4月以降、電気やガスのようなインフラから、食品や日用品まであらゆるものの値上げが始まっています。なにもしなければ支出がただただ増えることになりかねません。マネーコンサルタントの頼藤太希さんは「値上げラッシュを乗り切る節約術」を教えてくれました――。
食料品価格の急騰のイメージ
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資源高、原価高にウクライナ侵攻…環境悪化で値上げ止まらず

資源価格や材料費の高騰、輸送コストの上昇、円安、新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻……。これらの影響が今、「値上げラッシュ」の形で家計を直撃しています。支出が増えたことを実感している方も多いでしょう。

そこで今回は、値上げラッシュを乗り切る節約術を紹介します。1つでも取り入れて実践し、値上げラッシュを乗り切りましょう。

年間4万2568円の支出増になる予測

モノやサービスの価格が上がり、お金の価値が下がるインフレ(インフレーション)には、好景気・需要増で起こるインフレ(ディマンドプルインフレ)と、コスト上昇で起こるインフレ(コストプッシュインフレ)の2つがあります。

このところのインフレは後者のインフレになります。商品を作るためのコストが上がった分を、企業が商品価格の値上げによって回収しようとするために発生しているのです。

ソニー損害保険の調査によると、各種値上げへの対策をしない場合、2021年と比べて家庭の支出は平均で年間4万2568円増加するという予想が出ています。

値上げラッシュは、食品、日用品、サービスにいたるまで、あらゆる分野で起こっています。その一例を紹介します(以下データは2022年5月24日調査時点のものです)。

こんなにも上がった! 日常生活を脅かすインフレの影響

電気代

日本の電力の大部分は火力発電です。燃料価格が高騰すると、電気代に反映されます。東京電力の場合、2022年6月の一般的な家庭(平均モデル)の電気代は8565円。1年前の2021年6月は6913円でしたので、1年間で1652円上昇しています。

ガス代

ガス代は原料費の変動によって料金が変動する「原料費調整制度」によって、料金が毎月調整されます。東京ガスの場合(東京地区等)、2022年6月の標準家庭のガス代は5808円。こちらも、1年前の2021年6月は4697円でしたので、1年間で1111円上昇。なお、大手ガス会社のガス代は10カ月連続で上昇中です。

水道代

水道代は地域差が比較的大きく、値上がりしていない地域も多くあります。しかし、たとえば神奈川県横浜市は2021年7月より平均12%値上げ。群馬県前橋市では2022年4月より平均17%の値上げで、2025年4月からはさらに平均4%の値上げとなり、合計21.7%の値上げを予定しています。人口減少による料金収入の悪化、老朽化した設備の更新が値上げの理由として挙げられています。

ガソリン代

政府が補助金を支給したガソリン代も値上がりが続きます。経済産業省資源エネルギー庁「給油所小売価格調査」によると、2022年5月16日のレギュラーガソリンの小売価格の全国平均はリッター170.4円となっています。1年前(2021年5月17日)は151.8円、2年前(2020年5月18日)は125.5円でしたので、この2年でおよそ36%も値上がりしています。

燃料費
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通信費

近年毎年上昇してきたスマホ代は、大手3キャリアの格安プランやサブブランドの登場により抑えられるようになってきました。しかし、データ通信量1GBまで基本料金0円で利用できると話題になった楽天モバイルが0円プランの終了を発表。2022年7月からは、これまで0円で利用してきた方も1078円(3GBまで)の基本料金が発生します。

日用品

「クリネックス」ブランドの日本製紙クレシアはフェイシャルティシュー・トイレットロール・ペーパータオルなどの家庭紙製品を2022年4月1日より10%以上値上げ。「エリエール」の大王製紙も同様の家庭紙製品を2022年3月22日より15%以上値上げしています。さらに花王も2022年4月1日より紙おむつの「メリーズ」「メリーズパンツ」を約10%値上げしました。

食品・日用品も大打撃

食料・お菓子・飲料品

食料品の値上げは実に多岐にわたります。

たとえば、日清製粉ウェルナでは2022年1月4日より小麦粉・ミックス・パン粉製品を3〜6%値上げ。2月からは乾麺やパスタソース製品も3〜9%値上げしています。また伊藤ハムでも2022年3月よりハム・ソーセージなどを4〜12%、麺類を4〜14%値上げしました。

