冷凍庫から化石が…
片づかない家のベランダや玄関を掃除すると、枯れ果てたプランターが、いくつも出てきます。そして飲みかけや空の「ペットボトル」が、家のいろいろなところに置いてあります。さらに玄関の入り口には、数えきれないほどの「ビニール傘」があります。
この3つのアイテムがある家は片づかないし、お金も貯まりません。
さらに片づかない人の家は、たいてい冷蔵庫の中がぐちゃぐちゃ。大掃除のときには、必ず冷蔵庫から、いつ作ったのかわからないおかず、いつ冷凍したかわからないお肉などの「化石」が見つかります。「冷凍していれば大丈夫」と、冷凍庫に入れたものが化石化して、年末の大掃除で発掘されるというわけですね。
片づかない人は見通しを立てられない
そもそもなぜ片づけが苦手な人は、これら3つのものが溜まってしまったり、冷蔵庫がぐちゃぐちゃだったりするのでしょうか。こういった人には二つの共通点があります。
一つ目の共通点は「見通しを立てるのが苦手」ということ。
たとえばプランターを買うときは「花のある生活をしよう」という夢を描いています。でも結局は、その余裕がなくて育てられない。育てられないなら最初から置かなければいいのに、つい買ってしまう。
枯れたら枯れたで、なぜ枯れたのかなと管理ができない自分をいったん受け入れたほうがよいのですが、なかなか受け入れることもできない。諦められないなら、どうやって管理ができるか考えてほしいところですが、その見通しを立てることが難しいのです。
私自身、専業主婦時代は時間がたくさんあったので、ベランダにプランターをいっぱい置いていましたが、仕事を始めてからはやめました。毎日、花に水をあげる時間もないし、今の自分には無理なんだなって。また子どもが小さいときは、室内に観葉植物を置くと倒されることがあったので置きませんでした。でも子どもが独立した今は、室内に観葉植物を置いています。
手がかけられなくて枯れたものを置くより、今の生活の範囲でできることをする。造花もいいですし、切り花を買ってくるのもいいと思います。
折り畳み傘を持てばいいだけ
またペットボトルも、水筒を持って出れば、いちいち外で買う必要はありません。ビニール傘もそうですね。朝、天気予報を見て、雨が降るかもしれないから、折り畳み傘を持っていこうという発想に至らず、とりあえず出かけて、雨が降った、傘を買っちゃえと買ってしまって、どんどん増えてしまう。
冷蔵庫の問題も同じです。買い物に行く前に冷蔵庫に何が入っているか確認すれば、ムダなものを買ってくることもありません。それができないと、おかずを作って忘れたまま放置、野菜を買ってあったのに忘れて腐らせてしまうということが起こります。
冷蔵庫をちょっと見て今晩はこれにしよう、近いうちにこれにしようと見通しを立てれば、使い切ることはできますよね。
家族の対話ができればすっきり片づき、お金も貯まる
片づかない人の二つ目の共通点は「コミュニケーションがとれていない」ということ。片づけというのは、基本的にコミュニケーションです。そのコミュニケーションの方向は二つ。自分との対話、それから家族との対話です。
自分との対話というのは、そもそもこの家で何がしたいのか、これを使ってどんな暮らしがしたいのか、私らしさって何だろうと考えていくこと。そうすると、これは今の自分には似合わない。惰性で使っているよね、ということに気づいていきます。
その過程で何を残すかという基準が明確になっていきますが、片づけられない人は、まずこの自分との対話ができていないので、「金額が高かったから」「まだ使えるから」など、外的要因でジャッジして、なかなか捨てられず、片づけが進まないのです。
また家族と対話できていないのも、片づかない家の特徴です。家族それぞれがどう暮らしたいと考えているのか話ができるようになれば、部屋も片づいていきます。たとえば「リビングでどう暮らしたい?」「ゆっくりくつろぎたい」「だとしたら、いろいろなものがごちゃごちゃしないほうがいいよね。ペットボトルは捨てようか」となって、家族みんなが望むスッキリとしたリビングが実現します。
さらに家族とうまくコミュニケーションがとれれば、冷蔵庫もスッキリしてきます。冷蔵庫がぐちゃぐちゃになるのは、互いに何が入っているかわからなくて、同じものを買ってくるせい。コミュニケーションがとれたら、こういったムダもなくなります。だからお金も貯まるのです。
「ステップ1」写真を撮る
以上を踏まえて、片づけられない人に実践してほしい3ステップについてお話します。
人は誰でも自分のことを都合よく見ていますが、写真を撮って、自分を俯瞰して見ると気付くことがたくさんあります。鏡と同じですね。
ですから、まず部屋の隅々まで写真を撮ってみましょう。他人から見えている姿がわかりますし、それが、本当に自分の望む家かどうか、自分なりにそのギャップも見えてきます。
たとえば対面キッチンをリビングから撮ってみると、びっくりするでしょう。上から手袋がぶら下がっていたり、奥の食器棚の上に段ボールが積み重なっていたり、冷蔵庫の扉にお知らせがベタベタ貼ってあったりと乱雑な様子が、お客さま側から丸見え。
こんなふうに片づける前の写真を撮っておくと、盲点が見えますし、あとから振り返ると「私、こんなに頑張った」という成果が見えて、「ああは戻りたくない」と思えるようになります。ライザップのビフォー、アフターの写真と同じですね。かつての太っている自分の姿を見て、戻りたくないと思う。努力が消えてしまわないためにも写真を撮ることは有効なのです。
動画を撮るのも、おすすめです。カメラを手に「こんにちは」と玄関から入って、お客さま目線で部屋を撮っていくと、アラがよく見えます。自分の目で見るのとは全く違った部屋の姿が映っているから不思議です。
大掃除のときは、早回し動画が撮影できる「タイムラプス」機能を使うと、どんどんきれいになっていく様子が残せて楽しい。子どもたちは、大喜びしますよ。楽しいことは続くので、ぜひそういった機能も活用してください。
「ステップ2」理想と現実の乖離をチェック
ステップ1で写真を撮ったら、自分の思い描く理想と現実がどれぐらい離れているか、チェックしていきます。そのためにはまず、自分の理想の暮らしを書き出しましょう。すっきりしたリビングで過ごしたい、キッチンでは凝った料理を作りたい、家族でバーベキューがしたい……、家の一カ所、一カ所で何がしたいか書いていきます。
そうすると、ステップ1で撮った写真を見たときに、そのために必要なものがあるか、不要なものはないか。不要なものがあれば、それを取り除けばいいということです。
「ステップ3」カレンダーに書いて実行
ステップ2で不要なものがわかったら、いつそれを処分するのか、ゴミの日などをカレンダーに書き込んで実行していきます。家族とコミュニケーションがとれれば、自分が忙しいときは、家族の誰かに頼むこともできるでしょう。
1年に1度は大掃除が必要ですが、ゴミは毎日自然発生的に増えていくので、基本的に片づけに終わりはありません。そもそも人によって片づけ方も違うので、正解はありません。だからこそ自分や家族と対話して、今日はこのゴミを捨てたからOK! 今日のベストは尽くした! と完了主義でいきましょう。そして家族構成やライフスタイルは、その都度変わっていくので、そのときの最善解を常に更新していくのがいいと思います。
片づかない家は、地雷がいっぱい埋まっているようなもの。ひとつずつ地雷を除去することで、自分自身のこと、夫婦関係、子育てなど、いろいろな問題が必ず解決していきます。まずはプランター、ペットボトル、ビニール傘の3つを片づけることから始めてはいかがでしょうか。