるさと納税を予想上限額の7割程度にとどめておく、そして年末に所得額がはっきり分かってからさらに追加でふるさと納税する、といった方法をとると良いでしょう。

10月のルール改正は、加熱し過ぎた返礼品争いを防ぐという点で、必要な施策といえます。が、やはり返礼品はお得に受け取りたいこともまた事実。今年の収入がある程度分かっており、欲しい返礼品が決まっているのであれば、今年は9月末までの寄付がおすすめです。