年末はふるさと納税に駆け込む人が増える時期。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「“山伏修行1日体験”などの変わり種も数多く申し込みましたが、控除枠を消化するため、焦って返礼品を選ぶのは禁物です」という――。
高級海鮮
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知っておきたいふるさと納税の誤解や勘違い

ふるさと納税とは、実質負担2000円で、全国各地の名産・特産品がもらえるおトクな制度です。

要件を満たす人がきちんと手続きをすれば、損をすることはないのですが、それでも残念ながら、失敗するケースも少なくありません。

今回のテーマは、そんなふるさと納税で、注意すべき失敗についてです。

ふるさと「納税」との名称ですが、その内容は「寄附」です。

ふるさと納税を利用して都道府県や市町村へ「寄附」をすることで、返礼品として、その自治体の名産・特産品を受け取ることができます。そして、これはよくある誤解ですが、寄附先は必ずしも「ふるさと」である必要はなく、自身が寄附をしたい自治体であれば、全国どこの自治体でもかまいません。

ですので、返礼品の種類が多く、豪華な自治体は人気があって、多くの寄附を集めているのが現状です。

たとえば、以下の自治体(返礼品)など、非常に人気となっています。

・北海道紋別市「オホーツク産ホタテ貝柱『大玉サイズ』1kg」(1万4000円寄附)
・福岡県飯塚市「鉄板焼デミソースハンバーグ20個」(1万円寄附)
・佐賀県上峰町「さがみのり新米20kg」(1万円寄附)

納税額が少ない人には恩恵が少ない

ふるさと納税のポイントは、寄附をした分、税金が安くなる(控除される)ことです。

正確には、年間2000円は自己負担となるので、寄附額から2000円だけを差し引いた金額分、税金が安くなります。たとえば5万円寄附をすれば、税金が4万8000円安くなるわけで、ほぼタダで、返礼品が受け取れるわけですね。

冒頭の「実質負担2000円で」とは、こういうことだったのです。

ただ、収入が少ない人(もしくはゼロ)は、そもそも安くなる税金が少ない(もしくはゼロ)なので、ふるさと納税の恩恵はさほど受けられません。

一方、収入が多い人(税金をたくさん払っている人)は、その恩恵は非常に大きいわけです。

ふるさと納税で得する寄附額の上限を知る方法

ただ、注意すべきは、安くなる税額には「上限」があることです。

必ずしも、寄附額から2000円だけを差し引いた金額分、税金が安くなるわけではありません。

寄附額から2000円だけを差し引いた金額分だけ、しっかり税金が安くなる(=実質負担2000円となる)寄附額の上限は、その人の収入や家族構成等によって異なります。

その上限となる寄附額の一例は、以下の通りです。

・年収300万円(独身):2万8000円
・年収500万円[夫婦+子供1人(高校生)]:4万円
・年収700万円[共働き夫婦+子供1人(大学生)]:8万3000円

なお、税金控除のしくみや、より詳しい上限額については、総務省のふるさと納税ポータルサイトを参考にしてください。

資料を見ながら計算する女性
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税金が安くなるしくみはややこしく、ふるさと納税での失敗としては、この税金控除に絡んだ失敗は少なくありません。

そんな税金絡みの失敗を、いくつか挙げてみたいと思います。

上限を超えた分は「単なる寄附」になる

魅力的な返礼品目当てに、ついついアレコレ寄附をして、上限となる寄附額を超えてしまうケースが考えられます。

その場合、上限を超えた分については、税金は安くはなりません。

たとえば上限寄附額3万円の人が、5万円の寄附をすれば、上限を超えた2万円は「単なる寄附」となります。自己負担2000円に加え、2万円も持ち出しとなってしまうので、これは痛い失敗ですね。

この場合、ふるさと納税のメリットである「実質負担2000円」では済まないので要注意です。

ワンストップ特例には落とし穴も

上限を超えた分は「持ち出し」となってしまうことから、慎重になりすぎるあまり、寄附額が上限を大幅に下回ってしまうこともあるでしょう。

たとえば上限寄附額3万円の人が、2万円しか寄附をしないと、1万円分の枠が余ることになります。

ただ、その1万円を寄附していれば、その分、税金が安くなったわけです(実質タダ)。すなわち、1万円の寄附に対する返礼品をタダで受け取れるチャンスをみすみす逃したわけで、損はしていないものの、とても悔しい思いをするわけです。

寄附をした後に確定申告、もしくはワンストップ特例(*)の手続きをしないと、税金は安くなりません。

そもそも、寄附額が上限を上回った(下回った)という以前に、この手続きを忘れてしまっては、ふるさと納税としては致命的なのです。

これは一番やってはいけない失敗で、最も気をつけたいところです。

ちなみにワンストップ特例の対象となるのは、寄附した自治体が5カ所までの場合。6カ所以上であれば確定申告が必要です。また、ワンストップ特例の申請後に医療費控除などの申告をする場合には、改めてふるさと納税の申告をしないと減税が受けられませんので注意が必要です。

*一般的な会社員や公務員が使える簡易な手続きのこと(確定申告不要となる)

