女性用商品なのに、予算と決定権は男性が握っている
まずは木下明子編集長より、2020年からプレジデント ウーマンがキャリア女性向けのさまざまな商品を開発した経緯と、日本の働く女性の現状についての解説からスタート。
「日本でも女性管理職は増えており、キャリア女性に向けた商品が発売されていますが、開発の予算と決定権を握っているのは主に男性。つまり“女性目線”があまり生かされていません。そこで、読者の皆さまの声を聴きながら、働く女性が本当に欲しい商品の開発を行いました」
たとえば、大ヒット商品となった、パソコンが入るビジネスリュック「PW(ピーダブリュ)」と「PW plume(プリューム)」。従来、ビジネスシーンに女性のリュックはNGのイメージがあったが、これならばスーツにもマッチするし、相手にも失礼にならない。また、人気ブランドのポール・スチュアートとコラボして作られたスーツ「PW」は、サックスブルーが予想に反して大変売れた。ビジネススーツは紺やベージュを選びがちだが「もっとキレイな色を着たい」という女性のニーズに応えたのだ。
このようにプレジデント ウーマン編集部が開発した商品は、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)を逆手に取ったマーケティングが奏功した、と言えそう。これからも「“働く女性が本当に欲しいもの”を開発して、女性が生きやすく、働きやすい社会をめざしていきます」と編集長は意気込みを語った。
大ヒット吸水型生理用ショーツの成功の裏側
次に女性のニーズをくみ取った商品展開で注目を浴びている、Be-Aジャパン代表取締役の高橋くみさんがゲストスピーカーとして登場。編集長や参加メンバーの皆さんと活発な議論を展開した。
Be-Aジャパンが掲げるミッションは「(まずは)日本で一番女性を幸せにする」。なかでも同社が開発した吸収型生理ショーツ「べア シグネチャー ショーツ」はナプキンが不要の画期的商品。憂鬱な生理の日を快適に、そして安心に過ごせると、デビュー以来大ヒットを続けている。「生理だからといって、いろんなことを諦めたくない」という女性の気持ちを応援するだけでなく、大量に捨てられる使用済みナプキンの削減にも寄与。しかし成功に至るまで、さまざまな苦労があったと高橋さんは言う。
「ショーツを生産してくれる工場を探しましたが19社に断られ、20社目でやっと許諾されました。その会社の管理職の方は非常に乗り気でしたが、部下の男性が拒否反応を示してしまい……。その後この話はなかったことにしてほしいと言われましたが、再度きちんと話し合いをして、やっと生産にこぎつけたのです。女性の生理をまったく理解していない男性が多いことを痛感しました」(高橋さん)
男性側の理解を得るには若い世代の教育も必要なので、男子校で生理についてレクチャーをしたり、各メディアに登場して情報提供をしたりと、生理や女性の体の悩みについての啓蒙活動を高橋さんは行っている。
男子高校生の反応や米国での性教育についての実情について参加者から質問があり、興味深いお話を高橋さんから伺えた。
編集部と企業とのコラボ商品について活発な意見交換を
さて、今回のキックオフイベントのメインは、「働く女性向け商材の現状分析と、要望」についてのディスカッション。プレジデント ウーマン編集部とメーカーでさまざまなコラボ企画を進行中で、ミニバッグからオフィス家具、住宅などついて議論。積極的な意見がたくさん飛び交った。
まずは流行中のミニバッグのビジネスタイプの需要などをディスカッション。コロナ禍が落ち着いてくると、ビジネスの会合などが増加。例えばホテルでの会合の際、クロークに荷物を預けた後、スマホ、お財布、名刺などが入るミニバッグがあったらどうだろうか――。
