マイホームを購入して、人生が豊かになる人と、不幸になる人の違いは何でしょうか。ファイナンシャルプランナーの藤川太さんは「お金が貯まる人は、この価格で『買うのか』『買わないのか』を判断しますが、一般の人は『買えるか』『買えないか』を考え、値引き交渉をせずに購入してしまう」といいます――。
モダンな一軒家
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マイホーム購入で不幸になる人の「間違った買い方」とは

マイホームの購入は多くの人にとって夢であり、人生の大きなイベントです。最近は「生涯賃貸派」という人も増えてきましたが、「いずれは購入したい」と考えている人が圧倒的に多いことに変わりはありません。

ただ、マイホームを手に入れたことで、人生が豊かになる人と、不幸になる人がいます。マイホームの購入はそれだけライフプランに大きな影響を与えてしまうのです。

夢のマイホームを手に入れたにもかかわらず、なぜ不幸になってしまう人がいるのでしょうか。それは買い方に問題があるからです。失敗する人の多くは、感情で動いてしまい購入判断に合理性が欠けています。物件に一目ぼれして購入まで突き進んでしまうケースが多いのです。

実際にどんなケースがあるのか、私が相談を受けた典型的な2つのケースを紹介しましょう。

数千万円の買い物を衝動買いしてしまう

1つ目は衝動買いしてしまったケースです。Aさんはある日、近所を散歩していました。すると、販売中の新築一戸建て住宅に目が留まりました。近づいてみると、すかさず営業マンが飛び出してきて、「見学するだけでもどうですか?」と勧めてきます。

Aさんも「いつかはマイホームを購入したい」と考えていましたから、「見学だけなら」と応じてしまいます。中に入ると、一気に心を奪われてしまいました。真新しい家は、現在住んでいる2DKのアパートとは天と地の差があります。

子どもが大きくなれば子ども部屋も必要です。Aさんは見学しながら「この物件を買ったら、この部屋は自分自身の仕事部屋に、こちらの部屋は子ども部屋に――と、夢が広がっていきました。

一通り見学が終わると、営業マンが「住宅ローンのシミュレーションだけでもしてみませんか?」と提案してきます。すでに物件に一目ぼれしていたAさんは、年収や勤務先などの情報を伝え、シミュレーションを依頼しました。しばらくして営業マンがいいました。

「Aさんなら、頭金が少なくても住宅ローンを上手に活用すれば、十分にこの物件をご購入いただけますよ。毎月の返済はこれだけになります」

営業マンに「購入できる」と言われて、Aさんの気持ちは一気に前のめりになりました。いまの家賃と比較すると、負担は上がってしまいますが、「なんとかなりそうな気がする」と考えました。

マイホームは「買えるかどうか」で選んではいけない

結果、Aさんはこの物件を衝動買いしてしまったのです。Aさんの最大の失敗は、買えるかどうかで判断してしまったことです。まったく比較もせずに、「住宅ローンが借りられたから」との理由で買ってしまったのです。

住宅ローンが借りられたとしても、20年、30年と無理なく支払いを続けられるかは別問題です。住宅ローンを「借りられる」と「返せる」とはまったく違うのです。Aさんのように数千万円もするマイホームの購入にもかかわらず、偶然の出会いに運命を感じて衝動買いをしてしまう人がいます。

このような人には貧乏神が住みついている可能性があります。貧乏神は「比較検討しない人」が好きです。何年もかけて数十軒を見て回って比較検討した人でさえ失敗することがあるのですから、何も検討せず衝動買いしているようでは「失敗して当たり前」と考えた方がいいでしょう。

家族が盛り上がって後戻りできなくなる

2つ目は周囲に追い込まれて後戻りができなくなってしまったケースです。これもよくあるパターンです。

Bさんは、妻が気に入った物件に不安を持っていました。冷静に判断すると物件価格は周辺相場より高く、住宅ローンの返済が不安だったのです。しかし、盛り上がっているのでは妻だけでなく、妻の両親も一緒になって物件を見学に行くほどです。

しかも「娘がマイホームを購入するなら」と資金援助の話まで飛び出しています。「この物件は高いからやめとこう」と言える雰囲気ではないのです。

家計診断をしてみると、子どもの教育費負担が始まる頃には家計が破綻する可能性が高そうでした。両親が支えてくれればいいのですが、資金援助は購入時の1回だけのようです。あとは給料が上がることを願うだけです。Bさんがその後どうしたかはわかりませんが、仮に購入をしていれば、相当に厳しい家計状況に追い込まれたでしょう。