カルビーでは2022年以降ポテトチップスの価格を7〜10%引き上げるほか、「じゃがりこ」などの内容量を減らしています。

さらにサントリーも2022年10月1日よりペットボトル・ボトル缶商品のメーカー希望小売価格を6〜20%アップすると発表しています。

外食

外食産業も値上げラッシュです。

松屋は2022年5月2日より「牛めし」などの価格改定を実施。並盛・大盛の価格は据え置かれたものの、小盛で20円、特盛で30円値上げしています。

ケンタッキーフライドチキンも2022年6月以降商品を値上げ。「オリジナルチキン」が250円から260円に10円値上がりするほか、その他の商品も軒並み数十円程度値上がりします。

またスシローでも2022年10月以降、郊外型の店舗で1皿あたり「110円」「165円」「330円」の寿司を「120円」「180円」「360円」に値上げします。

配送料

メルカリの配送サービス「らくらくメルカリ便」「ゆうゆうメルカリ便」も2022年6月15日より値上げ。配送物のサイズにより値上げの幅は異なりますが、1通あたり15〜150円程度の値上げとなっています。

生活を守るために節約を実践しよう

商品が値上がりしても、それ以上に収入が増えればいいのですが、収入はなかなか上がらないのが現実です。それに、仮に収入が増やせても税金や社会保険料がかかるため、思ったより手取りは増えません。これでは家計は苦しくなる一方です。

こんな時代に家計運営をしていくためには、「節約」が欠かせません。節約は工夫次第ですぐに効果が出ます。しかも、節約で支出を減らせば、その分だけ使えるお金が増やせます。ですから、生活を守るために節約を実践しましょう。以下、費目別に具体的な節約対策を紹介します。

上がった費用を取り返す簡単にできる節約あれこれ

電気代・ガス代

電気代は、電力会社を変えるだけで減らせる場合があります。おすすめは、電気とガスを同じ会社から購入する「セット割」を活用することです。

たとえば東京ガス「基本プラン・ずっとも電気3」の場合、戸建て3人世帯で年1万200円の電気・ガス代の節約につながります(新規申込時の電気代基本料金3カ月無料を含む)。また、関西電力「なっとくパック」でも同様で、電気・ガスの同時契約で年1万500円の節約につながります。

電気代は契約アンペアを下げることで基本料金を下げることが可能。東京電力の場合、契約アンペアが50Aだと月1430円ですが、40Aにすると月1144円ですので、毎月286円・年3432円の節約が可能。さらに、30Aにすれば月858円となるので、50Aのときよりも毎月572円・年6864円の節約ができます。ただし、アンペアを下げすぎると今度はブレーカーが落ちやすくなるので、普段の電力利用状況を基に判断しましょう。

また、次のようなちょっとした努力でも節約ができます。

・追い焚きをしない:年6880円
・使っていない電化製品のプラグを抜く:年6156円
・電気ポットで保温しない:年2900円
・電球をLEDランプに取り替える:年2430円
・お湯で食器を洗うときは低温で:年1580円

以上参考:資源エネルギー庁「家庭の省エネ徹底ガイド春夏秋冬

水道代

水道代の節約にはシャワーヘッドを「節水シャワーヘッド」に取り替えたり、蛇口に「節水コマ」を取り付けたりするのがおすすめ。どちらも、取り付けて使用するだけで自然と節水が可能。水道代の単価にもよりますが、年5000〜1万円程度の節約ができます。

また、意外と優秀なのが食器洗い乾燥機。食器洗いの手間を減らすと同時に、手洗いの場合より年約8870円節約できます。

洗濯物はまとめ洗いすることで年約3980円、シャワーの時間を1日1分短縮する(流しっぱなしにしない)ことで年約3300円の節約につながります。

以上参考: 資源エネルギー庁「家庭の省エネ徹底ガイド春夏秋冬

まだまだ減らせる! ガソリン代・通信費

ガソリン代

車に乗るなら、ランニングコストとなるガソリン代はなるべく減らしたいところ。給油の際には、ガソリン代の決済に使うとお得な「石油系」のクレカを活用しましょう。たとえば「ENEOSカード C」ならば毎月のカード利用金額に応じてENEOSでのガソリン・軽油が最大でリッター7円引きに。仮に毎月50リットル給油したら、ガソリン代が年4200円安くなります。

また、「apollostation card」では出光でのガソリン・軽油がいつでもリッター2円引きにできるうえ、有料サービスの「ねびきプラスサービス」ならカードの利用状況に応じて最大でリッター10円の割引を受けることもできます。

また、ガソリン代は車の使い方・走り方でも変わってきます。

・ガソリンは満タンにしない、荷物を積みすぎない(重量を軽くしたほうが燃費はいい)
・給油はセルフサービスのガソリンスタンドを利用する
・急発進/急加速/急停車しない
・タイヤの空気圧を適正にする
・エアコンを使いすぎない
・エンジンオイルを定期的に交換する
・最短ルートで運転する

