やりがいのある人生を生きるための“複業”
2018年以降、副業を解禁する企業が増えている。しかし、実際はNPO法人などが多かったり、社内で公言や申請したりするのははばかられる、という企業も少なくない。一方で、会社を挙げて社員の“複業”を支援する企業もある。
複業研究家の西村創一朗さんは、これからの時代に必要なのは“副業”ではなく“複業”だと語る。
「スキマ時間のお小遣い稼ぎが副業。複業は、本業を持ちながら別の場所でやりがいを得る働き方を目指すものです。人生をより豊かにする、ニューノーマル時代の新しい働き方のスタイルとなります」
リモートワークが進んだことで、複業しやすい環境が急速に整った。特にIT系企業などは、世の中のデジタルスキルのニーズの高まりや自由な社風から複業経験者が多い。
大企業でも社員の複業を積極的に応援しているのが、富士通やNTT東日本・西日本など。社内に複業コミュニティーがあって、多くの社員がチャレンジしている。
「複業の目的はお金もうけではない」と西村さん。「本業では感じられないやりがいを得る、自分の市場ニーズを知るためのチャレンジ、人脈を広げられるなどが、複業のメリットです。お金を目的にしてラクに成功できるほど、本業以外で稼ぐのは簡単ではありません。より幸せな人生へのチャレンジとなる複業を追求することで、やりがいが、そしてその後にはお金もついてきます」
また、西村さんは「40代、50代こそ複業にチャレンジしてほしい」とも語る。「定年退職してから次を探すのでは遅い。今のうちに複業を小さく始めて、少しずつ大きく育てる。それをセカンドキャリアにつなげることで、長い人生を有意義で豊かに暮らせます」
複業を始めるためのSTEP 0+3
いざ複業を始めるときは、下の3つのステップで進めていく。しかし、最も重要なのは、3ステップの前段階にある「ステップ0=なぜやるか(WHY)」だ。自分はどうして複業がしたいのかという目的が、自分の中で明確になっていることが、複業の成功に欠かせない。
「目的が“お金を稼ぎたい”だけでは、ほとんどの場合うまくいきません。いつでも始めて、やめることができる複業だからこそ、自分にとって本質的な価値がある動機づけが重要になります」(西村さん)
複業を成功させるコツ
「僕自身の経験、そして多くの複業経験者にアドバイスをしてきたうえではっきりと言えるのは、複業はコストをかけず身近ですぐに始められることからスタートすべきだということです」と西村さん。
入念な準備がなくても、自分の目的さえはっきりしていれば、走り出しながら軌道修正すればいい。それは本業ではない、複業ならではのメリットであり、やり方だ。
また、複業は、あくまでも自分の人生をより豊かにするためのもの。苦痛や我慢を強いる必要はなく、自分が楽しみながら無理なくできることが大前提だ。本業の合間をぬってやるだけに、自分の強みに特化することで、無理をしないやり方を見つけられるはずだ。
そのためにも、自分自身の「強み=タグ」をはっきりさせておくことも必要となる。何ができるかわからないときは、「これはできない」ということをリストアップして、消去法で考えるのもいいだろう。
「究極の複業の極意は、半径5m以内の身近な人たちのニーズを掘り起こすこと。そこに成功への鍵が隠れているはずです」