食費や交際費など支出項目を分ける必要はない
年末が近くなると「来年こそはしっかり家計管理をしよう」と気持ちを改める人も多いのではないでしょうか。家計管理をするには、支出を見える化する必要がありますが、資産1億円以上をためるお金持ちには、細かく家計簿をつけている人はほとんどいません。
家計簿といえば、食費、交際費、通信費……と支出項目を分けて記録するのが普通ですが、お金持ちは支出項目よりも支出ペースに着目しています。支出の総額をできるだけ早く知ることを重視しているのです。そして予算をオーバーしていないかをチェックしています。
たとえば、1カ月に15万円使うのであれば、1日当たりの支出は5000円、1週間では3万5000円が予算になります。実際の支出がその範囲に収まっているかどうかを確認しているのです。予算内であれば使い道は関係ありません。
もし1日の予算を超える日があれば他の日で節約し帳尻を合わせます。1週間の予算をオーバーしてしまったら、その分を翌週で節約します。「先週は予算をオーバーしたので、今日の晩御飯はパスタにして節約します」といった話を聞くこともあるほどです。
いつ、いくら使ったのかをできるだけ早く把握する
お金をためるには、何に使ったかを知るよりも、「いつ、いくら使ったのか」を早く認識することが大事です。認識できれば、支出のペースを落とすなど、お金の使い方にメリハリをつけることができます。お金の蛇口を開くのは簡単ですが、閉めるのは難しいものです。必要な時に思い切って支出を減らせる人は強いのです。
最近は家計簿アプリを利用する人が多くなりましたが、以前は週間スケジュール帳を利用して、支出をできるだけ早く把握することを勧めていました。家計簿をつけるのは、支出を記録し自分の消費パターンを可視化するのが目的です。そこで、「毎日持ち歩いている手帳を使って家計管理をすれば、楽にお金が管理できる」と考えたのです。「スマホは苦手」と感じている人には、手帳を利用した家計管理はいまでも有効ですから、簡単に紹介しましょう。使う手帳は月間タイプでも週間タイプでも構いませんが、週間のほうがより細かい管理ができます。
お金を使った時間と金額だけを記録する
手帳を用意したら、お金を使うたびに金額をスケジュール帳に記録するだけです。スケジュール欄の時間の目盛に合わせて、使った時間の部分に金額を記録していきます。
スペースに余裕があれば、「ランチ」「コンビニ」などとメモ書きをすれば、後で確認するときにわかりやすいのですが、メモはなくても構いません。使った時間がわかれば、ランチ代、飲み会代など、多くの場合で使い道を推測できます。
クレジットカード払いの場合は、使った時と引き落としの時期にズレがありますが、必ず使った時点で記録します。支出金額を把握するのが目的ですから、「食費」「娯楽費」などの分類は不要です。
1カ月ほど記録を続けたら、曜日ごとの支出の傾向をチェックします。「金曜日にお金を使う傾向がある」「平日は節約しているのに土日に大きな出費が多い」「毎週、飲みに行っている」などがわかってきます。1日の中の時間の傾向も確認します。「毎朝、コーヒーに数百円を使っている」「会社帰りにコンビニに寄っている」などがわかってきます。
1週間の予算を決めて支出にメリハリをつける
お金の使い方の傾向がわかったら1カ月の生活費やお小遣いの金額を決めます。たとえば、1カ月の小遣いが3万円であれば、1週間に使える金額は7000円です。これをオーバーしないようにお金の使い方をコントロールします。
もし、週末に飲み会に行くなら、「ランチは500円以内」で「自販機のコーヒーは我慢しなければならない」ことなどがわかります。引き締めるときは締めて、使うときは使う、このメリハリが家計管理のポイントです。
家計簿アプリを利用する場合も1週間の予算を決めて支出をコントロールする方法は同じです。家計簿アプリはお金を使うたびに自動で記録されるので手帳よりも手間がかかりません。
キャッシュレス化を進めなければ家計簿アプリが生かせない
