コロナショック以降、日経平均株価は順調に回復し、一時3万円を突破しました。日本株への投資はこれからも有効でしょうか。またさらに資産を増やすにはどうすればいいのか、投資ブロガーのりんりさんに解説してもらいました――。
タブレット端末で株式市場データを探している女性
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資産形成に米国株を取り入れたほうがいい理由

このところ米国株式市場が最高値を更新しつづけていますので、興味を持っている人も多いかと思います。しかし、いざ米国株への投資を考えるとハードルが高いのではないでしょうか。株式投資と聞くと、日本株を真っ先にイメージする方がほとんどだと思います。しかし、世界の株式市場において日本の株式市場の占める割合はそう大きくはありません。

たとえば、世界最大級の投資信託運用会社「バンガード」が運用する全世界の株式市場の動きを捉える事を目的としたETF「Vanguard Total World Stock ETF(VT)」の国別の構成比率を見ると、日本の株式市場の占める割合はたった6.4%にすぎないことがわかります。

VTの国別分散比率 上位10カ国

世界の株式市場のうち約60%を米国が占めている

VTは世界47カ国・約9133銘柄の株式に投資して、全世界の株式市場の成長を資産に取り込もうという運用商品です。

国別の配分は、各国の株式市場の(浮動株調整後の)時価総額に連動しています。時価総額は「株価×発行済株式数」で計算されますので、株式市場の規模を示す指標です。世界の株式市場の約93.7%は日本以外の国の株式市場であること。そして世界の株式市場全体のうち約60%を米国が占めているということがわかります。

人口から見ても世界の人口は約77億人(国連・2019年時点)ですが、日本は約1億2500万人(総務省・2021年)にすぎません。必ずしも日本株が不利というわけではありませんが、あえて日本という狭い地域だけに限定して資産運用をする必要はありません。以前より簡単に世界中の株式に投資ができるようになった今だからこそ、より世界に目を向けてほしいと思っています。

いつ、どの銘柄を買うかはあまり重要ではない

これから投資を始める人にぜひ知ってほしいのは、長期的に分散投資をする場合「いつ買うか」「どの銘柄を買うか」はあまり重要ではないということです。それよりも大事なのは、アセットアロケーション(資産配分)なのです。リスクやリターンといった運用成果に与える影響のうちアセットアロケーションが7~8割を占め、銘柄選択やタイミングが与える影響は2~3割にすぎないという研究結果が複数あります。

ですから、投資を始める前にまずは資産配分を決めることが重要です。では、資産配分とは何かというと、国内株式、海外株式、国内債券、海外債券、金、不動産、現金などの各資産クラスにどのくらいの資金を配分するかを決めることです。生活防衛のための資金を除いた余裕資金をどう配分するかをまずは考えましょう。

投資信託のポートフォリオを示す円グラフ
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最初は現金(無リスク資産)とリスクに晒していいお金の割合を決め、次にリスクに晒していいお金を株や不動産といった各リスク資産どう配分していいか決めます。現在の金利などを考えると「現金(無リスク資産)+株式(リスク資産)」といった配分が個人的にはお勧めです。

たとえば、1801年に米国株式市場に投資した1ドルは2006年には1270万ドルにまで増えていました。株式は短期的には上下を繰り返しながらも、長期的には他の資産を大きく上回るリターンを投資家の手に残しました。長期的に使う予定のないお金は余裕のある範囲で株式として持っておくのは良い選択肢だと考えます。

「積立投資」は機会損失につながる可能性がある

実際に投資をする際には、「積立投資」がいいと言われますが、注意点もあります。それは自分が目標とする資産配分に到達するまでに時間がかかることです。

たとえば、Aさんの考える理想的な資産配分は株式80%、現金20%だったとします。Aさんの手元に300万円あるとすればそのうち240万円程株式に配分することになります。ここで毎月3万円ずつ投資をしていくと、すべての資金を投資に回すのに6年半以上かかります。Aさんの目標とするリターンや許容できるリスクより低い状態が何年も続くことになり、その間の市場の上昇がもたらす利益を取り逃がしてしまうことにもつながります。

積立投資はドルコスト平均法の効果によって、リスクを軽減できるといわれます。しかし、それは手元の現金を株式に配分するのを遅らせているだけとも言えます。市場は上昇するか下落するかはわかりませんから、特別有利とはいえない方法だと私は考えています。また、資産形成後期になると購入価格を下げる効果は薄れます。

