どんなにファッションがカジュアル化してもスーツは必須
コロナ禍での在宅勤務の普及・急増は、オンとオフ、内と外の区別を明確に付けにくくした。また、家にいる時間が長くなる中、女性たちは「快適」「ラク」を求めるようになり、ますますファッションのカジュアル化は進んだ。
そうは言っても、ポジションが上がるほど、仕事とスーツやジャケットは、切っても切れない関係にある。
創刊以来、仕事の悩みからビジネスファッションに至るまで、働く女性たちの声に耳を傾けてきた編集部だからこそ、「スーツが必要」という当人たちの声を基に、満を持して「キャリア女性のためのお仕事スーツ」の開発に踏み切った。
ここでは企画が進行するなかで実施した、キャリア女性たちを交えての座談会や読者1000人へのアンケート調査で明らかになった働く女性の本音を公開する。
600を超える応募、1000人調査でリアルな声を集約
21年初秋。これまで取材した多くの働く女性たちから「男性のスーツと違い、女性用スーツには収納機能が少ない」「PTAのママさんぽく見えず、かつ女性らしいスーツが見つからない」などなど、スーツへの悩みを常に耳にしていたからだ。
コラボブランドの選定、どんな機能を盛り込むかを検討する中、ターゲットとなるキャリア女性たちが求めるスーツについてよりリアルな声を聞くため、22年春にオンライン座談会を開催した。参加者募集をしたところ、600人を超える応募が殺到。働く女性がいかにスーツの悩みを抱え、スーツに注目しているのかがうかがえた。
また、抽選からもれた人から後日、編集部にメールが届くほど、スーツへの熱き思いを抱えている女性が多いことも改めて実感することとなった。
キャリアを積むほど出番が多くなる「スーツ&ジャケット」
オンライン座談会に参加してくれたのは、いずれもマネジャーや部長、経営者の肩書を持つキャリア女性たち11人。彼女たちは、オンラインであれ対面であれ、ビジネスで人と対峙するときには、必ず、「スーツ」もしくは「ジャケット」を着用するという。
彼女たちにとって、スーツとは一体何なのか。単なる仕事服ではないと全員が口をそろえる。「ビジネスで自信を与えてくれるもの」(教育・代表)、「自分がめざすイメージに近づくための相棒」(アパレル・部長)、「第一印象をネガティブにしないための道具」(外資不動産・マネジャー)など、彼女たちにとって、スーツはよきビジネスパートナーであり、自分に自信をもたらすもの、さらに自分自身の印象をコントロールするための大切なアイテムであるという。
また、「お母さんモードからの切り替えスイッチ」(会計監査・マネジャー)、「オンとオフの切り替え」(会社経営)など、仕事とプライベートを切り替えるスイッチとしての役割も果たしているよう。
キャリアを積めば積むほど、ジャケットやスーツの出番が多くなり、さらに、世間一般で在宅ワークが普及しても、役職が上がるほど出社回数が増えるというのも、編集部が実施したさまざまな調査により判明している。
リモートワーク=カジュアルでいいわけではない
この数年でファッションがカジュアル化したのは、リモートワークの増加が一因として挙げられるが、そうした状況でも、スーツやジャケットを着用する機会がまったくなくなったわけではない。
これまで対面で行っていた打ち合わせや会議、講演や会合などが、オンラインに置き換わっただけで、「オンラインになったからといって、いきなり“リラックスウエア”にシフトしたり、“カジュアル”な服装をしたりするわけではない」(医療系・フリーコンサル)のだ。
もちろん、管理職でなくても、オンライン会議の際は、きちんとジャケットを着て、上半身だけでもオンモードに切り替えるという人は多数いる。
ファッション誌がつくる世界と現実の乖離
去る7月に編集部で行った、読者1000人への「働く女性たちのファッション意識調査」(実施期間:2022年6/30〜7/7 有効回答数:1017 有役職者:58% コア世代:40〜50代)では、ビジネスファッションに求めるものは、「変わらない」「あまり変わらない」と回答した人が、約60%にも上っている(図表1)。
また、アンケートでは「スーツをよく着用するか」どうかも質問。
「よく着る」「たまに着る」を合わせると38.3%と、4割近くの女性がビジネスではスーツを着用している。また、いわゆるセットアップのスーツではなくても、ジャケットをメインに、ボトムスを着回している人も多いことがわかった。
では、彼女たちが求めるスーツ(ジャケット)とは、どんなものなのだろうか。
以下は、22年春の座談会で上がった意見だ。
「出張が多いので、シワにならないもの。肩や腕の可動性のいいものがいい」(製薬・部長)、「顔うつりのいい、明るい色のスーツ」(団体・代表)、「ラインがくずれにくいものがいい」(外資不動産・マネジャー)など、求めるものはさまざまだが、「機能性」については、誰もがこだわりを持っている。
「ストレッチ素材」「自宅で洗える」「スマホや名刺入れなどを収納できる」など、実際にスーツを着用するからこそわかる、既存のスーツへのもの足りなさを吐露してくれた。
だからこそ、働く女性をターゲットにしたファッション誌が提案するビジネスファッションに違和感を抱く人は、37.5%(図表2)。
「本当に働いている女性の服装に見えない」(メーカー)、「カジュアルすぎる」(保険)、「異性の目を意識しすぎている」(IT)という、厳しい声がフリーアンサーで多く上げられた。
ポジションが上がるほど重要視するのは「女性らしさ」
現実と乖離した提案に踊らされることなく、自分の目で、自分の仕事(職種)に合うものを選びたいと考えるキャリア女性たちは多い。
彼女たちがスーツを着る理由は、ビジネスマナーはもちろんのこと、管理職にとっては、「肩書(役職)に負けないため」に自分を鼓舞するアイテムという意味合いもあるよう。だからといって、「男性並に働くための戦闘服」としてスーツを求めているわけではない。冒頭で記したように「女性らしさ」を表現するスーツを求める女性はここ数年格段に増えてきている。
こうした女性たちの本音を、『プレジデント ウーマン』本誌でもおなじみのイメージング・ディレクター・髙橋みどりさんは、こう分析する。
「今は、管理職=カッチリしたテーラードスーツというイメージは変わってきています。また、女性が働くことが当たり前の今、女性がより上位のポジションに就くことも一般的です。でも、女性は、役が上がれば上がるほど周囲から『怖そうに見られないだろうか』『偉そうと思われないだろうか』と、みなさんご自分の見え方に非常に悩んでいらっしゃる。だからこそ、女性らしくちょっとひと工夫あるスーツを好まれる方が多いですね。色味も紺やグレーなどではなく、ベージュや顔映りのいいやさしい色。何より、『女性だから楽しめる』デザインを取り入れる人も。仕事ができるのは当然ですが、男性のようにバリバリ働くというよりも、おしゃれでキレイな管理職のイメージを追求したいからではないでしょうか」
そこには、自分自身のイメージアップ以外も含まれてくるのが昨今の傾向のよう。
「スーツを選ぶ際、相手を常に意識します。自分と、自分が所属する企業への信頼性を高めたいから」(金融・マネジャー)など、ファッションに至るまで、所属企業と自分の関係性を強く意識する女性も増えてきている。
キャリア女性にとってのスーツとは、着る人自身の印象はもちろん、何よりも、着る人が所属する企業や、その人の役職までも200%サポートアップしてくれるものでなければならないようだ。
編集部では、2022年秋の発表に向け、こうした難題をいかにクリアするかを念頭に信頼のブランドとともに「理想のスーツ」の開発に取り組んでいる。お披露目の時まで、あと2カ月。乞うご期待を。