メールのやりとりを一発で終わらせられる人と何度も往復させる人の違いは何か。企業で業務改善のコンサルティングを行う岡田充弘さんは「メールを何度も往復させる人は、相手の疲弊に気づいていません。結果、口頭でやりとりしたほうが早かったということになりかねません」という――。

メールの書き方は誰も教えてくれない

仕事でLINEやチャットを使われる機会が増えてきたとはいえ、依然として多くの職場ではメールが併用されています。

エンジニアやIT関係者など一部の専門職をのぞけば、まだまだメールのやりとりの方が、非同期コミュニケーションにおける主流なのかもしれません。

一方で、メールの書き方について会社が懇切丁寧に教えてくれるケースは少なく、個人の裁量に委ねられている場合が実際のところではないでしょうか。

会社としてのメールの運用方針やテンプレートなどが無い場合には、当然ながら使う言葉や文章構成なども人それぞれになってしまいます。つまりそれは、コミュニケーション・デバイド(意思疎通の認識格差)を埋めるために、余計な時間コストがかかってしまうことを意味します。

メールを何度も往復させる人は、受け手の疲弊に気づいていない

なかには、一回のやりとりで済ませてくれたらいいのに、ちょっとした質問や補足事項でメールを何度も往復させてしまう人がいます。当然ながらメールは開くのにも、読むのにも、返信するのにも、それぞれ時間がかかります。したがって、メールの往復はできる限り少ない方が効率的、ということになります。

しかし、何度も往復させてしまう人は、受け手に対する想像力が欠如しているのか、相手が疲弊してしまっていることに気づきません。結果、口頭でやりとりした方が早かったんじゃないか、ということになってしまいます。

メールを何度も往復させる人は相手の疲弊に気づかない
図表=筆者作成

やりとりを何度も往復させてしまう人が持つ問題点は、「メールを一発で終わらせる人」が持つ特徴と表裏一体です。一発で終わらせる人はどんなメールを書いているのか、見ていきましょう。

メールを一発で終わらせる人は、物事を構造化して捉えている

「メールを一発で終わらせる人」が持つ特徴の一つが、物事を構造化して捉えていることです。

伝えたいことを俯瞰的に捉えて構造化することで、冗長さを排除し、伝達漏れを少なくすることができます。構造化の力を身につけるのに難しい訓練は不要で、次の2点を意識するだけでいいでしょう。

・MECE(漏れなくダブりの無い状態)を理解する

MECEはコンサルティング会社等で問題解決のために使わる基本概念ですが、情報を整理するのにも大変役立ちます。メールにおいても、より少ない文章で、より分かりやすく相手に伝えるために、この概念を理解しておいて損はないでしょう。実際MECEは、問題解決やメール(文章作成)以外にも、フォルダ整理やレポートの章立てに役立つなど、応用範囲も極めて広いです。

・伝えたいことに番号をつけて箇条書きしてみる

MECEを使って頭の中で伝えたいことが整理できたら、実際メール上に箇条書きで書き出してみましょう。その際、手順や予定など時系列に関わる内容であれば、頭に番号をつけておいてあげると、読み手にとってより親切なメールになるはずです。

メールを一発で終わらせる人が書く文面
図表=筆者作成

メールを一発で終わらせる人は、一歩先を読んで書いている

「メールを一発で終わらせる人」が持つ二つ目の特徴が、一歩先を読む力です。

今後の展開や相手が求めるものを先読みすることで、余計なメールの往復が減り、適切な情報をメールに書き込むことができます。逆に言うと、この先読みができない人は、いきあたりばったりで書いているため漏れが多く、そのため後から付け足さなければならなくなるのです。

メールを一発で終わらせる人は「1歩先」を読んでいる
図表=筆者作成

では先読みする力をどのように身につけるかですが、実はそれほど難しく考える必要はありません。送信ボタンを押す前に、「受け取った人はこのメールを見てどのようなアクションを起こすか」あるいは「起こしてほしいか」といった観点で、文面を見直す癖をつけるだけでいいのです。

その時にもし、これから起こる未来予想に対して補足すべき情報に気づけば、そっと付け足しておくことで、不毛なやりとりや相手の疑問を減らすことができるはずです。

メールを一発で終わらせる人は、ツールの使い分け方を知っている

「メールを一発で終わらせる人」が持つ三つ目の特徴が、ツールを使い分ける力です。

ツールとは、とりわけチャットや携帯電話と思ってもらっていいでしょう。相手に伝える内容によって、チャットや携帯電話とうまく使い分けることで、不毛なメールのやりとりを減らすことができます。

たとえば、「今着きました」などの待ち合わせ場所への到着連絡や、文中に使われている言葉の意味の確認など、メールで記録を残すほどのものでなければ、チャットや携帯電話を使った方が素早く目的を完遂でき、手間も最小限にすることができます。

逆に言うと「そこはチャットや直接電話すればいいんじゃない?」というものまで、メールでやりとりしている人がたまにいるので、そこは時間がもったいないなと感じます。

記録に残す必要があり緩やかな時間軸で往復させる場合はメール、ちょっとした確認や意思疎通など短い時間軸で往復させる場合はチャットや携帯、といった感じで日頃かツールの使い分けを意識してみてもらえればと思います。

メールを一発で終わらせる人はツールを使い分ける
図表=筆者作成

より効果的に、効率的に使う方法を模索していく

以上、「メールを何度も往復させる人」に対比する形で「メールを一発で終わらせる人」の特徴や意識すべきことについて解説してきました。近年チャットなど多様な簡易コミュニケーションツールが登場する中で、メールにかける時間が無視できないようになってきています。どうせ(メールが)無くならないのであれば、せめて運用面の工夫で負担を減らせたらと考えています。

これまで、大金をかけてシステムやインフラを導入しても、運用面の工夫や社員教育が不足していることで、その恩恵を十分に受けていないケースをたくさん見てきました。

ぜひ、日頃使い慣れたツールほど、より効率的に、より効果的に使えないか、といった観点で、自分なりの工夫を施してみてもらえればと思います。