条件1:メンズスーツにはないデザイン
女性が働くのが当たり前になった今、企業でもより上のポジションに就く女性も増えてきています。ビジネスで人に会う、発言するシーンも増える中、ご自分の印象をどうプロデュースするかはとても重要です。
「身に着けるものは、その人の名刺代わり」ともいわれるように、ビジネスを進めるうえで、スーツやジャケットはその人自身を体現する大切なアイテムとなります。役職が上がるほどスーツやジャケットを着る機会も増えますが、ポジションが上がれば上がるほど、「部下のように見えないだろうか」、かといって「偉そうに見えるのもイヤ」と、ご自分の見られ方に悩む方も多いのが実情です。
そんなとき私は「テーラードカラーをやめて、ノーカラーにしてみる」ことをおすすめしています。定番のテーラード以外を選ぶだけで、時代に合ったキャリアらしい風格が漂うのはもちろん、女性ならではのやわらかい印象もプラスできるからです。
ノーカラーのジャケットは襟がない分、アクセサリーも割と大ぶりなものを付けて華やかにすることもできますし、インナーを変えるだけで、カジュアルにもドレッシーにも変化させられます。手持ちのジャケットをひとつ変えるだけで、単なる「仕事服」ではない、今までと違うビジネススタイルに仕上がります。
条件2:思い込みを捨て新鮮なデザインや色をチョイス
また、ビジネスだからと、紺や黒、グレーなどのコンサバな色ばかりをチョイスしていませんか。いつも無難なコンサバ色を選ぶのではなく、今まで持っていなかった、差し色のようなカラーにトライしてみるといいでしょう。年齢を重ねたキャリア世代にこそ似合う色もあるのです。
スカートはもちろんですが、ノーカラーやVカラーでやわらかな色味のスーツやジャケットは、男性のビジネススタイルにはありません。だからこそ、ビジネスでノーカラーや淡い色味を着こなせるのは、女性ならではの特権ともいえます。
ダークカラー中心でカチッとした印象が多いビジネスの世界。「ビジネスではオーソドックスなものを着なければ」という、古いイメージに固執せず、大人世代、キャリア女性にこそ、ぜひ冒険してほしいのです。
「私はこの色しか似合わない、この形しか似合わない」という思い込みを手放してみましょう。メイクや髪色さらに顔周りの小物を変えるだけで、いろんな色でも似合うようになります。自分では絶対に選ばなかった色、デザインにもチャレンジしてみると、それまで気づかなかったあなた自身の新たな魅力を発見できるはずです。
条件3:大人には大人のためのブランドがある
エストネーション時代、そしてパーソナルスタイリングを手がけている今も、たくさんの女性から「40歳ぐらいになると、今まで着ていた服が安っぽくて見え、全然すてきに見えないのよ」という声が聞こえてきます。
年齢を重ねるとともに体型が変わることも一因ですが、若い頃の洋服がだんだん似合わなくなってくるのには理由があるのです。「娘とサイズが同じなので洋服をシェアしています」「若い頃からのお気に入りブランドで洋服を買っています」という方もいらっしゃいますが、私は「それは間違っています」とお伝えしたいのです。
大人には大人のためのブランドがあります。40代になると20代、30代の頃と体型が変わります。サイズは同じでも、洋服に求めるフィット感も変わります。それらは若い世代をターゲットにしたスーツではかないません。大人には大人のブランドが存在します。同じブランドでも40代〜50代向けを展開している場合もあるので、ぜひお気に入りブランドに大人向けがあるかどうか調べてみてください。百貨店でいえば「キャリアフロア」や「ミセスフロア」。同じブランドのデザインでも、40代の体形に合わせたパターンや素材でつくられていることが多いため、同じ7号でも無理なく着ることができます。
若い世代向けのブランドを愛用していて7号が、9号になってしまうと「太った」とショックを受ける方もいらっしゃいますが、大人向けであれば、7号のままキレイに着られることがたくさんあるのです。
大人向けブランドを選ぶというとマイナスに捉える方もいるかもしれませんが、それは決して悪い意味ではなく、大人の体型に合っているということ。着心地がよく、動きやすくもなるので、キャリア女性にとっては“ストレスなく働ける”ことにつながります。
条件4:年収とポジションに見合うスーツの価格
キャリアを重ねると収入も上がり、出かける先やシーンも若い頃とは変わってきます。そんなときに、新入社員の頃と同じ素材、同じ価格帯のものを着ていると、ちぐはぐに見えてしまうもの。ご自分のキャリアと洋服のプライスのバランスは、見た目や印象にも影響するのだとぜひ知ってもらいたいですね。
