キャリアの基盤や家族構成が固まってくる40代で、家を買うことを考える人も多い。リモートワークなど、働き方が大きく変化する時代に、マイホーム選びはどう考えればいいのでしょうか? 住宅とお金の専門家である2人が答えます。
年代別持ち家比率は?

Q1. 家の“資産価値”って何?

【日下部】住宅分野を担当する日下部です。40代で賃貸の人は住宅ローンが組める年数を考慮し、家を買うか、買わないか、最後の決断のときです。図のデータでは40代までに73.5%が買うという選択をしています。これから買いたいと思うなら、資産価値が落ちない家を購入したほうがよいでしょう。

【小林】お金関係を担当する小林です。家の資産価値って何ですか? 高いほうがよいですよね。

【日下部】人生100年時代ですから、途中で住み替えたり、老人施設に入ることも。売ることを前提に家を購入すれば、いずれ老後資金に使えます。だからこそ、できるだけ高く売れる物件がよいのです。

【小林】買う前から売ることを考えるわけか。

【日下部】いざ売るとなったとき、買った価格より高く売れたら、最高の物件です。それは理想としても、価格が落ちずに現状維持を保つ物件って、探せばわりとあります。

【小林】具体的にどんな物件がよいのですか?

【日下部】資産価値の落ちない第一の条件は、今も昔も、コロナ禍でリモートワークになっても、「駅から徒歩5分以内」です。駅近なら、多少古くて狭くても欲しい人がいるので、売ろうと思えば売れます。第二にマンション、戸建てを問わず躯体くたいがしっかりしていること。頑丈に造られていればメンテナンス次第で100年保つことも不可能ではありません。第三にハザードマップから災害の危険地域ではないこと。現在はスーパーや学校などが近いことより、この3つの条件に合うほうが資産価値が落ちないといえます。

ここで、家の資産価値を知る簡単な方法があります。それは買いたいと思う物件を、借りたらいくらなのかを調べることです。ネットで近隣の同じような賃貸物件の家賃をいくつか調べて、「どれも安いなあ」と感じたらやめたほうが無難です。

【小林】現金化するとわかりやすい!

Q2. マンションと狭小戸建て、“資産価値”が落ちないのはどちら?

【小林】私はつい最近、郊外の分譲戸建てを購入しました。息子が3人いて手狭になったことと、国税を辞めて個人事業主になり、家での仕事部屋が欲しかったのです。

【日下部】購入おめでとうございます!

【小林】物件探しをしてみて、駅前マンションと徒歩15分の狭小戸建ては同駅、同面積なら同額ぐらいだと感じました。できる限り安く購入したくて、私は旗竿地はたざおち物件を購入。奥まっているので、車の音はしないし、価格のわりには広いので環境はよいです。私は家族のために、資産価値よりも居住価値を優先しました。

【日下部】資産価値はすぐに売る前提で必要なものですから、そこをつい棲家すみかと決めれば優先しなくてもよいのです。車が必需品の人は空き駐車場のあるマンションか車庫のある戸建てがよいでしょう。戸建ての車庫は自転車置き場にもなります。リモートワークで居住価値を求め、地方に移住する動きも出てきました。

【小林】狭くても土地が持てるのはうれしいものです。

【日下部】よく見かける敷地20坪以下の3階建て建て売り狭小住宅は、階段の上り下りを毎日5往復ぐらいするイメージで、足腰の弱る老後は大変になりそうです。また、1階が車庫と夫婦の寝室、2階がリビング、3階が子ども部屋などと間取りが固定されてしまうのが難点ですね。さらに、将来、売却するときに駅から遠いと、「それでは売れない」と不動産会社から更地にすることを求められることがあり、その費用は売り主の負担です。マンションでも土地を戸数で割った敷地利用権を持てるので、土地持ちにはなれますよ。

【小林】マンションは管理費等をずっと払いますよね。

【日下部】逆にいえば、少額の費用でゴミ出しや掃除、共用施設の利用、修繕計画はプロに依頼するのでラクという考え方もあります。マンションは躯体も、耐震性も、防音性も戸建てを上回ります。都心限定ならマンションのほうが利便性が高く、住み心地の満足度も高いので、資産価値が落ちないでしょう。

分譲マンションと分譲住宅

Q3. 新築物件と中古物件の価格差はどれくらい?

購入物件の平均価格(首都圏)

【日下部】現在はコロナ禍にもかかわらず、都心の新築価格はうなぎ上りです。理由は、①国の公示価格からもわかるように地価の高騰、②世界的にセメントや鋼材、木材などの資材の高騰、③建設業界の人手不足から人件費の高騰、のトリプルパンチ。表のデータによると新築マンションの平均購入価格は5000万円、今はさらに高騰して6000万円台もザラにあります。東京2020の選手村だった晴海のマンションは3LDK7000万円台が主流といわれています。

【小林】共働きだと住宅ローンを4000万円以上借りる人も多く、今の世帯年収が続くならよいですが、長期にわたって返済していけるのか心配ですね。

【日下部】新築は高すぎるので、中古物件に注目です!

【小林】表データから新築と中古の価格差はマンションで約1600万円、建売住宅で約750万円です。これだけローンが減ったら家計がだいぶラクになるでしょう。

【日下部】新築一辺倒ではいつまでたっても家は買えません。中古は安くてもよいから売りたいという売り主もいるので、人気の街や駅前でもよい物件がポンと出ることがあり、価格交渉にも応じてくれる可能性があります。

中古のメリットは、すでに建っているので現物が見られること。隣人やコミュニティの雰囲気もわかります。また、今のリノベーション技術は優れていて、自分好みの家に変えられるのもよいですね。デメリットは不動産会社へ仲介手数料を払う、リノベ費用や古い設備の取り換えなどがあること。物件購入後にどれくらい費用がかかるのか試算するのも大事です。

【小林】住宅ローン減税を使う条件の1つに耐震性があり、国は新耐震基準を満たした物件を買ってほしいため、あまりにも古い物件では住宅ローン減税が使えないことがあるので注意が必要です。

【日下部】中古に視野を広げると選択肢が増えますよ!

新築物件と中古物件のメリット・デメリットは?