お金持ちはマイホーム購入で失敗する可能性は低い
マイホームの購入は多くの人があこがれる人生のイベントですが、お金持ちも同じです。1億円以上の資産を持つ層でも、普通の人と同様にマイホームに対するあこがれを強く持つ人は多くいます。なかには、マイホーム購入で失敗して、せっかく築いた資産を失ってしまう人がいるほどです。
ただ、お金持ちの場合は、高額物件を購入するだけの資金力があるので、都心の一等地の不動産を取得できます。無理して購入した場合でも、アベノミクス以降の値上がりで、結果的に資産価値が維持できて、最終的には失敗を免れることができたケースが少なくありません。
お金持ちがマイホームを購入する理由は、自分の思い描く理想の住まいを手に入れたい気持ちが強いからです。新築マンションであっても、リフォームして自分の好みに合わるケースが少なくありません。賃貸住宅は、基本的に内装を自由に変えることができませんので、マイホームを購入するしかないのです。
投資で成功したお金持ちはマイホームを購入しない
一方でお金持ちの中でも、投資で資産を築いた層は、マイホームを購入するよりも資金を投資に回して、リターンを得ようとする人も多くいます。たとえば、東京都港区の高級マンションを2億円程度の現金で購入できるとしても、2億円を支払って購入するのであれば、その資金を運用して運用益でその高級マンションに住もうと考えます。
仮に2億円を投資して年10%のリターンが得られれば、単純計算では月額170万円程度まで家賃に利用できます。しかも、法人を設立して、税法に適合する形で借り上げ社宅扱いにできれば、家賃の半額以上を経費に算入して節税も兼ねることができるかもしれません。不動産投資家も同じような発想をします。複数の物件を保有しているケースが多いので、資産管理会社を設立します。弊社のお客様でも資産が数千万円を超えた段階で不動産投資を始め同時に法人を設立する方が多くいます。
副業の節税が封じ込まれ法人設立が流行する?
不動産投資家の場合は、不動産から得られる収入をいったん法人という器に入れて、所得を家族に分散したり、家賃や車代を経費に算入したりして節税しています。
今後は会社員でも法人を作って節税する方法がはやるかもしれません。その理由は副業による節税が封じ込めの方向にあるからです。
たとえば、現在、会社員の傍ら副業の収入が年10万円あったとします。その副業収入を得るために30万円の経費がかかっているとすれば、副業を事業所得として申告して、赤字分を給与所得から差し引いて節税が可能です。
ところが、この仕組みを利用して節税する会社員が最近目立つため、税務当局が取り扱いを変更しました。収入が300万円を超えず帳簿書類が年間の副業収入が300万円を超えない場合は、事業所得としては認めず、雑所得となったのです。今回の変更では、取引を記録した帳簿書類があれば、副業収入が300万円を超えなくても、事業所得として認められることになりましたが、当初案では帳簿書類の有無にかかわらず、事業所得とは認めない方向でした。今後、雑所得の条件がさらに厳しくなる可能性があります。
現在、給与所得と合算して損益通算ができるのは、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つです。雑所得は対象となっていません。つまり、副業が雑所得になれば赤字になっても雑所得の税金がゼロになるだけで節税はできません。
であれば、会社員でも法人を設立して副業をして、所得を分散するなどして節税しようとする動きが出るかもしれません。ただし、法人を運営するためには経費がかかるため、売り上げが年1000万円程度にはなる事業を行わないとメリットが出にくいことは知っておくべきでしょう。
パワーカップルのタワマン購入、高値づかみになる恐れも
マイホームに話を戻しましょう。
最近パワーカップルと呼ばれる共働きで世帯年収が高い夫婦がタワーマンションを買っていると話を聞きます。その魅力は防犯面や眺望にあるようです。新宿区の「新宿区タワーマンション実態調査報告書」(2020年3月)によると、タワーマンションを選んだ理由として居住者の約6割が「防犯面で安心」を、約5割が「眺望が良い」を挙げています。
しかし、都心の不動産は価格が上昇していて、これから購入すると、高値づかみする恐れがあります。それを回避するには、今後も値上がりを期待できる物件の見極めが必要です。
お金持ちはランドマークのタワマンを買う
お金持ちの中にもタワマンを買っている人がいますが、多くはランドマークになるような有名なタワマンを買っています。たとえば、東京五輪の選手村が転用される東京・中央区の「晴海フラッグ」はいわゆるタワマンではありませんが多くの人に知られており、お金持ちにも人気の物件。約18haの土地に住宅、商業施設、小中学校、公園などが併設される予定です。
五輪延期などで一時はトラブルになりかけましたが、都心の地価が上昇したことによって大幅な割安感が生まれています。抽選に当たった人が契約後、すぐに転売しても利益が出るほどの状況になっています。
売却するつもりがなければ、買ってから値下がりしても問題はないかもしれません。ただ、マイホームが値下がりしているのと、値上がりしているのでは、精神的な余裕がまったく違います。不動産の購入で失敗しないためには、時期とエリアの見極めが非常に大事なのです。
港区のマンションの価格も上がっています。先日もリーマンショック後に買ったお金持ちから売却の相談があったので価格を調べてみると、買った価格の2倍程度に値上がりしていました。これは購入する時期がよかった例といえるでしょう。
海外富裕層に人気のタワマンの条件は“ビュー”
ランドマークになるようなマンションが値上がりするのは理由があります。買い手が国内だけでなく海外にもいることです。とくに円安が進んだいま、海外の富裕層から見て、日本の不動産は割安になっています。日本に来たときの拠点として、また投資用としてマンションを物色しています。
海外の富裕層が好む物件は、どんな条件を備えているのでしょうか。それは、海外でも知られるブランド価値や希少性です。たとえば、東京都港区にある麻布や青山といった地名は国内外で広く知られており、さらに好立地の物件は数も限られるので希少です。
また、すばらしい“ビュー”があることも重要です。富士山やレインボーブリッジが窓の外に広がるような物件は、海外の富裕層にとってわかりやすい魅力です。「晴海フラッグ」は晴海埠頭の南端に位置するため、晴海フラッグの中でもレインボーブリッジが目の前に広がるような部屋は特に特に人気が出るでしょう。
もう一つは、ホテルライクな生活ができること。コンシェルジュが常駐していて、居住者にきめ細かいサービスを提供するタワマンも海外の富裕層が好みます。
タワマンはランニングコストが高くなる
最近は日本の不動産会社もインターネット上で海外の富裕層向けに物件情報の紹介を始めています。VR(バーチャルリアリティー)技術を利用して、室内からのビューなどがわかる工夫をして、現地を見なくても購入判断ができるようになっています。
お金持ちは価格決定のメカニズムを理解していますので、不動産を購入する際にも海外の富裕層が何を好むかを意識しているのです。
ちなみにタワマンはラインニングコストが高くなりがちであることには注意が必要です。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、マンションの管理費の平均は月額1万970円ですが、タワマン(20階建て)の平均は月額1万5726円と1.43倍になっています。
修繕積立金も高くなりがちです。前述の新宿区のタワマン調査で修繕積立金が足りないと回答したタワマンの管理組合は約半数に上ります(図表1)。実際に、修繕積立金を値上げしたことがある物件は6割を超え、増額割合が50%を超えた管理組合が約4割を占めます(図表2)。
タワマンに限りませんが、マイホーム購入の際にはランニングコストにも注意が必要です。