メールのやりとりの中で意見が対立し、ヒートアップしてしまった。相手に落ち着いてもらうにはどうすればいいか。業務改善のコンサルティングをする岡田充弘さんは「意見が異なる場面でこそ、トラブルと無縁の人とトラブル体質の人とで、振る舞いに差が出ます」という――。
仕事中、パソコンの前で不快な顔をする女性
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トラブルと無縁の人が徹底する3つの工夫

突然ですが、あなたはメールのやりとりで相手を不機嫌にさせてしまった経験がありますか? 私は新人時代に何度かあります。いずれもちょっとした説明不足や表現力不足からくるものでした。

時空を共有するリアルな対話とは異なり、離れた場所で非同期に行われるメールは、そもそも誤解が生じやすいコミュニケーション手段であると言えます。実際ちょっとした言い間違いや表現の仕方によっては、大事を招くことさえあります。特に最近世の中全体が緊張感に包まれているせいか、以前にも増して揉め事や争いが起こりやすくなっているように感じられるのです。

ただそういった状況であっても、物事をうまく進め、トラブルとは無縁の人はいるものです。彼らは意識してか無意識かは分かりませんが、次に紹介する3つの工夫をメール上のやりとりで実践しています。

① むやみに議論をせず、相手が嫌がる話題にも触れない
② 意見が異なる場合は、折り合える着地点を見つける努力を見せる
③ 怒っている場合は、相手の言い分や気持ちを理解する姿勢を示す

1.むやみに議論をせず、嫌がる話題に触れない

小難しい内容をメールでやりとりしているうちに、つい熱くなってしまう人がいます。自分の知識や考えに自信がある人同士がやりとりする時に見られがちな光景です。

かつて私が属していたコンサルティング業界でも、メール上でコンサルタント同士が激しいドンパチを繰り広げる機会も少なくありませんでした(Cc・Bccに入れられていた私はプロレスを見ているような心境でしたが)。

ただ熱くなり過ぎて、議論が単なる口喧嘩に発展するのはいただけませんでした。まだ時代的にメールの使い方やマナーが今ほど確立していなかったせいもあるかもしれません(という事にしておきましょう)。

一方で、トラブルとは無縁の人は無用な議論をしませんし、相手が嫌がる話題に触れることもありません。メールに限らず普段から危険を回避する習性が身についているのです。

「相手との深い議論や踏み込んだ話題で思わぬ扉が開く可能性もある」という人もいるかもしれませんが、たいていの場合はリスキーです。一度こじれた大人たちの誤解を解くのは、素直だった子供の頃よりも簡単ではありません。メール上であればなおさらで、よほどのことがなければ「君子危うきに近寄らず」が正解なのです。

【図表1】むやみに議論をせず、相手が嫌がる話題にも触れない
図表作成=筆者

2.意見が異なる場合は、着地点を見つける

むやみにメールで議論しない方がいいとは言いましたが、それでも時には相手の考えに違和感をもつこともあるでしょう。少しくらいの違和感ならいいのですが、あまりに大きいと我慢し続けるのは精神衛生上よくありません。

そんな時にこそ、トラブル体質の人とトラブル無縁の人とでは、振る舞いに差が出ます。

例えば、トラブル体質の人は、意見の相違や想定外のことに対して、問題を解決するよりも、感情的に怒ったり、なげやりな態度をとりがちです。これはそれまで積み上げてきた関係や信頼が一気に壊れてしまうので大変危険です。

一方でトラブル無縁の人は、問題や相違に対して満点の解決にいたらなくても、粘り強く双方が納得に近づけるような着地点を見つけようとします。例えば、図表2のように相手の意見の背景を把握した上で、代替案や別視点を共有してみる、といった感じです。トラブル回避だけでなく継続的に良好な対人関係を築くには、この諦めない姿勢が極めて大切です。

【図表2】意見が異なる場合は、折り合える着地点を見つける努力を見せる
図表作成=筆者

3.相手の言い分や気持ちを理解する姿勢を示す

無用な議論を避けたり、建設的な着地点を見つける努力にもかかわらず、仕事上の不測の事態など何らかの事情でお叱りのメールを頂くことがあると思います。多くの場合はビジネスマナーにのっとったご指摘程度にとどまりますが、中には露骨に文面に怒りが表れている人もいます。

そんな時、あなたならどのような対応をするでしょうか。

対応一つがその後の明暗を分けると思うと、この「怒りを鎮める」というテーマは、メール上だけのことではなく、仕事や人生において重要なテーマになります。

怒りへの対応の大前提としては、決して冷静さを失わないことです。間違っても頭に血が上って、怒りの感情で反応することがあってはいけません。

そして冒頭に「申し訳ありません」「すみません」と素直に謝辞を伝えます。それから続いて相手が納得する適切な解決方法を提示するのが一般的な謝罪の流れとなります。

謝罪しても怒りが収まらない場合は

ただそれでも相手の怒りが静まらない場合があります。そんな時、謝罪もして解決方法も提示しているのに、なぜ許してもらえないのかと不思議に思うことでしょう。

それは当然で、実は怒りが静まらない原因の多くは、相手の気持ちや状況をこちらが理解していることが十分に伝わっていないことにあるのです。

怒りは不安の裏返しです。相手からすると、怒りの源泉となる理由が正しく理解されていないことでまた同じような状況が起きてしまうのでは、といった恐れや不安の気持ちが怒りの火種となってくすぶり続けるのです。だからこそ、図表3のように相手の気持ちや状況を自分の言葉で代弁することが大事になります。他の理由が無い限りは、このように工夫していくことで怒りは自然と収まっていくはずです。

【図表3】怒っている場合は、相手の言い分や気持ちを理解する姿勢を示す
図表作成=筆者

今回はトラブルと無縁の人がメール上で行っている3つの工夫について紹介しましたが、いずれの工夫もメールだけでなく、リアルの対人関係でも使える大切なことばかりです。

また仕事以外に家族や友人などプライベートでも使えます。ぜひ意識してみてください。