住宅ローンの計算をする人の手元
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お金持ちは感情ではなく合理的な方法で判断する

一方で資産1億円を持つようなお金持ちは、感情に左右されることはありません。不動産投資の経験があることも多いのでマイホーム購入に際しても、明確な相場観を持っています。そして、周辺の相場より高いと感じたら値引き交渉をします。もし、希望の価格にならなければ買いません。

お金持ちはこの価格で「買うのか」「買わないのか」を判断しますが、一般の人は物件価格を見て、「買えるか」「買えないか」を考えてしまいます。「買える」と判断すれば、値引き交渉もせず買ってしまうのです。

しかし、中古物件はもちろんのこと、新築物件でも価格交渉が可能なケースは少なくありません。一般の人はそれを知らないことも多いので、値引き交渉をしません。また、一般の人は、この物件を逃したら二度とチャンスがないのではないかと思ってしまいます。しかし、お金持ちは経験値が高いので、そんなことはないことを理解しています。

お金持ちは古い物件でも躊躇しない

経験値が高いことは不動産購入において大きな強みです。お金持ちは古い物件でも躊躇しません。購入後にリノベーションを実施すれば見違えるようになることを知っているからです。

あるいは、一般の人の場合、住宅ローン破綻で任意売却されるような訳あり物件に抵抗感がある人が多いでしょう。縁起が悪いと考えてしまうからです。お金持ちはそんなことは気にしません。物件の価値と価格が見合っていれば、検討の対象となります。

実際にお金持ちが物件の価値をどう判断しているのか、一例を紹介しましょう。お金持ちには、大きく分けて節約家タイプ、投資家タイプ、高収入タイプの3つのタイプがあることは何度か紹介しました。

このうち投資家タイプには、賃貸派が多くいます。消費よりも投資を優先したいと考えているので、マイホームに夢や幻想を抱いていないのです。仮にマイホームを購入する場合でも、投資対象と考えて買うか買わないかを判断しています。

物件の価格が妥当かどうか判断できる収益還元法

不動産の価値を判断する方法にはいくつかありますが、投資家タイプのお金持ちでは収益還元法と呼ばれる手法で考える人に多く出会います。この基準は一般の人がマイホームを購入で失敗しないためにも役立ちます。

具体的にいうとこれは、対象の不動産を賃貸に出した場合にどれくらいの家賃が得られるかを判断し、物件価格との兼ね合いから利回りを計算する方法です。これを計算式にすると次のようになります。

<不動産の利回りの計算方法>
利回り(%)=月額家賃×12カ月÷物件価格×100

たとえば、5000万円のマイホームを検討するとしましょう。この物件を仮に賃貸に出した場合、月額20万円の家賃が得られるとすると、

利回り(%)=20万円×12カ月÷5000万円×100=4.8%

投資家タイプのお金持ちはこの利回りで物件が割安かどうかを判断するのです。居住用の物件であれば、利回りは一般的に3~5%になるのが相場です。投資家タイプは一般的な利回りでは魅力がないので、その物件を買う気にはならず、借りた方が得と考えるのです。

であれば、他人に貸すための投資用物件を買います。賃貸用の不動産は居住用不動産と比べてはるかに高利回りです。居住用の物件の価格にはプレミアムが加算されて割高に販売されているのです。

マイホーム購入で失敗しないために最も効果的な方法

投資家タイプのお金持ちでなくても、マイホームの購入を検討する際には、収益還元法で利回りを計算して、物件が割安か割高かを判断するといいでしょう。不動産会社のサイトをチェックすれば周辺の賃貸物件が掲載されているでしょうから、おおよその賃貸相場は判断できるはずです。

それを基に利回りを計算してみて、5%を下回るようなら割高といえるでしょう。その場合には利回りが5%以上になる物件価格を逆算して値引き交渉するのがいいでしょう。値引き交渉をするにしても、明確な基準がないと交渉力も弱くなってしまいます。「この価格でなければ買わない」という基準を決めて臨めば、営業マンを説得する力も強くなるでしょう。また、価格が高騰している時期に購入して、高値を掴むリスクも小さくなります。

マイホーム購入で失敗しないためには、とにかく経験値を高めるのが有効です。といっても、何軒も購入することは難しいので、購入前にできるだけたくさんの物件を見るといいでしょう。その経験がとても役立つはずです。私がマイホームを購入する際にも、数十軒を見学し比較検討して利回りが5%以上になった時期に決めました。ぜひ実践してください。