ただし、家計簿アプリでは現金での支出は入力の手間がかかりますから、支出をできるだけキャッシュレスにする方が楽です。実は、お金持ちにはキャッシュレス化を徹底している人が多く、現金を持ち歩いていない人が少なくないのです。
当社では家計診断や運用相談の相談料を原則現金でいただいているのですが、「現金は持っていません」という人が多くなりました。その場合は、振り込みしてもらうのですが、以前にはほとんどなかったことです。とくにお金持ちにその傾向があります。
こんなこともありました。私が所属しているテニスクラブには、会員が100名ほどいて、メンバーが毎年3000円ずつ出し合ってテニスボールをまとめ買いしています。先日、練習に行った際、ボール代の徴収があったのですが、私は現金を持っていませんでした。
高所得者には現金を持ち歩かない人が多い
恥ずかしい思いをしたのですが、実は、私と同じように現金を持っていない人が多かったのです。リタイア世代には現金を持っている人が多いのですが、現役世代には持っていない人が多かったのです。
経営者や士業など高所得のメンバーが少なくありません。彼らにはキャッシュレスが当たり前になっているのです。
キャッシュレスにする場合、取引を集中させるのが効率的です。例えば、楽天カードを利用するなら、家族には家族カードを渡して、支出を楽天カードアプリで把握できるようにすれば簡単に家計管理ができます。
定期的にチェックして「今月は支出のペースが速いな」と思ったときには、家族に「しばらくは緊縮財政で過ごします」と宣言します。「外食したい」と言われても「いまは厳しい時期なので○日まではダメです」と言って、納得してもらいましょう。
お金持ちが好んで使う3つの家計簿アプリとは
お金持ちも家計簿アプリを積極的に活用しています。使っている家計簿アプリは「Money Forward ME」や「Zaim」が多いようです。いずれも銀行口座や証券会社の口座と連携できるので、お金の出入りを把握するだけでなく、資産の時価もチェックできるので便利です。
また、「Zaim」には、サブスクの契約を管理できる「定額サービスチェッカー」があります。最近は、ネットフリックスやアマゾンプライムなどサブスク型のサービスが増えています。解約するまで支払いが続くわけですが、使わなくなってもそのままにしてしまうケースが少なくありません。その点、「定額サービスチェッカー」は何にいくら使っているかを常に認識できるので、解約のし忘れがなくなります。
また、お金持ちには「マネーツリー」を使っている人も少なからずいます。理由はわかりませんが、所得が高く金融資産をたくさん持っている人の中にはマネーツリーのファンが一定数いるようです。
お金がたまらない人の大半は家計簿も家計簿アプリも利用していません。これでは体重計に乗らずにダイエットをしようとしているようなものです。資産形成はいくら使ったのか記録することから始まるのです。家計簿アプリは自動で支出を記録してくれますが、効果的に利用するには前述のように生活をキャッシュレス化する必要があります。
ただし、キャッシュレス化することで、お金を使い過ぎてしまう人も少なからずいます。それであれば現金を利用すべきですが、その場合は「おカネレコ」という電卓のような家計簿アプリが便利でしょう。
キャッシュレス化を進めている人には豊かな人が多い
普通の会社員で家計簿をつけている人は少数派です。家計相談をしている感覚的には、家計簿をつけ続けている人は4人に1人くらいではないでしょうか。日本でも徐々にキャッシュレス化が進んではいますが、クレジットカードなどと現金を併用している人が大半です。
いまの日本でほとんどの支出をキャッシュレス化するには、それなりの努力が必要になります。経済的に豊かな人には、それを乗り越えて支出の9割以上をキャッシュレス化している人たちが多いのは確かです。
お金持ちを目指すなら、家計簿アプリを利用して支出を把握するところから始めてみてはどうでしょうか。