新規上場銘柄を狙うIPO株投資。抽選に当たれば勝率9割といわれるが、なぜか負けることが多いファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんが「残念な真実」を暴露する——。
IPOと表示されたスマホが木製テーブルに置かれている
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IPO投資は9割が儲かる投資

IPO投資とは、新規公開株投資のことをいいます。新規に公開される(市場に上場する)株式を、事前に公募価格で入手して、一般には、上場して初値が付いた直後に売却する投資法のことです。

上場時に初めて取引が成立する株価を初値といいますが、これが公募価格を大きく上回るケースが多く、今、IPO投資は非常に注目されています。

最近のIPO銘柄でいうと、たとえば2021年12月21日上場の「ラバブルマーケティンググループ」の初値は4845円。その公募価格は1260円だったので、最低取引単位の100株でも約36万円の儲けとなりました。

また、同年12月10日上場の「フレクト」は、公募価格2550円に対して初値5810円と、32万6000円の儲けとなっています。

初値は公募価格の2倍になるのが一般的

アベノミクス以降、堅調な株式相場を背景に、ここ数年、IPO投資で儲かる(公募価格が初値を上回る)確率は8~9割程度。しかも、初値は公募価格の平均2倍程度(金額にして平均10万円以上)と、上場前に公募価格で入手できれば、大きく儲かる可能性が高いのです。

しかし、事前に公募価格で入手することが、今、極めて難しいのです。

相当な大口優良顧客であれば、証券会社の計らいで特別に入手できることもあるそうですが、それは極めてレアなケースで、一般には抽選となります。当然私も、抽選組の一人です。お目当てのIPO銘柄を取り扱っている証券会社に申し込み、あとは運頼み。その倍率は数百倍とも数千倍とも言われており、まさに宝くじ状態なのです。

IPO株が「無料の宝くじ」と言われる理由

ただ、当選すれば大きく儲かる可能性が高く、また、抽選申し込みは無料なことから(購入資金は用意しておく必要はあるが、抽選時には資金不要の証券会社もある)、IPO投資は「無料の宝くじ」とも言われます。

ちなみに、ここ数年のIPO件数は、年間100件弱程度です。2021年は14年ぶりに100件を超えました。

一般にIPO銘柄は、複数の証券会社で取り扱っており、同じ銘柄でも、証券会社ごとでの抽選となります。

ライトブルーのダーツが的に当たっている
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つまりチャンスは多く、とにかく手数が勝負なのです。すなわち、できるだけ多くのIPO銘柄に、できるだけ多くの証券会社から申し込み、少しでも当選確率を上げること、そんな愚直な努力こそが、IPO投資の秘訣なのです。特別な知識・技術は必要ありません。面白くもなんともない、ただただ単調な面倒な作業ではありますが。

そして私自身、ほぼすべてのIPO銘柄に、申し込み可能なほぼすべての証券会社から申し込んでいます。「当選」の2文字を夢見て、最大限の愚直な努力を何年も続けています。

さて、そんな愚直な努力の結果、2021年夏、数カ月振りにようやく当選(100株)したのが、アルマードという銘柄でした。

公募価格は880円で、この初値がいくらになるのか……。ワクワクドキドキします。上場日、ついた初値は861円。まさかの公募割れで、1900円の損失となりました。損失額自体はごくわずかですが、9割は儲かると言われるIPOでの損失なだけに、それ以上の心理的ダメージを負ったことは、言うまでもありません。

ハズレ銘柄を回避する5つの基準

そうです、IPO投資は「絶対に」儲かるわけではありません。9割儲かるということは、1割は損をするわけで、中には、初値が公募価格を下回るような、いわゆるハズレ銘柄も含まれているのです。

ただ、そのハズレ銘柄は、「上場するまで、まったく分からない」のではなく、上場前の段階で、ある程度予想はつくのです。一般に、以下のような銘柄は、ハズレ銘柄である可能性が高いと言われます。

1 規模が大きい(市場からの吸収金額が大きい・株数が多い)
2 事業内容に新鮮味がない
3 売り出し(既存株主からの放出)が多い
4 大株主にファンド(とくに外資系)がいる
5 再上場銘柄

今回のアルマードも、規模が大きくて売り出しも多く、また、「卵殻膜原料を活用した化粧品・健康食品の販売」との事業内容も微妙なことから、公募割れの可能性は非常に高く、そして結果、見事にハズレ銘柄だったわけです。