といったことも大切です。ぜひ実践してみてください

通信費

スマホは、もし大手キャリアを利用しているのであれば、格安プランや格安スマホに切り替えることで月3000〜5000円程度の節約が可能ですので、ぜひ乗り換えを検討しましょう。家族で一気に乗り換えたら、それだけで年数万円以上の節約につながります。

UQモバイルなら、くりこしプラン+5Gでは、月1628円(S・3GB)と安価なうえ、使わなかった容量を翌月に繰越すことができます。

また、楽天モバイルは料金改定後も月1078円(3GB)〜と安いのですが、無料で利用したいならば基本料金無料のpovo2.0も選択肢に。Wi-Fiの使えるエリアであれば格安で利用できますし、外で利用する場合にはデータ量・通話・コンテンツなどの「トッピング」を購入することで快適に使えます(ただし、トッピングの有効期限の切れた翌日から180日間トッピングの購入がない場合は利用停止になる点には注意)。

「お得」に惑わされるな まとめ買いに注意

日用品・食費・外食

日用品や食材はどうしても買わなくてはならないものでしょう。それだけに、買い物のしかたには気をつけたいところです。

特に危ないのが「まとめ買い」。大容量で単価が安かったとしても、使いきれないとかえって損になってしまうからです。人気のコストコも楽しいのはわかるのですが、普段買わない食材を大量に買い込むと使いきれずに損しますし、使い切ろうとして無理すると、今度は太る原因になってしまいます。必要なものを、必要な分だけ購入するには、買い物リストを作るのが有効です。家の在庫を把握しておき、何を買うかをはっきりさせておけば、余計に買ってしまうことを防げます。

また、スーパーのプライベートブランドの中には、値上げしないことを宣言しているところも。イオンの「トップバリュ」の食料品・日用品約5000品目や、西友の「みなさまのお墨付き」約1250品目などは2022年6月30日まで値上げしないと発表しています。

たとえば、トップバリュの「北海道バター」(200g)の本体価格は税込354円なのに対し、雪印の「北海道バター」(200g)は税込442円ですので、トップバリュの方が88円安いです。トップバリュの「キッチンタオル2倍巻」(100カット×4ロール)は税込305円、ネピアの「激吸収キッチンタオル2倍巻」(100カット×4ロール)は税込398円。トップバリュの方が93円安くなっています。

もちろん、細かな商品の違いはありますし、今後値上げになる可能性もあります。しかし、より安い商品を選ぶことで節約が進みます。

アプリやクーポンの使用で生活に差がつく

各スーパーのスマホのアプリなどに配信されるさまざまな割引クーポンもぜひ活用しましょう。たとえ数十円の節約であっても、回数が増えれば増えるほど、使わない人との差は確実に開いていきます。

ポイントがお得になる日や、割引になる日を選んで買い物するのも有効。前述のイオンであれば、

・毎月5日・15日・25日 お客さまわくわくデー(ポイント2倍)
・毎月10日 ありが10デー(ポイント5倍)
・毎月20日・30日 お客さま感謝デー(5%オフ)

などと決まっています。ただし、お得だからといって買い物しすぎては本末転倒ですので、無駄遣いには気をつけましょう。

日々の買い物の際に、クレジットカードとスマホ決済をひも付けたり、ポイントカードを提示したりすることで「ポイント二重取り・三重取り」を活用できる場合もあります。

たとえばドコモのクレジットカードの「dカード」・スマホ決済の「d払い」・ポイントカードの「dポイントカード」を

・d払いの支払い方法にdカードを設定 1%
・dポイントカードの提示 1%
・d払いでの支払い 0.5%

と組み合わせて利用することで、合計で2.5%のdポイントがもらえる「三重取り」が可能です(d払いとdポイントに対応した店舗の場合)。

さらに、株主優待で食べ物や日用品などがもらえる銘柄を購入したり、ふるさと納税で普段使いの食品や日用品がもらえる自治体に寄付したりすることでも、生活費を削減できます。こうして節約できたお金は使ってしまうのではなく、貯蓄や投資に回していきましょう。

外食はどうしても割高になってしまいます。いきなりすべてカットするのは難しいとしても、外食の日を少なくするなど、メリハリをうまくつけて減らしていくようにしましょう。

値上げラッシュがいつまで続くかはわかりません。ただ、インフレは世界的な傾向であること、新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻などの収束がまだ見えないことを考えると、今後も値上げラッシュが続くと考えるのが自然です。

今回ご紹介した節約術をひとつでも取り入れて節約を進め、値上げラッシュを乗り越えていきましょう。