「2万円のスーツではダメですか?」と尋ねられることもありますが、やはり、ご自身のポジションと年収に見合ったものを選ぶことが大切です。
年収とポジションはイコールであることがほとんど。例えば、給料が月額50万円だったらその20%の10万円前後のスーツがいいでしょう。
インナーはさらにスーツの価格の20%から30%で、2万円前後。靴やバッグはスーツの50%で5万円と考えるなど、目安を知っておくこといいでしょう。
【キャリア女性が知っておきたい、各アイテムの適正価格】
・スーツ=自身の月収の20%
・インナー=スーツ価格の20〜30%
・靴&バッグ=スーツの50%
月収に見合った価格のものを選ぶだけで、相手に与える印象もポジションに合ったものになります。高ければ高いほどいいというわけではありませんし、また、価格のバランスが合っていたとしても、必要以上に持つこともありません。セットアップでしか着られないようなスーツではなく、上下それぞれを単品で着回せるものをチョイスしていくと、限られた数でもいろんな印象に変化させられるので、手持ちが少なくて困ることはありません。
条件5:スーツは名刺代わり。服装T.P.O.を考える
コロナ禍により、在宅と出社が混在する働き方に変化しました。そんな時代なら「もうスーツは必要ないわ」という方もいらっしゃるかもしれません。でも、ポジションが上がるほど女性もスーツやジャケットを着用される方がほとんど。それに人と対面で会うことが貴重になった時代だからこそ、直接会うときこそきちんとした服装で会いたいと思う人も多いはずです。「今日この時間を大切にしたい」からこそ、自分らしい、そして相手からも「すてき」と感じてもらえるような、気持ちのいい印象を与えることが大切ではないでしょうか。
大人のためのきちんとしたブランドのジャケットやスカート、パンツは、大人女性の体をいかにキレイに見せるかが計算し尽くされています。体が入ったときのサイズ感やシルエットがきちんと考えられています。そうしたブランドで自分に合ったサイズのものを選ぶだけで、見た目の印象はグンと変わります。これからのキャリア女性は、仕事と同様に、1つのスーツを「どうしたらかっこよく着こなせるか」と考えることも必要ではないでしょうか。例えば、上下対で着るにはどんなシーンがあるのか、少しラフにするには何を合わせるのかを考えてみるだけで、コーディネートの幅が広がり、おしゃれに見せるヒントが見つかるのです。
ビジネス用のスーツだから、ビジネスでしか着ないのはもったいない。上下を変えるだけ、インナーを変えるだけ、小物を変えるだけスポーティーにも、もっとエレガントにもなるのです。これからの管理職には、そうした工夫も必要な気がします。
これまで、男性に負けないようにとバリバリ働くことがキャリア女性のイメージでしたが、今の時代に求められる女性管理職像は変化しています。後に続く女性たちに「長く働くことって楽しそう」「あんなにすてきなのに仕事ができる、おしゃれも楽しんでいる」と憧れの対象になることも期待されるでしょう。
おしゃれというのは、そのシーンに合った服装&ポジションに合ったものだと私は思います。よく「服装T.P.O.」といわれますが、ビジネスでも、そのシーンに合った服装をしている人が伝える言葉は、やはり重みがあるものです。
そういった意味でも、ファッションをうまく活用してほしいのです。スカートもパンツも選べるのは女性の特権であり、それは印象コントロールにおいては強みでもあるのです。
条件6:機能性がプラスされたものを選ぶ
最後にお伝えしたいのは、スーツやジャケットを選ぶ際には、見た目はもちろん、機能性やお手入れも考慮して選ぶようにするということ。素材やデザインによっては、腕が動かしにくいものもありますし、自分の体のラインを拾いすぎてしまうものもあります。また、「淡い色のジャケットは汚れが気になる」という人もいますが、今は自宅で簡単にケアできるものがあるので躊躇せずに着ることもできますね。
ビジネスの世界は、これまで男性を中心に考えられてきたので、男性のスーツには必ず搭載されていても、女性用にはなかなかなか備わっていない機能もありました。
例えば、内ポケット。女性だって、キャリアを積むほど講演や会合が増えるもの。スマホや名刺入れは必需品、常に携帯していたいものです。その際、ジャケットに内ポケットがあるととても役に立ちますよね。そうした機能をもつキャリア女性向けのスーツをぜひ選んでほしいです。