余裕のある方は、まずは一括投資でアセットアロケーションを完成させて、それを維持するのが合理的ではないかと思います。しかし、その後に追加投資やさらに積立投資をすることは悪いことではなりませんし、一括投資が怖いという方や資金がないという方は無理せずに余裕のある範囲でドルコスト平均法を使って積み立てていくのが良いと思います。

ほったらかしにしたい人は「eMAXIS Slim 全世界株式」でOK

株式を持つのであれば、全世界株式をすべて保有するのがリスクを抑えることにつながります。また、できるだけ低コストで投資することが実際に手元に残すお金を増やすことになります。少額の資金で全世界株式に投資するなら投資信託やETF(上場投資信託)があります。投資信託であれば「eMAXIS Slim 全世界株式」(オール・カントリー)がお勧めです。「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」に連動するインデックスファンドです。

その理由は①信託報酬と実質コスト、②純資産額、③乖離かいり率です。信託報酬は運用の経費を投資家が負担するものです。実質コストは隠れコストとも呼ばれるもので、有価証券の売買手数料、外国証券の管理費用、監査報酬などで、表に出てくることがほとんどないので初心者が確認するのは難しい面があります。また、インデックス投資の場合は、値動きが指数にどれくらい連動しているかが重要です。

これらの3つの条件を当てはめた場合、「eMAXIS Slim 全世界株式」が候補となるのです。つみたてNISAでも利用できます。

全世界株式への投資で年率5%は狙える

全世界株式に投資しているだけでも、年率5%程度のリターンが期待できるとされていますから、複利で増やしていけば、相当な資産を築くことができます。しかも手間がかかりません。手間をかけずに、ある程度、ほったらかしでお金を増やしたい人には、多くの場合、これがお勧めです。

海外ETFを用いて投資をしたいという方であれば、米国ETFのVT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)がいいでしょう。

米国株式に投資をするならS&P500に投資

もう少し、より積極的に米国株に投資がしたいと考えるのであれば、米国の大型株を対象とした株価指数「S&P500」に連動する投資信託やETFを購入するのがいいと思います。もしくは全米株式に投資ができる「VTI」というETFもおすすめです。

私たちの身の回りを見ても、スマホでiPhoneを使っている人が多いですし、パソコンにはマイクロソフトのウィンドウズやオフィスがインストールされています。また、インターネットで検索する際には、グーグルを利用するでしょう。外に出ればコカ・コーラの飲料やスターバックスでコーヒーを買ったりします。

これらは全て米国企業の商品です。米国株に投資することは、決してハードルが高いことではなく、私たちの生活の中で身近な企業に投資することになります。また、米国の企業は、世界中でビジネスをして利益を得ているグローバル企業ですから、世界経済の発展とともに得られる利益も増えていきます。

いまはまだ、新型コロナウイルスの感染拡大が収束していないので、「アフターコロナの米国経済は大丈夫か」と心配している人もいるかもしれません。しかし、米国ではかつて百日咳や腸チフス、コレラなどが流行しました。そのときにも一時的な混乱はありましたが、下水道を整備したり、治療法を開発するなど適切な対処で克服し、株価は回復して成長を続けてきたのです。コロナウイルスに関しても米国の製薬会社がいち早くワクチンを開発していますから、いずれ克服できるものと考えております。

バフェットは米国株に強気の姿勢を崩していない

著名な投資家であるウォーレン・バフェットはバークシャー・ハサウェイの2020年の年次総会で「米国の成長を止めることはできない」と米国株への強気の姿勢を崩していません。また、「ほとんどの投資家はS&P500インデックスファンドを信頼したほうがいい」とアドバイスしています。

S&P500に連動する商品には、投資信託の「eMAXIS S&P500インデックス」がありますし、米国ETFの「VOO」(バンガード・S&P500ETF)などがあります。

ただ、投資期間によっては米国以外の地域が大きく伸びるときもあるでしょう。そのときに全世界株式に投資していれば、その成長を資産に取り込むことができます。その意味では全世界株式に投資していたほうが、安定的なリターンが期待できます。

全世界株式に投資する投資信託やETFでも6割ほどは米国株式が含まれていますから、米国株のリターンも逃しません。

手間をかけずにある程度のリターンを狙いたい人は全世界株式型、さらに高いリターンを狙いたい人で時期によっては全世界株式よりもリターンが低くなる可能性も許容できる人はS&P500に連動する商品を選ぶのがいいでしょう。