コロナ禍による世の中の変化は、自らの働き方や家族の将来について考え直す契機になりました。一方で、平均寿命は年々延び、人生100年時代を迎えようとしています。変化に負けず、遠い将来まで安心して暮らせる人生の資金プランを徹底検証します。
老後のお金について考える男女
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まずは現状把握からスタートしよう

今後、再びコロナのような不測の事態が起きても、私たちは自らと家族の未来を守らなくてはなりません。

暮らしを守り希望を実現するためには、ベースになる資金プランが不可欠です。まずは、マイホーム資金、教育資金、老後資金など、わが家にはどんな資金が、いつ、いくら必要になるかを書き出してみましょう。

すべての人に必要なのが老後資金です。いま、95歳まで生きる女性は4人に1人。そこで、100歳まで生きることを前提にした老後資金の計算式を示しました。

この計算のために必要な数字は、「老後の基本生活費」「生活費以外に使いたいお金」「60歳時点の住宅ローン残高」「年金見込み額」の4つ。計算自体は簡単ですが、これらの数字を把握するには、現在の家計状況を確認するとともに将来の暮らし方を予想し、さらに過去と今後の働き方を思い浮かべる作業が必要です。

この作業には少々、手間がかかるでしょう。でも、この先、どんな変化があるかわかりません。現状を知り、それに基づくプランがあれば、変化があっても修正が可能です。資金プランは夢を叶えるだけでなく、リスクに備える手段でもあるのです。

【働く女性のための100歳までの老後資金計算シート】

専業主婦家庭を前提とした従来の老後資金の計算方法は、働く女性に対応できない部分があります。そこで新たな変更を加え、長く働き年金額の多い女性にも最適な計算シートをつくりました。

100歳までの老後資金計算シート

希望を実現するにはいつ、いくら必要か

今後、必要になる資金の種類は、人によって違います。ケース1~4では、希望する将来プランを実現するにはどんな資金がいつ、いくら必要になるかを時系列で示しました。

ここで計算した貯蓄目標額が実際に貯められるかどうかは、現在の毎月貯蓄額をもとに判断します。とはいえ、日々の忙しさで家計収支を把握していない人も多いようです。現在の収入が今後も継続可能かどうかも含め、この機会に家計を見直しましょう。そのうえで、この金額がとても貯められそうにないときは、プランの見直しも必要になります。

特に働く女性が注意したい点を挙げておきましょう。

まず、厚生年金の受取額には上限があること。このため、年収が高い人ほど現役時代の収入との落差が大きくなります。また、夫婦とも厚生年金を受け取っている場合、夫が亡くなったときに遺族年金を減らされます。

なお、たとえ夫婦の財布が別々でも、お互いの資産は知っておきましょう。気づいたらどちらも貯蓄がない、という悲劇を避けるためです。できればお互いの収入も知って将来を話し合っていれば、想定外の事態が起きても乗り越えられるはずです。

【Case1 子持ち家庭】教育費と老後資金、両方準備できる?

子持ち家庭、教育費と老後資金、両方準備できる?
【POINT】大学資金のメドがついたら老後資金づくりを本格化

ひろみさんのケースでは、子どもは2人とも高校まで公立、大学から私立を希望しています。高校までの教育費は家計から負担し、大学資金として1人700万円、2人分1400万円の貯蓄を目指しましょう。そのメドがついたら、本格的に老後資金づくりを始めます。

すでに1200万円の貯蓄があるので、住宅ローンの繰り上げ返済は時期を早めると金利負担を減らせます。

老後の年金は夫婦合わせて月30万円あり、それだけで生活費をカバーできます。ただし、夫が先に亡くなった場合の遺族年金は全額支給停止になるので、1人暮らし期間の上乗せ資金を用意すれば介護費用にも使えます。

なお、40歳代になると、早い人では親の介護が始まることもあります。親の介護は親のお金でまかなうのが原則ですが、お金以外の負担も少なくありません。今のうちに、家族で話し合っておくといいでしょう。

【Case2 子持ち家庭】定年になっても子どもがまだ大学生

子持ち家庭、定年になっても子どもがまだ大学生
【POINT】優先順位をつけてプラン見直しも検討しよう

出産が遅めのケースでは、教育資金と老後資金の必要時期が重なります。一方、60歳以降は収入が大幅に減るため、貯金できる期間は限られています。麗華さんの場合、貯められるのはあと17年。希望をすべて叶えるには、毎年400万円もの貯金が必要です。

今は可能としても、住宅購入後は住宅ローンのほか管理費や修繕積立金、固定資産税などもかかります。さらに子ども2人を私立に通わせれば、教育費が月20万円にもなります。また、夫の高収入がずっと続くかも検討したいところ。

車の買い替えを7年ごとから10年ごとにしたり、グレードを下げるだけで必要額は1000万円以上下がります。希望に優先順位をつけて、プランを見直すことも考えたほうがよさそうです。

【Case3 DINKs】60歳でリタイア、2人で世界中を旅したい

DINKs、60歳でリタイア、2人で世界中を旅したい
【POINT】無収入期間の生活費をまるごと準備する

年金受給前に完全リタイアを望むなら、無収入期間の生活費を準備する必要があります。さらに、マヤさんの住まいは賃貸なので、リタイア後も家賃負担が続きます。このため、貯蓄目標額は計5700万円で年300万円以上。これが実現できるかどうか、現在の収支を再確認したいところです。

ただ、賃貸には住まいを自由に選べるメリットがあります。リタイア後は賃料の安い住居に住み替えることも可能。将来は2人で高齢者向け住宅に移ることも視野に入れて検討しましょう。

【Case4 DINKs】夫はフリーで年金が少ない

DINKs、夫はフリーで年金が少ない
【POINT】自営業・フリーは貯められるときに貯めよう

自営業やフリーの人が加入する国民年金は満額でも年約78万円。退職金もないため、貯められるときに貯め、少しでも長く働くことが最大の老後対策になります。老後資金づくりには、自営業向けの制度「国民年金基金」が、終身で年金を受け取れるうえ掛金が全額所得控除できて有利です。

亜弓さんのケースでは、将来は夫の実家に住む予定です。親の介護や実家の相続は微妙な問題ですが、兄弟姉妹で方針を話し合うとともに、転居の時期が早まる可能性も考慮しておきましょう。