早期リタイアを目指す「FIRE」にあこがれている人が増えてきました。早期リタイアには、生活費の節約が大切。マネーコンサルタントの頼藤太希さんに、生活費が抑えられる「おすすめ優待株10選」を伝授してもらいました――。
硬貨とパソコン
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配当利回り・優待利回りだけにとらわれるのは危険

株式投資で得られる利益には、大きく分けて、購入した株の「値上がり益」、会社から株主に支払われる「配当」、株主に贈られるプレゼントのような「株主優待」の3種類があります。FIREでは不労所得を増やすことを目指すのですから、銘柄も自然と配当を重視して選ぶことになるでしょう。

配当は、会社が得た利益の一部を株主に支払うこと。会社は株主に、事業がうまくいったときのお礼として利益を還元しています。国内の会社の場合、配当は年1~2回行うのが一般的です(利益があっても配当を行わない会社もあります)。値上がり益は購入した株を売却して受け取ったらそれでおしまいですが、配当は配当を行う会社の株を持っているだけで定期的に受け取れます。

購入時の株価に対して、1年間にもらえる配当金の金額を示す指標に「配当利回り」があります。計算式で表すと「1株あたりの配当金÷株価×100(%)」となります。配当利回りが高いほど、投資した金額のわりに配当金をたくさんもらえることを表します。

業績が悪いのに配当を出す企業の末路

こう紹介すると、「FIREを目指すなら配当利回りの高い銘柄を買えばいいのか」と思われる方もいるでしょう。しかし、そうならばわかりやすいのですが、配当利回りだけにとらわれるのは危険です。なぜなら、業績が悪くても配当を出す会社があるからです。

配当利回りの式には「株価」が入っています。業績が悪く、株価が下がっているにもかかわらず、配当を出し続けていると、見かけの配当利回りは上昇します。配当利回りが高くなると、投資家たちも「配当利回りのわりにお買い得」と、その株を購入するかもしれません。

しかし、配当は本来利益の一部を還元することなのですから、業績が悪いと配当ができなくなっていきます。いずれ配当を出すことが厳しくなると、配当金の金額を減らす「減配」や配当そのものをやめる「無配」を行います。すると、その後は得られる配当金が少なくなったり、なくなったりしてしまいます。これでは、安心してFIREなどできません。

さらに、減配や無配は投資家にとって明らかにバッドニュースですから、株価を大きく押し下げる要因になり得ます。こうして、配当だけでなく株価の下落でも大きく損失を抱えてしまう可能性があるのです。

そして、配当だけに限らず優待利回りで考えるのも同様の理由で危険です。

業績が悪くなったら、配当を減らすよりも真っ先に株主優待を改悪したり、なくしたりする方向に会社は動くと考えるべきです。

ですから、配当利回り・優待利回りだけにとらわれて投資先を選ぶのはやめましょう。

FIREに向いた銘柄を選ぶポイント

では、FIREに向いた銘柄は、どのように選べばいいのでしょうか。銘柄選びのポイントを3つ紹介します。

●FIREに向いた銘柄を選ぶポイント1:業績が右肩上がりになっているかは絶対

会社の業績、特に売上(商品やサービスを売って稼いだお金)と営業利益(本業で得られた利益)をチェック。右肩上がりで増えている会社を選びましょう。業績が右肩上がりになっていれば、株価が上昇する期待ができますし、早晩に配当金や優待が減る(なくなる)ということも少ないと判断できます。

●FIREに向いた銘柄を選ぶポイント2:10年後、20年後も必要とされそうな業界か

今はやりの業界ではなく、10年後、20年後といった長期的な期間で見て必要であり続けそうな業界を選びましょう。長く必要であり続ける業界ということは、それだけ長く成長を続ける業界ということですから、多くの人が注目を続けます。ですから、投資したお金が一気になくなるリスクを抑えることができるでしょう。たとえば、これから時代が進んでも、健康、美容、介護、セキュリティーなどの分野は必要であり続けるでしょう。

●FIREに向いた銘柄を選ぶポイント3:連続増配しているか

増配とは、配当金の金額を増やすことです。増配をするには、その分多く利益を稼ぐ必要があります。増配をするということは、着実に利益を積み増している会社だと判断できます。また、市場はときおり暴落するものです。記憶に新しいところでいうと、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックでは、株価が一時的に大きく下落しました。

しかし中には、そうした市場環境だったにもかかわらず増配を続けている会社もあります。たとえば、花王、SPK、ユニ・チャームといった会社が挙げられます。そうした会社を選んでいれば、減配や無配になる心配が少ないといえるでしょう。

ビジネス新聞
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配当も優待の品も役立つおすすめ優待株10選

FIREでは、不労所得をつくるだけでなく、生活費を節約することも大切。生活費を節約できれば、FIREに必要な資産の額も減り、FIREの達成も近づきます。株主優待で食品や日用品など、生活に役立つ品を受け取れば、それらを買うお金を節約できるでしょう。FIREの達成後も、株主優待が受け取れればうれしいものです。

