3万世帯以上の家計相談にのってきた藤川太さんによると、お金が貯まらない人には共通した口癖があるそうです。藤川さんは「ある言葉を発している人は貧乏スパイラルに巻き込まれ、気づかないうちに破産の道をまっしぐらに進んでしまうこともあります」といいます――。
会議を持つアジアのビジネスパーソン
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貧乏神に住み着かれた人の末路

数多くの家計相談に応じていると、お金が貯まる人、貯まらない人の共通点が見えてきます。その1つが口癖です。私が家計の見直しを提案したときに、お金が貯まらない人からはネガティブな反応が返ってくることが少なくありません。

ネガティブな言葉を発すると、なぜお金が貯まらないのでしょうか。それは、貧乏神に好かれてしまうからではないでしょうか。私はこれまで、貧乏神に住み着かれて、お金に苦労している人を数多く見てきました。

不思議なもので、いったん貧乏神に住み着かれると、その状況から抜け出せなくなってしまいます。私はそれを「貧乏スパイラル」と呼んでいます。ただ、本人には自覚症状がなく、知らない間に破産の道をまっしぐらに進んでしまうこともあります。

2種類の家計相談

そもそも家計相談は大きく2つの種類に分かれます。1つは「困った家計の状態」から抜け出すための相談で、もう1つは「よりよい家計」にするための相談です。貧乏スパイラルに陥りやすいのは、前者の相談です。

わざわざ相談料を支払ってきてくださるのですから、ご本人にも「何とかしたい」との思いがあるはずです。しかし、解決策を提案すると「それはできない」「難しい」といった否定的な言葉が返ってきます。貧乏神はこのようなネガティブな言葉が大好きです。そしてネガティブな言葉ばかり発する人をどんどん集めます。気が付けば、あなたの周りは同じようにネガティブな言葉を発する人ばかりになってしまいます。

お金がないのに車を手放さなかった人の“驚くべき言い訳”

ある相談者は、お子さんが私学に合格したものの、学費の負担が厳しいとのことで相談にいらっしゃいました。合格するまでの塾代などでお金がなくなってしまったそうです。

そこで私が提示した改善策の1つが、車を手放すこと。車を保有していると、自動車保険料、車検代、駐車場代など、それなりの維持費がかかります。また、売却すればある程度のお金も手に入ります。都会に住むその家庭にとって、車を処分することが手っ取り早く効果が得られる家計改善策の1つだったのです。

その相談者は半年後にもう一度やってきました。しかし、家計の苦しさはまったく改善されていませんでした。聞いてみると車は手放さなかったようです。その理由を尋ねると「ガレージにあった車が突然なくなると、近所の人に家計が苦しいと思われる」というのです。

不動産ガレージ
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これもネガティブな言葉の1つです。車以外に大きく改善できるものはなかったのにもかかわらず、「他人の目が気になり」実行できなかったのです。家計見直しは、早く実行するほど効果が大きくなります。追い詰められてから実行しても効果は薄くなってしまいます。

お金が貯まる人は「周りからどうみられるか」にあまり関心がありません。自分たちにとって何が大切なのかを理解し「よそとうちは違う」とはっきりいえるのです。他人の目を気にして、他人と比較ばかりしていると、さまざまな鎖につながれて身動きができなくなってしまいます。

貧乏神は「過去にこだわる人」が大好き

同じように「過去にこだわる人」も貧乏神は大好きです。たとえば、大幅に値下がりした株を持ち続けている方からは、こんな言葉をよく聞きます。

「持っていれば元に戻るかもしれない」

買ったときの価格にとらわれていて、損を認めたくないとの心理が働いているのでしょう。冷静に考えてみれば、買ったときの価格にはもはや何の意味もないことがわかるはずです。現在どうなのか、今後どうなるのか、が大切なのです。過去にとらわれることで損失が膨らんでいきます。

お金の貯まる人は、過去に引きずられることなく、スパッと切ることができます。

お金の貯まる人はアドバイスを素直に受け入れる

あるとき、結婚したばかりのご夫婦が相談に来ました。話を聞いていると、家賃が高い高級マンションに住んでいることがわかりました。なぜかと聞くと「いい場所に住みたいから」との答えでした。

その時点では共働きでしたので、毎月の支払いには問題がなかったのですが、子どもが生まれたときにどちらかが仕事をセーブすると、支払いが難しくなる金額でした。私は、「最初は狭いところからスタートして徐々に広い場所を手に入れるのが夫婦の成功ストーリーの1つでもあるのですよ。最初から理想の住まいを手に入れてしまうと、成功ストーリーの1つがなくなりますよ。」とアドバイスしました。

そのご夫婦とは1年半後に再び会いました。すると、相談のあとすぐに引っ越したそうです。以前は家賃が多少高くてもこれくらい当たり前だと考えていたようですが、私のアドバイスで頭を切り替えたようです。「夫婦の夢を実現するには、今は節約してできるだけお金を貯めておく必要がある」ことを素直に受け入れたのです。その結果、お金が貯まるようになっていました。

成功する人には行動力があります。納得するまで時間がかかる人はいますが、いったん納得するとそこからは急速に変わっていきます。5年で改善する計画をつくっても、2、3年で達成してしまう人も少なくないのです。

大事なことを先送りにする人も貧乏神に住み着かれる

大事なことを先送りにする人も貧乏神は大好きです。人生100年時代とは言われますが、時間が永遠に続かないことは確かです。お金が貯まらない人は、時間が限定的であるという意識が足りないのではないでしょうか。人生には「ここが貯めどき」という時期があります。

お金が貯まる人は、生活の変化を10年、20年単位で見ていますから、「いまはこれをやっておかなければいけない」と判断して、確実に実行していきます。

300万円で買ったポルシェが800万円に

家計相談にやってきたある女性には、使途不明金が200万円ほどありました。何に使ったのか、なかなか話をしてもらえませんでしたが、帰り際になってアイドルの追っかけで使ってしまったことがわかりました。

そのお金をねん出するために、家族は節約を強いられて不満も溜まっていました。自分だけの聖域を作ってお金を使ってしまっていたのですが、それは離婚の原因にもなりかねません。

お金が貯まる人も趣味を持っている人は多くいますが、予算を決めていてその中におさめています。予算の中で、できるだけ多くのことを実現するために知恵も出します。

また、何かをコレクションする場合には、転売価値を意識しています。ある人は車が好きでポルシェを300万円で買いました。それを売却したときには800万円になっていたそうです。マニアだからこそできることですが、専門的な知識を生かして、趣味を楽しみながらお金を増やしています。

中には車好きが高じて車のメンテナンス会社を買収しようとしている人もいました。働いて得たお金を趣味で消費するのではなく、趣味さえもお金を増やす手段と考えているのです。意識を変えれば趣味さえもお金を増やすことにつながるのです。

あなたも貧乏神に住み着かれないように注意してください。