今でもモヤモヤが続く変わり種の返礼品とは

幸い、FPゆえに、それなりの税務知識のある私は、前述のような税金控除に絡んだ失敗はしていません。

しかし、返礼品に絡んだ失敗は少なくなく、ここからようやく(?)、私の失敗談となります。

返礼品で人気なのは、肉や魚介類、米や野菜、フルーツといった畜産・農作物です。

しかし、かつて私が目を付けたのは、皆が知らないような掘出物を選ぼうという(FPとしての)使命感、そして、皆と一緒だと面白くないという天邪鬼あまのじゃくな性格から、それら以外の「変わり種」返礼品でした。

たとえば、大阪府泉佐野市の「山伏修行1日体験」(寄附額5000円)。これは面白いと、深く調べずに、即申し込みました。

ただ、後日送られてきたチケットには「実践修行ゆえ、参加には重々たる注意・検討が必要」「体力に自信のある方のみ」といった注意書きが……。勢いで申し込んだだけの私にそこまでの覚悟などあるわけはなく、数年経ちますが、未だに参加しておりません。

寄附額2000円で手に入れた「将棋駒ストラップ」

他には、兵庫県洲本市の「ドラゴンクエストフィギュア」(寄附額1万円)。

ふるさと納税限定の大人気だった返礼品で、申し込み開始と同時に申し込み、運よくゲットすることができました。そのときは嬉しかったのですが、後から冷静に考えると、そこまでして欲しかったのか疑問です。

また、大阪府島本町の「将棋駒ストラップ」(寄附額2000円)も、寄附額が少額ゆえ、思わず申し込みましたが、これも後から、これは本当に欲しかったのか、と自問することとなりました。

*返礼品・寄附額はいずれも寄附当時(数年前)のもの

いずれも、実質タダでもらえることから、選び方が雑だったことは否定しません。

損はしていませんが、それら返礼品は今も手元に残っていることもあり、今もなんだかモヤモヤしています。その意味では「失敗」だったと言えるでしょう。

そんな反省もあって、今では、変な使命感等にこだわらず、純粋に欲しいものを選び、そして返礼品は基本的に、(手元に残らない)肉や野菜などの「食べ物」にしております。

返礼品が受け取れない3つのパターン

さて、今回の失敗は(いつもの投資の失敗に比べれば)かなりソフトな失敗なので、あまり参考にならなかったかもしれません。

なので、私の失敗以外にも、よくある返礼品絡みの失敗をいくつか紹介しましょう。

中には致命的な失敗もあるので、大いに参考にしてください。

自治体に寄附をしても、必ずしも返礼品を受け取れるわけではありません。以下のようなケースの場合は、要注意です。

・返礼品なし(不要)コースへの寄附
災害支援など、「返礼品なし(不要)」コースへの寄附は、当然返礼品はありません。

・同じ自治体に年2回以上寄附をした場合
2回目以降の寄附については、返礼品を受け取れない自治体もあるので要注意です。

・自分が住んでいる自治体への寄附
原則として、居住自治体への寄附は、返礼品は受け取れません。

返礼品によっては、発送時期が決まっているものがあります。

たとえば、イチゴは1月~3月頃、モモは8月~9月頃、リンゴやミカンなら12月以降といった感じで、旬の美味しい時期に送ってくれるケースが多いです。

それを知らずに(申し込んでから気づいて)、悶々と数週間、数カ月、申し込み時期によっては1年近くも待つことになると、ふるさと納税の楽しさも半減です。今日申し込んで明日届くようなネットショッピングのような感覚で返礼品を選ぶと、そんな落とし穴にハマってしまうので要注意です。

年末に枠が余った場合におすすめの返礼品

ふるさと納税のメリットを最大限生かそうとするのなら、年間の寄附額を、自身の上限寄附額(実質負担2000円となる寄附額)ピッタリに合わせることです。

前述の通り、上限を超えると「実質負担2000円では済まない」ですし、上限に満たないと「せっかくの控除枠がもったいない」ですから。ピッタリ合わせることは無理だとしても、できるだけ、上限ギリギリに合わせたいと思う人は多いことでしょう。

ただ、その上限額がハッキリするのは、1年間の収入、ひいては税金が確定する年末です。なので、年末ギリギリになって、寄附先や返礼品を選び始める人も少なくありません。

しかし、ただでさえ忙しい年末ですから、それで慌てて焦ってしまい、たいして欲しくない返礼品を選んでしまうなどの失敗してしまうことも少なくありません(実際、私もそうでした)。また、年末になれば、人気返礼品は品切れになっていたり、希望する返礼品の発送時期が過ぎていたりといったデメリットもあります。

正確な上限額は年末までわかりませんが、ある程度の見込みであれば、年の途中でもわかるはずです。

ですので、年末まで何もしないのではなく、余裕のあるときに、ボチボチ返礼品を申し込むように心がけたいところですね。

それでも、年末時点で上限枠が相当余ってしまった場合には、返礼品をポイントで受け取り、後から、好きな商品と交換できる「ポイント返礼品」も検討の余地ありです。

今年も年末が迫り、ふるさと納税への関心がピークとなっている今、今回のコラムが少しでも参考になれば幸いです。