当選した株はハズレの可能性大。IPO投資の「残念な真実」

ここで一つ、IPO投資の「残念な真実」を語りましょう。それは、これだけIPO人気が過熱する中で(異常に高い抽選倍率の中で)、当選したとしても、それはハズレ銘柄の可能性が高いということです。なぜなら、公募価格を下回る可能性の高い銘柄は不人気なので申し込む人も少なく、競争率が低く当選しやすいからです。

冒頭にて、「IPO投資は9割儲かる」と書きましたが、それはあくまでも数字の上であって、そのような事情から、実質的には5割儲かるかどうかというのが私の実感です。なので、当選しても、あらためてその銘柄をしっかりと吟味することが大切で、ヤバい(初値が公募価格割れの可能性大)と思ったら辞退することも考えなければいけないのです。

とはいえ、せっかく当選したIPOを辞退するなど、なかなかできないのも事実です。ヤバいとは思っても、「いや、でも、ひょっとしたら……」との希望を頼りに、思い切って購入してしまいます。

イタい目に何度も遭わなければ、辞退する勇気は生まれない

実際、私自身、過去に何度も「これはヤバいかな」というIPO銘柄に当選しつつも、どうしても辞退できずに、公募割れのイタい目に遭っております。そんなイタい目に何度も遭って、ようやく当選辞退できるようになったのは、わりと最近なのです。

実は、今回当選したアルマードも、公募割れの匂いはプンプンしており、ヤバいとは十分にわかっておりました。なので、いつもなら、スパッと辞退するところでした。

しかし、年々過熱するIPO投資に落選続きの中での本当に久しぶりの当選に、その判断が大いに鈍っていたのでした。数カ月ぶりの当選の2文字に、これまでの努力が報われたような気がして、全身が熱くなったのを覚えています。

そして、当選辞退することは、そんな努力を否定するようで、どうしてもできなかったのです。そんなことから、ヤバいなと思いつつも、今回はスパッと辞退することができず、購入と辞退との間で、気持ちはせめぎ合うのでした。そんな心境ですから、なんとか無理矢理、購入の理由を見いだそうとするわけです。

つまり、マイナス材料には目をつむって、なんとかプラス材料をほじくり出そうとするわけで、そんな状況においては、当初は微妙極まりないと思っていた「卵殻膜原料を活用した」とのフレーズが魅力的に思えてくるから不思議なものでした。

つまりは、自分勝手な解釈で見事玉砕、今思えば、穴があったら入りたいところです。

と、IPO投資の夢を打ち砕くような内容でしたが、私のような残念な結果とならぬよう、反面教師にしていただくべく、書かせていただきました。

メルカリのIPOで投資資金が1.6倍に増えたことも

IPOはめったに当選せず(私の実感だと、100回に1回当たればよい方)、当選してもハズレ銘柄の可能性が極めて高く、また、その抽選申込作業は面白くもなんともない、ただただ単調で面倒な作業。しかも、今回のアルマードのようにハズレ銘柄で損をすると、大きな心理的ダメージを被ります。

正直、心が折れそうになるでしょうし、実際、心折れてIPO投資から手を引く人も少なくありません。私も、何度も心折れそうになりました。

しかし、アタリ銘柄(初値が高騰する銘柄)が当選する可能性も、極めて低いとはいえ、決してゼロではありません。

実際、私自身、過去にはリプロセル(公募価格3200円⇒初値1万7800円)やメルカリ(公募価格3000円⇒初値5000円)といった大アタリ銘柄に当選、大儲けしたこともあります。

直近だと、大儲けではないですが、2021年12月24日に当選したサスメド(公募価格1410円⇒初値1500円)は、ささやかなクリスマスプレゼントとなりました。そんな嬉しい経験があるからこそ、今でもひたすら、IPO投資を続けているわけです。

強靭な精神力で誘惑を振り切れるなら大当たりも夢ではない

IPO投資でやることとは、とにかくひたすら抽選に申し込むこと。そして当選してもしっかり吟味して、ヤバいと思えばスパッと辞退、強靭な精神力で振り切り、アタリ銘柄の当選を根気よく待つのみ(今回はそれができずに失敗したわけですが)。

いわば、ボール球には(どれだけ魅力的だと思っても)手を出さず、打てるストライクをひたすら待つこと。ただ、そのチャンスは無制限で、何度でもバッターボックスには立ち続けられるわけです。

それができるのであれば、IPO投資とは、極めてローリスクで、ハイリターンが期待できる投資の一つと言えるでしょう。