「ある程度の役職になると、いろんなパーティーや懇親会に参加しないといけないが、結婚式の参列時に使うようなミニバッグでは浮いてしまう」「比較的堅い業界にいるので、少し落ち着いた色みがいい」「存在感があまりなく、サラッとかけられるタイプが欲しい」「ぶ厚くて硬い革素材だとちょっと大きく感じてしまう」と、総じて、キャリア女性たちは存在感のない柔らかい印象のアイテムを希望しているよう。また、「これ見よがしなブランドのシグネチャーが全面に出ていると恥ずかしい」というキャリア女性ならではの意見も聞かれた。
次に、リモートワークが浸透した今、在宅ワーク中、長時間座っても疲れない高品質の椅子の需要も高まっているが、どんな椅子なら自宅に置いてもいいと思えるかを尋ねた。
「ゲーム用のいわゆる“ゲーミングチェア”は機能が高く、長時間座っていても疲れない」と複数の参加者から意見が出た。しかし問題は見た目。「ゲーム用の椅子はめちゃくちゃごつい。男性向けな感じがする」との声も。また「座面が変えられたらいい」との声が多数聞かれた。
「人によってお尻の座り心地の感じ方が違う。表と裏で座面の材質を違うものにしたら、人によって気分によって替えられるのでいい」「座面を外せると衛生面でもOKです」など、大変参考になる意見が聞かれた。また「長時間座っていると足がむくんでしまう。かかとを少し上げるなど、ちょっとしたフットレストがあるとうれしい」という声も。
さらに、最近のSDGsの観点に鑑み、「日本では家具を修理に出す人はほとんどいないらしい。でも、サステナブルな時代らしく、修理ができて長く使えるといい」なども。活発な意見とともに、女性たちは椅子へのこだわりが高いこともわかった。
住まいに関しても積極的な意見が飛び交った。
「3部屋しかないのに4人で暮らしていて家が狭い。わざわざリノベーションをせずに、間取りを柔軟に変えられるような設計がいい」
「ひと昔前の一戸建ては、バリアフリー対応ではない。介護する人間の負担を減らす意味でも、エレベーターも後から付けられたらいいのにと思う」
「家を建てた時は、家族の構成人数が増えるか減るかなど、将来的に家をどうしたらいいいか私たちにはわかりません。その際にハウスメーカーから適確な提案があるとうれしい」など、近い未来に訪れる親の介護を視野に入れた声も多かった。
軽い、疲れない、しかも走れる究極の靴「スニープス」を試し履き
最後は、プレジデントウーマン編集部と人気靴ブランドのモード・エ・ジャコモがコラボして開発した「スニープス」を披露。
「最大の魅力は、前から見たらパンプスの顔で“きちんと感”があるのに、スニーカーのような快適な履き心地です。つま先はスクエアトゥなので足がキレイに見え、カジュアルな洋服でもスーツでも、どちらの装いでもマッチ。甘くないキリッとしたテイストのモチーフを付けたり外したり、2ウェイで楽しめます」とモード・エ・ジャコモの担当デザイナーである千藤寿美恵さんが解説。
おしゃれなのに、機能性も抜群。どちらも両立しているのがスニープスの素晴らしさ。撥水加工のスエード調レザーを使っているので、突然の雨でも対応し、汚れにくい。非常に軽くて走ることもできるという“究極の靴”が誕生したのだ。これならオフィスで履いても、仕事の後のオフシーンの靴としてもぴったり。会場では、ベージュとグレーの2色の各サイズサンプルを準備。早速試し履きをした人たちからは「本当に軽い!」と驚きを隠せない声が上がった。
その後の懇親会では、協賛であるサッポロビールの新商品「シン・レモンサワー」で乾杯。さわやかでスッキリした味わいに感動の声も。メンバーは同じ働く女性として共通項が多いせいか、名刺交換とともにそこかしこで話が弾んでいた。
宴もたけなわの中で散会し、協賛5社によるお土産を参加者にお渡し。
次回は6月3日(土)14時から「大交流会」をプレジデント社で開催予定。さらに活発なディスカッションと新しい出会いが期待できそうだ。