そこでここからは、生活費の削減に役立つ株主優待銘柄を10銘柄紹介します。なお、以下の情報は2022年1月13日時点のデータを基に作成しております。また、株主優待の内容は断りのない限り100株保有で手に入るものとなっています(なお、株主優待は変更・中止になる場合がありますので、詳しくは各社のウェブサイトでご確認ください)。

食品部門・株主優待の推し銘柄3選

●食品
①カゴメ(2811)
優待内容:2000円相当の自社製品の詰め合わせ
(トマトソース、トマトケチャップ、ジュース「野菜生活」など)
権利確定日:6月末
株価:3025円(2022年1月13日終値)
配当利回り:1.22%
優待利回り:0.66%
配当+優待利回り:1.88%
②キユーピー(2809)
優待内容:1000円相当の自社製品 
(マヨネーズ「キユーピーハーフ」・ドレッシングなど)
※要継続保有期間半年以上・3年以上継続保有で1500円相当にグレードアップ
権利確定日:11月末
株価:2296円(2022年1月13日終値)
配当利回り:2.05%
優待利回り:0.44%
配当+優待利回り:2.49%
③味の素(2802)
優待内容:味の素グループ製品詰め合わせセット1500円相当
(スープ「クノールカップスープ」、コーヒー「マキシム」など)
※要継続保有期間半年以上
権利確定日:3月末
株価:3453円(2022年1月13日終値)
配当利回り:1.39%
優待利回り:0.43%
配当+優待利回り:1.82%

水もポカリも株主優待でゲット

●飲料
④TOKAIホールディングス(3167)
優待内容:水(年2回)ほか
(うるのん「富士の天然水さらり」500mlボトル×12本など)
権利確定日:3月末・9月末
株価:876円(2022年1月13日終値)
配当利回り:3.42%
優待利回り:-
配当+優待利回り:-
⑤大塚ホールディングス(4578)
優待内容:3000円相当の当社グループ製品
(オロナミンC、ファイブミニ、ポカリスエット、レトルトの食品など)
権利確定日:12月末
株価:4224円(2022年1月13日終値)
配当利回り:2.37%
優待利回り:0.71%
配当+優待利回り:3.08%

トイレットペーパーも株主優待で手に入れられる

●日用品
⑥日本製紙(3863)
優待内容:家庭用品詰め合わせ1セット
(トイレットペーパー「スコッティ」・ティッシュペーパー「クリネックス」など)
権利確定日:3月末
株価:1166円(2022年1月13日終値)
配当利回り:3.43%
優待利回り:-
配当+優待利回り:-
⑦ライオン(4912)
優待内容:新製品を中心とした自社製品詰め合わせ
(ハミガキ「システマ」、ボディーソープ「hadakara」、柔軟剤「ソフラン」など)
権利確定日:12月末
株価:1523円(2022年1月13日終値)
配当利回り:1.58%
優待利回り:-
配当+優待利回り:-

⑧エステー(4951)
優待内容:1000円相当の自社製品詰め合わせ
※100株保有でもらえるのは3月のみ
(消臭剤「消臭力」「備長炭ドライペット くつ用」など)
権利確定日:3月末、9月末
株価:1533円(2022年1月13日終値)
配当利回り:2.48%
優待利回り:0.65%
配当+優待利回り:3.13%

株主になって買い物もお得に!

●カタログギフト
⑨オリックス(8591)
優待内容:ふるさと優待(カタログギフト)
※100株以上3年以上保有でグレードアップ
株主カード(オリックスグループのサービスを割引価格で利用可)
権利確定日:3月末(カタログギフトと株主カード)・9月末(株主カード)
株価:2556.5円(2022年1月13日終値)
配当利回り:3.05%
優待利回り:-
配当+優待利回り:-
●買い物
⑩イオン(8267)
優待内容:株主優待カード・キャッシュバック制度(年2回)
〔買い物時に提示で後日3%キャッシュバック(半期ごとに100万円まで)〕
一部サービスの優待料金適用
権利確定日:2月末・8月末
株価:2480.5円(2022年1月13日終値)
配当利回り:1.45%
優待利回り:-
配当+優待利回り:-

配当・株主優待を手に入れるには?

配当や株主優待は、「権利確定日」の2営業日前(権利付き最終日)までに該当の銘柄を購入し、保有しておく必要があります。権利確定日は銘柄によって異なります。

権利付き最終日のイメージ
筆者作成

上の図のように、ある銘柄の権利確定日が31日(火)だったとします。このとき、権利付き最終日はその2営業日前の27日(金)。この日までに株を買ってそのまま保有していれば、配当金・株主優待を受け取る権利が手に入ります。土日祝は「営業日」ではないので要注意。実際には、配当金や株主優待は2カ月~3カ月後に届きますので、楽しみに待ちましょう。なお、翌営業日の30日(月)は「権利落ち日」。この日に株を売ったとしても、配当金や株主優待はもらえます。

配当も株主優待にも「絶対」はない

配当も株主優待も必ずもらえるものではありません。業績が悪くなると、会社は減配をしたり、株主優待の内容を減らしたり、なくしたりすることがあります。投資家からはよく「改悪された」という声が聞かれます。株主優待の改悪を発表したことによって、株価が下落するという事態も往々にしてあるのです。

業績が右肩上がりか、将来にわたって必要とされる業界なのかを確認して投資するようにしましょう。